【松谷名誉園長さんと気まぐれ散歩】 2011.12.18(日)
植物・樹木の生き抜く戦略~果実・種子の場合~
Ⅰ動物が運ぶ⇒動物散布
①鳥などが(食べて)運ぶ⇒被食散布
植物という報酬→餌としての興味を誘う(栄養、色、臭い、大きさ、熟期)
①食べ残し」を期待⇒(貯食散布)
②動物が(に引っ付いて)運ぶ⇒動物散布
動物以外からの要因では親植物から落ちない
Ⅱ風が(に乗って)運ぶ⇒風散布
①翼で飛ぶ
②毛で飛ぶ
Ⅲ水が(に流されて)運ぶ⇒水散布
例えば、オニグルミ、ヤシ類、オヒルギ
(参考:「花から種へ」全国農村教育協会 小林正明著
その日のテーマとは別に「松谷名誉園長さんと気まぐれ散歩の日」は、まず、この木に注目です、最初にこの木の傍まで行きます。
ストランバエシア・ダビディアナ(バラ科)
2011.8.14
8月の観察会の時、松谷名誉園長さんが
「この実の色が10月、11月、12月とどんどん変わっていきます、この色の変化を観察していただければイイカナ・・・今やったら、果実も葉っぱの色も緑なんで、誰も気が付かない、素通りされてしまう、それがもったいないんで、今回来ていただいた方は次にはどのような色になっているか?見といてください。真冬にはスゴイ色に変わります。」と、言われてました。
この赤い実がそのスゴイ色・・・
5月24日に撮らはったという花の写真を見せてくれはりました。
「この花が咲くから当然こんな実が生るのです、6月になると花びらは落ちて実になりかけてます、緑の実からオレンジっぽい色になって真っ赤っかになります、是非皆さんチャレンジされて毎月ごとの実の変化を見に来て下さい」と。
「花びらを撮る時、花びらの正面からだけじゃなくて裏側からも見て欲しい、花びらの後ろ側には花びらを支える萼片と言うモノがあります、それがどないなって行くか・・・という観察も面白い」とも。
そして
「赤い果実の一番先っちょを見てみると、うん?黒っぽいモンが?その先っちょに糸みたいなモンが、3㎜ぐらいのコレが雌しべのもと・・・」
来年のハナシですが、この実が生ってる枝からは花が咲きません
新しく伸びた枝から花芽が出てました。
そういう風にしてみるみる大きくなっていく木だそうです。
センダン(栴檀)センダン科
「栴檀は双葉より芳(かんば)し」のセンダンと誰もが思いがちですが、そのセンダンはこのセンダンではなくってビャクダン科の白檀のことで、ソレは日本の屋外では育ちませんので温室でないと育ちません、当然、ウチの温室にはあります」と。
目線のところに枝がきてるセンダンがあります、春にホントにキレイな紫色の花と、香りをぜひ堪能してほしいですね。
実はブニュブニュとしてて鳥たちにはごちそうになります、種は消化しないので糞として落ちたところに居つくことになります。
余談ですが
わんちゃんちの近所の散歩道にはセンダンがあちこちにあります、これからのシーズン鳥たちが電線に止まってセンダンの実を食べます、と下に種が落ちます、白い堅い堅い種です、コレがウチのコロの大好物なんですよ、
「カリカリカリカリ」堅いのに・・・歯の丈夫さをアピールしてるみたいに。
シナサワグルミ(支那沢胡桃)クルミ科
中国原産、落葉高木、高さ20~30m
このウサギの耳のようなモンが風が吹くと、くるくるくると舞いながら親株よりちょっとでも遠いところに飛ぼうとしている、それで少しでも生育の範囲を広げていくこの木の戦略。
コレは風で飛びますから、風散布です。
クスノキ(樟、楠)クスノキ科
クスノキに黒い実、
実の中に種が、果肉部分は鳥たちのごちそう(栄養)に、種は消化しないから糞と一緒に蒔かれる、
実が生るんやから花が咲くんやね。
花って気が付いてないわんちゃんです、ゴ-ルデンウィークの頃、もんのすごう可愛らしい小さな花が咲くらしい。
「クスノキに実なんてできるワケないよと思われてる方、結構いはります、コレができるということは花が咲いてます、クスノキに花が咲くはずないと思ってられる方結構多いんですがゴ-ルデンウィークの頃来てみてください、もんのすごう可愛らしい小さな花が咲きます」と・・・
ニワウルシ(庭漆)ニガキ科
白い花が咲いているような高い木、花ではなくて果実でした。
よくよく見ると平べったい果実の片方はノペッとしてて片方は少しねじれてます、果実を腕を高く伸ばして投げ落とすと、くるくるくると舞うように落ちてきました。
ねじれてる方が、たぶん?下の方にきてたかな?
高い木についてる果実、一斉には落ちません、そこがミソだそうです。
何日間もかけてちょっとづつ落ちていく、一斉に落ちてもし何かがあったら、全部ダメになってしまうから・・・と危険度を分散している、ソレがこの木の戦略。
強い風が吹いたら遠くの方まで飛んでいきます。
名前が「ニワウルシ」となってますが、かぶれません、ウルシの仲間ではないのです、葉っぱが出てきた時、ウルシと同じようなカンジなんで・・・でもウルシではないです。
サワシバ(沢柴)カバノキ科 別名:サワシデ
サワシバの果実です。
ミノムシの大型のようなモノ、瓦重ねみたいに一つ一つが種子になってます。
ボトンと落ちるのではないらしい一つ一つが外れて飛んでいくらしい・・・
ノグルミ(野胡桃)クルミ科
瓦重ねのような付け根のところに小さな種子があります、コレも翼があるので・・・
小さな種子がいくつもいくつも飛んでいって、たまたま上手くいって何十年も経って育つとこんなに大きな樹になります。
シロバナヤマブキ(白花山吹)バラ科
フツーのヤマブキは葉っぱが互生についてます、コレは葉っぱが対生に付いて
いて花の色は白、花びらは4枚、よく知ってるヤマブキとはちょっと違うんですね、コレは果実の色がキレイですね、春の花と秋の果実と二回楽しめます。
春の花の頃またね、見に来て下さい・・・と。
ロウヤガキ(老鴉柿)カキノキ科 別名:ツクバネガキ(衝羽根柿)
中国原産、柿の一種。
最近では盆栽で使われているのが流行ってます。
萼片が4枚で羽をつくツクバネに似ているのでツクバネガキとも呼ばれている、このロウヤガキには種は出来ません、大きなロウヤガキの根元にはいっぱい苗が出ていました「何でや!」
根を掘ってみると全部、親の方に根が続いているそうです。
カギカズラ(鉤蔓) アカネ科
枝の下側にカギが付いています、そのカギの付き方が1対2対1対2の割合で付いてるというところがオモシロイ
このカギはこの木自身が何かの枝に意識して引っかけていくんじゃなくって、他の木の枝がたまたまここに来た時にその木の枝がこのカギの中に自分から入って行くという、網に引っ掛かった魚のように引っ掛かった枝は絶対抜けません、引っ掻けたカギはひっかけてないカギよりも太ります、自分で自分の枝を引っ掻けることも多々あります。
このカギには薬効成分があるらしい・・・
生薬として釣藤鈎(チョウトウコウ)
↑夏から秋にかけて釣を採取して日干しにしたもの
高血圧患者の頭痛、眩暈や、子供のひきつけ、疳の虫に用います。
有効成分はリンコフィリンというアルカロイドで、血管を拡張し高血圧を改善することが明らかになっています。
挿し木ででも繁殖します
「植物ってホンマに生命力が強いですね、どんなことがあっても生き延びていくぞ、っということをカンジました今日はそういうところを強調してます」と、最後におっしゃってました。
【おまけ】
レンギョウ(連翹)モクセイ科
レンギョウが咲いてました。
コレは人間が勝手な表現でする「狂い咲き」
グワッと寒くなったけど日中の気温が高くなると咲いてみる・・・
レンギョウにしたら別に狂ってるわけではないのです。
葉っぱが落ちてしまって、寒くなって冬、そんな時に咲いたら何があるかワカラナイ(レンギョウにとって)から、咲かない。
次、咲くときは気温が上がったとき、フツーは春、ところが最近日中の気温が高くなったので、ソレを春と間違えて咲かなアカンというDNAが働いたんで咲いてしまった・・・
全部が全部咲いてるワケじゃないです、個体差があります、ものスゴク感受性の強いのだけが咲いてるんですよね。
残ったレンギョウたちは春に咲きます、この咲いてしまったレンギョウは来春には咲きません、花芽が無い!
「小春」 永井荷風
小春の空の晴れつゞき
返り咲く山吹に蝶も舞ふなり。
いつはりの春。
去りゆく秋の名残り。
やるせなき思出の痕。
さめたる夢の消え行くかげ。
皆一瞬のまぼろしとは知れど
虚無のさびしさには優るべし。
されば堪へ難き悔と未練の苦しさも
われには嬉しわれにはいとし。
かへらぬよろこびの名残とおもへば。
↑道草さんよりいただきました。
メグスリノキ(目薬の木)カエデ科 別名:千里眼の木
キレイな赤色、ものすご~くキレイな赤、メグスリノキの紅葉は美しい!!
京都府立植物園では一番遅く紅葉が始まって、遅くまで紅葉している。
(花の径約5mm、5月に咲く、雌雄異株)
メグスリノキの効能
目がかすむような時に樹皮を煎じて内服すると、遠方までハッキリするという。
また、肝臓疾患の薬としても用いられているということだが、
中国古典:素問(そもん)、霊枢(れいすう)には
「肝気は目に通ず、肝和すれば、目よく五色を弁ず」と、あるように目がよくなれば肝がよくなるのは、漢方の基本の「き」とある。
参考書:薬になる山野草(主婦の友社)
京都府立植物園でこの日アリドオシに出合いました
こちら に追記しましたのでご覧ください
次回は京都府立植物園観覧温室~イルミネーション~氷の彫刻
そんな時期に、また咲く花は返り花なのでしょう。狂い咲きは少し可哀想です。
街路樹の銀杏も、ほとんど葉が落ちました。殺風景な光景の中で、返り花を見つけると嬉しくなります。
明日は立冬。いよいよ冬将軍の到来でしょうか。いっそ、雪が降れば嬉しいのですが・・・。
「小春」 永井荷風
小春の空の晴れつゞき
返り咲く山吹に蝶も舞ふなり。
いつはりの春。
去りゆく秋の名残り。
やるせなき思出の痕。
さめたる夢の消え行くかげ。
皆一瞬のまぼろしとは知れど
虚無のさびしさには優るべし。
されば堪へ難き悔と未練の苦しさも
われには嬉しわれにはいとし。
かへらぬよろこびの名残とおもへば。
この日は冬至かぼちゃを食べて、冬至風呂(柚子湯)に入って無病息災を祈るンですよね。
お日様の出てるのが一番短くって、
夜が一番長いのですよね。
年内もあと10日、何かと気忙しないですこと・・・
カレンダーの一通過点と想えばそれまでなんですが・・・
道草さん、いつもご覧いただきアリガトウです
なるほど私なんぞ・・ぼんやり見過ごしてる実・・色々確認でき楽しいですね・・。
これだけしっかりわんちゃんの様に見、そして文字にしてますと簡単には忘れませんでしょ・・感心します。画像も良いですねぇ~。
名札が付いていますが・・・というところです。
名誉園長さんがとっておきの木々を継続的に解説されて、というところが楽しいです。
花が咲いて実が生って、とか、実が生ってるから花が咲いた、とかが面白いです。
ですので、植物園以外の所ででも継続的に観察、というのが、これまた楽しいです。