ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

店舗の椅子作り その1

2013年12月24日 | 木工
もう先週の19日のことですが、雪が降りました。




5㎝くらい積もったでしょうか。
前の晩から降っていた割には積もらなかったのでほっとしました。
午前中に大宮に納品があったので日の出前に出かけました。





雪が降ると劇的に景色が変わります。
いろいろ大変ですが、きれいなものです。



一つ下の町に下ると、もう雪はありませんでした。
車の屋根に雪が載ったまましばらく走っていました。






その雪が融けて凍り、工房の庭はいまやツルツルです。
ホワイトクリスマスと言えなくもない。
歩くのはそろそろと。




さて、お蕎麦屋の仕事が始まりました。


木取りに2日、その後4,5日作業をして、部材の形ができてきました。






40数脚分の椅子の部材です。





後ろ脚の「へ」の字の部材を加工しているところです。
このように治具に固定して角度を正確に作ります。




ずらりと並べて木目を検分して、この時点でおおよその組み合わせを決めておきます。
木目を検分する理由は、一脚の部品の木目がなるべく合うようにするためです。
同じ樹種でも木目はいろいろです。
部品には左右があるので、なるべく左右それぞれに均等に似たような木目の物を振り分けておきます。





これは部品に加工のための印をするために作った道具です。
ベニヤに窓を開け、部材にそのベニヤをあてて刃物で印を付けていきます。

10脚くらいのロットの時は同じ部品を並べてクランプで固定して隣に印を写していくようなやり方で墨をしますが、なにしろ数が多いのでそのやり方でははかどらないと考え、この方法にしました。




こんな風に材にあてます。



これほどの数の同じ物を作ることは初めてかもしれません。
椅子をまとめて作るにしても、ふだんは10脚くらいまです。

数の多いものを作るとき、普段とは違う神経を使います。
雑になるんではないか、と思う方もいるかと思いますが、むしろ逆に丁寧になります。
一つの機械加工の工程にしても、丹念にセットして精度を出すように気を配ります。
機械の刃物もみな研磨して加工に臨みます。

なにしろ数多くの部品を加工するので、一つひとつの加工の精度がその後の工程に影響します。
数が少ない仕事だと「あとで手道具でそのへんは調整すればいいかな」というような甘えがよぎるのですが、
数が多いとそのようなことをしている余裕がありません。
一工程一工程でちゃんと仕上げてゆくのが無駄なく仕事を進めるキモになります。

物を動かすのも一苦労なので、どこに何をどう置いて、加工したらこっちに置いて、とか
ちゃんと向きを決めてきれいに並べておいて間違えずに切る、とか
体になるべく負担がかからないように仕事の姿勢を考慮する、とか
気持ちは焦りながらも意外と頭は冴えてきます。

なぜかいつもより掃除も片づけもまめになります。
納期が気になるので勤勉になります。
後回しにしがちな事務仕事も先に先にやっつけてしまいます。
いいことばかりです。

いつもこのような心がけでいたいもんです。














ドングリと桜のつまみ

2013年12月13日 | 木工
ドングリと桜の花をモチーフに、家具のツマミを作りました。

お客様とご相談していて、「こんなものも出来ますよ」などと悪乗り(失礼)をして決めた物です。







これはドングリのツマミになるもの。
ちゃんと家具に付く根っこを作ってあります。





出来たもの。
小刀やノミでじこじこ削って作ります。
小さいので持つ手が疲れて大変です。
帽子はノミ跡を残したままにしてざらざら感を残し、ドングリ本体の方は磨いてピカピカに仕上げました。
大きなものは大きな引き出しに付きます。








こちらはサクラの花の形のツマミになる部材。
右に写っているものは以前に作ったものです。





轆轤で挽いてから花弁は小刀などで彫ります。





出来たもの。









家具に付けました。

サクラ材の家具に桜花、クリ材の家具にドングリ。



余談ですが、



この裏板の木目が怖い顔に見えてしまう。
時々目が合ってしまう、、、、










東京は新木場から材が届きました。

これから大きな仕事が始まります。
店一軒分の家具の仕事です。
およそ二か月の工期を見込んでいます。
そのためにこつこつ買い集めた材の一部です。樹種は栓(セン)です。
「栓」は材木業界だけの名前で、本当はハリギリという名前の樹です。
桐の様に大きな葉っぱで、幹に幼木の時にとげがあるからだと思います。



写真のとおり、このような材はなぜかご覧の様に幅が決まった形で流通しています。
運びやすいようにでしょうか。

前回のブログで丸太を買う話をしました。
幅の広い板を手に入れるためには丸太から始めなくてはならないといった意味が
このような材を見て頂ければお分かりになっていただけると思います。

嵐の前の静けさ。

丸太を買う

2013年12月03日 | 木工
丸太を買います。






材を丸太から買うのは3年ぶりだと思います。
最近はすっかり「丸太を買わねいかい」と声がかかることがなくなりました。
山にましな木がもうないのかもしれません。
景気が悪くてよい値が付かないので、木を伐ってもわりに合わないから、という話も聞きます。
丸太の流通量が明らかに少ないんです。


話しはそれますが、一方で「相場が上がって木が買えない」という話も聞きます。
同業者、小売店の方の「ちっとも景気が良くなった気がしない」「仕事が増えない」「ものが売れない」という声も聞きます。
需要が減っているのに値段が上がっています。
いびつな形で物事が進んでいるような印象です。


私は市場で丸太を競って買ったことはありません。
何軒かの業者から話を持ちかけられて買うだけです。
今回の丸太もある業者が会津の山から買い付けて運んだものを向けられたものです。
丸太は大きくて重いので、トラックに積んで運んでくるのも容易ではありません。
ひとしきり、材を集めること、運ぶことの苦労話をお聞きました。
あちらの山はすでに雪が降ってしまい、残りは雪がなくならないと運べないそうです。


丸太は栗とクルミです。
長さはおおよそ5m、直径は太いもので70cmほどの物から40cmくらいまで。7、8本ほど。
あれこれと好き嫌いを言っていたらもう丸太は買えないと思い、みな買うことにしました。





5mもあるとそのまま製材できません。
切るのですが、どこで切るのかが重要な問題になります。
この辺に傷がありそうだとか、木目がよさそうだとか、
丸太の切り口や皮の表情を観察しながら、その判断をしなくてはなりません。
それでも最後は製材してみないと本当のことはわかりません。


この丸太を製材に立ち会うために何日も製材所に通い、製材を手伝い、
挽いた板を運んでもらい、重い思いをして一枚一枚桟を入れて屋根をかけるなどの、
これからかかる手間を考えると、正直、とても憂鬱になります。
しかも使えるのは少なくとも3年後くらいです。
製材は丸太が板になる瞬間に立ち会う、心ときめく作業ではありますが、そのあいだ工作の作業は止まってしまいます。
桟をを入れて干す作業も、うまく乾いてくれるように祈るような気持ちでの作業ですが、体はとても疲れます。
もちろん丸太の代金、製材賃も払わなくてはなりません。



そんな思いをしても丸太から始めるのは、なるべくよい材を手にしたいからです。
乾燥材で買うことができる物は広い板や耳の付いた板があまりありません。
結局丸太から始めないと満足できないのです。
まあ意地で買っているようなところもあるかな。