ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

トンカツ屋さんの椅子の制作 完

2014年03月24日 | 木工
椅子ができて、納品してきました。




左がカウンター用、右が普通の高さの椅子です。







椅子はバックシャンであるべきだと思っています。
意外と後ろから見る機会の方が多いはずだから。










お店で使う小物もご注文いただきました。
メニュー立て、メニュー板、ナプキン立てなど。
これらはウレタンクリア塗装。
天気の良い日を見計らって外で一気に塗り上げました。





漆塗りの話を少々。

まあ何度もお話ししていることですが、漆の乾燥には温度と湿度が必要です。




これは「漆の室」の中の様子です。
表面がざらざらの板を張り、そこに霧を吹きかけてヒーターを入れて扉を閉めて温湿度を保ちます。
ヒーターの上にも水を張ったバットを載せておきます。


冬に漆を塗る時の失敗としては

① 温度、湿度不足による不乾燥。
② 泡吹き
③ 焼け(表面が白くなる)

が主なものです。


原因は

①は単に乾燥のための化学反応に必要な温度と空気中の水分が足りない。
②は塗った後、漆が乾く前に温度が上がったために導管にあった空気が膨張して表面に気泡ができる。
③は冷たい物に漆を塗った後に温度を上げたために表面が結露して白くなる。

と考えられます。

つまり、塗る物や雰囲気を十分に温めてから塗らないといけないのです。
塗った後に温度を上げるのはご法度です。


これがなかなか、冬に本格的に漆を塗るにはたいへんなことになります。
(もう春ともいえますけどまだまだ寒い。)
数が少ない物でしたら朝暖房を入れてお昼過ぎから塗れば間に合います。
しかし今回の様に数が多く納期が近いと朝から晩までみっちり塗らければなりません。
タイマー付きのファンヒーターなどを駆使して温度の管理をします。





これは砥の粉による目止め。一回目の塗りの後にします。
本当は漆と砥の粉を練った「漆サビ」というもので目止めをするのですが、サビは乾きがおそいうえ、乾くと硬くてとても磨きにくいです。
水溶き砥の粉だけでも十分効果があります。
導管が埋まり表面が平滑になってきれいな仕上がりになります。





トンカツ屋さんの椅子の制作 3

2014年03月12日 | 木工
椅子の笠木を作りました。




一番上に写っている部材から、一番下の部材を伐り出して作ります。
真ん中は切り取った端材です。
随分歩留まりの悪いものになりました。





上の様に仕上げてから下の様に面を取って仕上げます。
面を取らない、あるいは糸面の方が格好は良いかもしれませんが、
人の体に触れる物はなるべく丸くなだらかに仕上げるべきだと思っています。






これを椅子の本体に組み付けます。
組み立てはこれで終わりです。






右がカウンター用の椅子。足のせが付いています。
左が普通の高さの椅子。
座面から上は全く同じデザインです。





今回の椅子の座面は人工皮革にウレタンが入った、いわゆるクッションのものになります。

そういった座面は自分では作ったことがないので、外注になります。
いずれそういうものも自分でやってみたいと思ってはいます。



去年のちょうど今頃、前橋市内を歩いていたら、椅子張り屋を見つけました。




親の確定申告に行き、街中のタイ料理屋でお昼を食べようとして歩いていて見つけました。
その時は特に用はなかったのですが、お邪魔してお話をして、名刺を頂いてきました。
そして今回の仕事で座面をお願いすることができました。





窓際に工業用ミシンがあります。




ファブリックが巻いてあります。




道具がたくさんあります。




壁に表皮のカタログが一面に貼ってあります。




持ち込まれた椅子があります。



ジャズが大きな音で流れています。


工房っていう感じ。





さて、座面はお願いしておいて、生地の漆塗りを進めます。

冬場の漆塗りは温度、湿度の管理が大変なので最近はほとんどしなくなりました。
夏場ならほっといても乾くものが、冬には光熱費もかかります。
ご存じない方のために申し上げますと、漆は20度以上の温度と80%ほどの湿度で一日ほど置いて乾きます。
そのために、温度と湿度を維持するための「室(むろ)」に入れます。




まだ寒いので、部屋の温度を下げないように戸口に毛布を張りました。




13脚の椅子が何とか「室」に入りました。
どう入れるかかなり考えました。
最後の1脚がかなり苦労しました。
まるでパズル。


室には水を打ち、電気ヒーターを入れ、扉を閉めて扉の外にも布団をかけました。
側面には断熱材が入っています。

このまましばらく置き乾いてから、その後の工程に進みます。









トンカツ屋さんの椅子の制作 2

2014年03月07日 | 木工
通勤しながら折々撮った写真ですが、




3月1日。
霧雨で雪にはなりませんでしたが、ホワイトアウト。






3月3日。
夜、冷たい雨が降っていて、朝の風景。
標高1000mくらいから上は雪でした。






3月5日。
また雪が降りました。昼頃から雨に。
夕焼けぽくなって、雪景色が赤く染まりました。






雪の表面が融けては固まったので、上を歩いて行けるようになリました。
池まで行って見ると、カエルの卵はありません。
先日は鳴いていただけで産卵はなかったようです。

こんなに深い積雪があると、山の生態系への影響はいろいろあることでしょう。


蛙はこのように産卵の時期をのがしました。

鹿なども多く死んだのではないでしょうか。






結局また、雪の写真ばかりになってしまった。







椅子作りも終盤になってきました。




組み立てを待つ部材。

40数脚をやったばかりなので、14脚くらいわけないような気分でいましたが、
今回の方が凝ったもので、しかも漆塗りなので気を遣います。
結構それなりに時間と手間がかかってしまいました。





これは背中が当たるあたりの部材。
カーブを厚い材から削り出しています。





こんな感じで組み立てられます。





ハタガネで締めて、一晩置きます。





今回はちょっと今までと違う作り方にしてみました。

前後の部材を組んだ後に、ご覧の電動工具でホゾ穴を開けるような工程にしてみました。


組む前に全ての穴を開ける方が加工そのものは楽です。
このように座枠のほぞ穴が1か所に集中する椅子の場合、穴も1か所に集中します。
その穴は中で繋がっているので、組み立てをすると中で糊が固まって乾きます。
片側を組んで乾いてから、その穴の中をノミなどで掃除をしないと次の組み立てができませんでした。
今回の様に組んでから穴をあけるようにすれば、その穴の掃除の必要がなくなってひと手間省けるわけです。




穴の加工が済んだら、前後も組んでいきます。


ハタガネが足りないのでこの組み立ては2日がかりです。