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彗星の氷はカプチーノの泡より柔らかい? 探査機“フィラエ”が彗星着陸に失敗して分かったこと

2020年11月14日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
2014年にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸を行ったヨーロッパ宇宙機関の探査機“フィラエ”。
着陸時に機体の固定に失敗し、“フィラエ”は彗星表面で2回バウンドし飛ばされてしまうんですねー
今回発表されたのは、2回目にバウンドした場所を特定したこと。
その際に取得されたデータから、彗星の氷の内部がカプチーノの泡より柔らかいことが判明したそうです。

史上初めて彗星の周回軌道にのった探査機“ロゼッタ”

2004年3月2日、2つの探査機が彗星に向けてギアナ宇宙センターから旅立ちました。

名前は“ロゼッタ”と“フィラエ”、ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機(母船)と着陸機でした。
古代エジプト文字ヒエログリフの謎を解読する手掛かり、石板“ロゼッタストーン”にちなんで名付けられている。

“ロゼッタ”と“フィラエ”は10年を超える64億キロの航海を経て、2014年8月6日に目的地のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到達。
“ロゼッタ”は史上初めて彗星の周回軌道にのり、観測を始めることになります。

“ロゼッタ”の目的は、太陽系初期に生まれたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を探査することで、太古の氷とチリの塊である彗星の謎を解明することでした。

史上初めて彗星に着地した探査機“フィラエ”

そして2014年11月のこと。
“フィラエ”は母船の“ロゼッタ”から分離され、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星へ降下していきます。
人類は初めて彗星に探査機を着地させることに成功するんですねー

ただ、機体の固定に失敗した“フィラエ”は、バウンドして飛ばされることに…
“フィラエ”は着地点の正確な位置が分からず、行方不明になってしまいます。

どうやら“フィラエ”は、日が当らない岩陰に傾いて着地したようで、太陽光による発電が出来ない状態になっていました。
当初、“フィラエ”が目指していたのは、“アギルキアと名付けられた場所への着陸だった。

調査は、あらかじめ充電されていたバッテリーを使うことで開始し、当初予定されていた観測をほぼ完了。
ただ、着陸から約57時間後にバッテリー切れで“フィラエ”は活動を停止し、冬眠モードに入ってしまいます。
彗星着陸機“フィラエ”のイメージ図。2014年にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着地したが、その時どのような道程をたどったのかはこれまで謎だった。(Credit: ESA/ATG medialab)
彗星着陸機“フィラエ”のイメージ図。2014年にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着地したが、その時どのような道程をたどったのかはこれまで謎だった。(Credit: ESA/ATG medialab)

“ロゼッタ”が行方不明の“フィラエ”を発見

ところが、7か月後の6月13日のこと、“フィラエ”は再起動に成功。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を周回している“ロゼッタ”を経由して、不安定ながらも通信が行えたんですねー

再起動が行えた理由は、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の太陽に近づく軌道にあったようです。
徐々に太陽に近づくにつれ、“フィラエ”に当たる太陽光の量も増えていきます。
太陽電池パネルによってバッテリーが再充電され、再起動が行えたようです。

でも、6月24日を最後に、また通信が途絶えることになります。
その後、散発的ながら信号が地表に届くことはあったものの、探査活動を再開するまでには至らず…
“フィラエ”は2016年7月28日には運用を断念されてしまいます。

着地以降、通信こそ“ロゼッタ”を経由し地球に届いたものの、当初予定していた地点から外れた場所に着地してしまった“フィラエ”の正確な着地点や、着地後の姿は不明のままでした。

ところが、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を周回していた“ロゼッタ”が9月2日に撮影した画像に、“フィラエ”が写っていたんですねー
彗星表面約2.7キロの高度から、“ロゼッタ”に搭載された“オシリス狭角カメラ”がとらえていたのは、3本脚のうちの2本を伸ばした“フィラエ”の機体でした。
彗星表面で2回バウンドした“フィラエ”は、最終的に“アビドス”と名付けられた場所に着地していた。

一方、およそ2年間にわたってチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を観測し、数多くのデータを地球に送り続けてくれた“ロゼッタ”は、9月に彗星への制御衝突を行いミッションを終了。
電力不足により搭載された科学実験機器を、効果的に機能させることが難しくなることが理由でした。

太陽に最接近した後の“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”は、再び6年半もの旅を始めることになります。
太陽から離れてしまうので、“ロゼッタ”は十分な電力を太陽光発電からは得られなくなるんですねー

“フィラエ”が2回目にバウンドした場所を発見

今回研究チームが特定に成功したのは、“フィラエ”が2回目にバウンドした場所でした。

“フィラエ”に搭載されたセンサーが示していたのは、2回目にバウンドした際に地面を掘っていたこと。
つまり、そこには彗星表面に隠されていた、太陽系ができたころの氷が露出している可能性が高く、その場所を見つけることは彗星の謎解明に重要になります。

この発見で重要になったのは、“ロゼッタ”の高分解能カメラの情報のほか、“フィラエ”に搭載された磁力計ブームの情報でした。

このブームは“フィラエ”本体から48センチほど突き出していて、その磁気データからブームが氷の中に突き刺さった際の時刻を推定することができたそうです。

また、着地時の“フィラエ”の加速度を推定することにも役立つほか、“ロゼッタ”の磁力計が同時に収集したデータと照らし合わせることで、“フィラエ”の姿勢を決定することもできました。

その結果、判明したのは“フィラエ”が2回目のタッチダウン地点で2分間近くも過ごしたこと。
その後、転がるように動き、少なくとも4回、機体の各所が彗星に接地していたようです。

“ロゼッタ”が撮影した画像からは、“フィラエ”の上面が氷の中に約25センチ沈んだ時にできた痕跡が、はっきりと確認できました。

さらに、“フィラエ”の磁力計ブームのデータから分かったのは、“フィラエ”がこの窪みを作るのに3秒かかったこと。
この“フィラエ”によって作られた窪みの形が、上から見たときに頭蓋骨を連想させたことから、この地域は“頭蓋骨上の尾根(skull top ridge)”と名付けられています。
“フィラエ”が2回目のバウンド時にどのような動きをしたのかを示した図。(Credit: ESA/Rosetta/MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/SSO/INTA/UPM/DASP/IDA; Data: ESA/Rosetta/Philae/ROMAP; Analysis: O’Rourke et al (2020))
“フィラエ”が2回目のバウンド時にどのような動きをしたのかを示した図。(Credit: ESA/Rosetta/MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/SSO/INTA/UPM/DASP/IDA; Data: ESA/Rosetta/Philae/ROMAP; Analysis: O’Rourke et al (2020))

彗星の氷の内部はカプチーノの泡より柔らかい

“フィラエ”が転がることで、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の氷を覆っていた炭素質のチリが削られました。

これにより露出したのは、彗星表面に隠されていた氷です。

この氷は、これまで太陽の放射線から守られていた、つまり宇宙風化を受けていない、彗星が形成された当時の氷と言えます。
“フィラエ”のバウンド前と後に“ロゼッタ”から撮影した画像を分析したところ、暗闇の中で輝く光点として現れていることも確認されています。
“フィラエ”が2回目のバウンド時、地面に降り積もったチリが飛ばされ、彗星が形成された当時の氷が露出。この露出部を“ロゼッタ”による観測では光点としてとらえている。(Credit: ESA/Rosetta/Philae/ROLIS/DLR; all other images: ESA/Rosetta/MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/SSO/INTA/UPM/DASP/IDA; Analysis: O’Rourke et al (2020))
“フィラエ”が2回目のバウンド時、地面に降り積もったチリが飛ばされ、彗星が形成された当時の氷が露出。この露出部を“ロゼッタ”による観測では光点としてとらえている。(Credit: ESA/Rosetta/Philae/ROLIS/DLR; all other images: ESA/Rosetta/MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/SSO/INTA/UPM/DASP/IDA; Analysis: O’Rourke et al (2020))
さらに、“フィラエ”のデータから、彗星の氷の内部の柔らかさについても測定することに成功しています。

岩塊(ボルダー)の中の氷の粒の間に、どれだけの空隙があるかという空隙率の推定は約75%。
この値は、以前に別の研究で推定された彗星全体の空隙率とも一致したそうです。

また、この値は地表から地下約1メートルまでだと、どこでも均質であることが示されています。
“頭蓋骨上の尾根”の岩塊では、約45億年前に形成された彗星の地表から約1メートル内部までの、平均的な状態を表しているようです。

“フィラエ”が転がり押し付けるという単純な行為によって分かったのは、何十億年も前からある古代の氷の混合物が非常に柔らかいこと。
カプチーノの泡や泡風呂の泡、海岸の波の上にある泡よりもフワフワしているようです。

このことは、“フィラエ”の着陸失敗を埋め合わせる以上のこと、彗星の性質について重要なことを教えてくれたといえます。

特に、彗星表面の強度を理解することは、将来の着陸ミッションにとって非常に重要なことになります。
将来の彗星探査機に必要になる、着陸装置の設計やサンプル回収機構の仕組みなどに、きっと活かされるはずです。


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探査は終了したけどまだまだ発見はある! 探査機“ロゼッタ”のデータから“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”の色変化を追いかける

2020年03月02日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
探査機“ロゼッタ”により得られた2年分のデータから、“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”の色が、太陽からの距離によって変化していたことが分かってきました。
太陽から遠いときにはコマが青く核は赤、太陽に近づくとその反対になっていたようです。


史上初めて彗星の周回軌道にのった探査機“ロゼッタ”

2004年3月2日、1つの探査機が彗星に向けてギアナ宇宙センターから打ち上げられました。

名前は“ロゼッタ”、ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機です。
  古代エジプト文字ヒエログリフの謎を解読する手掛かり、石板“ロゼッタストーン”にちなんで名付けられた。

“ロゼッタ”は10年を超える64億キロの航海を経て、2014年8月6日に目的地の“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”に到着。
史上初めて彗星の周回軌道にのり観測を始めることになります。

“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”は太陽系初期に生まれた彗星。
そう、“ロゼッタ”の目的は太古の氷とチリの塊である彗星の謎の解明でした。

“ロゼッタ”は2014年からおよそ2年間にわたって“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”を観測し、彗星の上空から数多くのデータを地球に送り続けてくれました。

ただ、太陽に最接近した後の“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”は、再び6年半もの旅を始めることになります。
太陽から離れてしまうので、“ロゼッタ”は十分な電力を太陽光発電からは得られなくなるんですねー

電力不足により搭載された科学実験機器を効果的に機能させることが難しくなるので、2016年9月に彗星への制御衝突を行いミッションを終えています。
ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機“ロゼッタ”(イメージ図)。
ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機“ロゼッタ”(イメージ図)。


“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”の変化を追いかける

“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”の大きさは約3キロほどしかありません。
なので、地上から彗星の核を観測することや、長期的な変化を追い続けることは難しいんですねー

でも、いま“ロゼッタ”の膨大な観測データによって彗星の変化とその過程の理解が進んでいます。
2015年7月7日に“ロゼッタ”が154キロ離れた位置から撮影した“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”。
2015年7月7日に“ロゼッタ”が154キロ離れた位置から撮影した“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”。
可視赤外撮像分光計“VIRTIS”は“ロゼッタ”に搭載されていた観測機器の一つ。
彗星の核表面の固体の性質や温度を調べるための機器です。

今回の研究では、“VIRTIS”によって2年間で得られた4000以上の観測データを分析し、“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”の変化を追いかけています。研究を進めているのはイタリア・宇宙物理学研究所のVIRTISチームです。

“ロゼッタ”が“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”に到着した時には、彗星は太陽から5.4億キロも離れた位置にいました。

この時、彗星の表面はダストの層で覆われていたので氷はほとんど見えず… “VIRTIS”の観測で分かったのは彗星の表面が赤いこと。
その後、“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”が太陽に近づくと、彗星の表面の色が青く変化している様子がとらえられます。

太陽から約4.5億キロ離れた“スノーライン”を超えて彗星が内側に入ってくると、太陽の熱によって水の氷が昇華し気体になります。
  “スノーライン”は水・アンモニア・メタンなどの水素化合物が凝集し、気体から固体になるのに十分な低温になる境界線。

“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”でも地表下に隠れていた氷が昇華し、水の氷が存在することが確認されていました。

今回の色の変化は、この氷の昇華が彗星の表面の色として“VIRTIS”によってとらえられた現象でした。

色の変化は彗星の表面だけでなく、彗星の周りでも起きていました。
彗星が太陽から遠く離れているときには、彗星の核の周囲に広がるコマにダストはほとんどなく、水の氷が含まれていたため、“VIRTIS”では青く見えていました。

ただ、彗星が“スノーライン”を越えるとダストの中の水の氷は急速に昇華して失われ、ダストだけが残されることになります。

このため“VIRTIS”では、彗星が太陽に近づくにつれ赤く、彗星が太陽から遠ざかっていくと再び核が赤くコマが青く見えていました。
“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”の色の変化を表したイラスト。太陽から遠いとき(左の2つ)は彗星の核が赤く周囲は青い。太陽に最接近した時には彗星の核が青く周囲は赤く見える。
“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”の色の変化を表したイラスト。太陽から遠いとき(左の2つ)は彗星の核が赤く周囲は青い。太陽に最接近した時には彗星の核が青く周囲は赤く見える。
スペクトル分析によると、ダストの赤い色は炭素を含む有機分子に由来するものとみられています。
ただ、それが何であるかを知るには、彗星表面の物質を採取する必要があるんですねー

それが可能になるまでは、“VIRTIS”をはじめとする探査データを使用して“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”を調べ続けることになります。

“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”の探査は終了してしまいました。
でも、“ロゼッタ”が2年間にわたって地球に送り続けてくれたデータは沢山あります。

このデータの分析はまだまだ続くことになるので、もっとワクワクするような発見が出てくるかもしれませんよ。


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  最後のミッションは彗星への着陸。探査機“ロゼッタ”は9月29日に降下開始
    

最後のミッションは彗星への着陸。探査機“ロゼッタ”は9月29日に降下開始

2016年09月26日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
2014年11月、人類は初めて彗星に探査機を着陸させることに成功しました。

ただ、着陸機の“フィラエ”は機体の固定に失敗し、
日が当らない場所に傾いて着地してしまい、太陽光による発電が出来ない状態に…
バッテリーを使い果たした“フィラエ”は冬眠モードに入ってしまいます。

いっぽうで相棒の探査機“ロゼッタ”は、
その後約2年間も彗星の上空から数多くのデータを地球に送り続けてくれています。

でも、そのミッションもついに最後の時を迎えるんですねー

この9月末に“ロゼッタ”は彗星に着陸し、
その後最後のデータ収集に取りかかることになります。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星


着陸予定場所

最近、ヨーロッパ宇宙機関は“ロゼッタ”の着陸予定場所の画像を公開しました。

その場所は、ふたつの岩を合体させたように見えるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の、
小さい方の岩の先端近く。

その場所は無事着陸できることを祈るためか、
調和や秩序を司るエジプトの女神にちなんで“マアト”と名付けられています。
“ロゼッタ”の着陸予定場所“マアト”

“マアト”には石がゴロゴロ散らばった鳥肌のように見える部分と、
真っ暗で深そうな穴があり、そこからは激しいガスやホコリが噴き出しているようです。

見るからに荒涼としていますが、だからこそ探査する価値があり、
ここからチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の形成を理解するためのカギが、
見つかるかもしれないんですねー


どうやって彗星ができるのか

“マアト”の穴は、壁の内側の構造が変わっていて、
壁の表面が3ミリのボールをくっつけ合わせたみたいになっています。

これは彗星が形成されたときの無残りだと考えられている。

ロゼッタミッションにとって重要な課題は、
彗星がいかにして彗星になるのかということを突き止めることです。

小さな氷のかたまりが、いかにして集まり、凝固してまとまっていったのかを、
“マアト”の壁にある構造を調べることで、答えにつながる何かが得られるかもしれません。


ミッション最後の計測

“ロゼッタ”は9月29日に降下を始め、30日に着陸する予定です。
“ロゼッタ”の最後の1週間の動き。
彗星を周回していた“ロゼッタ”は29日に降下を始める。

そのとき、搭載された“オシリス狭角カメラ”は、
彗星上の複数の穴をより良くとらえるために角度を合わせ、
地球との交信を絶つまでの間、詳細な画像を撮り続けることになります。

“ロゼッタ”が最後に到着するのは、
“ディール・エル=メディナ”と呼ばれている幅130メートルの穴のわき。
(穴の中が横目で見えるイイ場所に降り立ちます。)

質量分析計による大気中の物質の計測や、ホコリの取り込み、
太陽風に対する地表の反応もプラズマ計測機で記録するなど、
カメラ以外の観測機器も最後の仕事を始めることになります。
彗星へ着地寸前の“ロゼッタ”のイメージ図

そして“ロゼッタ”が最期を迎える場所“マアト”は、
最近見つかった“フィラエ”と同じかたまり側にあります。

なので予定通りなら、
“フィラエ”と“ロゼッタ”は最後に数キロの距離に近づくことになります。

ミッション終了後には、
二つの探査機が寄り添ったように太陽を離れて行くことに…
最後のミッションが成功するといいですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ ついに発見! 行方不明の彗星着陸機“フィラエ”


ついに発見! 行方不明の彗星着陸機“フィラエ”

2016年09月20日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
彗星に着陸した後に行方不明になり、
今年7月末に運用を終えていた着陸機“フィラエ”が見つかったんですねー

“フィラエ”は親機“ロゼッタ”が撮影した画像から見つかったのですが、その“ロゼッタ”もミッション終了まで残り1か月…
ギリギリのタイミングでの発見でした。

  彗星着陸機“フィラエ”の復旧を断念… 交信用システムはオフへ


ロゼッタの画像に写っていたもの

画像はヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機“ロゼッタ”がとらえたものでした。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を周回していた“ロゼッタ”は、
彗星表面約2.7キロの高度から“オシリス狭角カメラ”により撮影。

9月2日に撮影され、その2日後に地球に届いた画像には、
3本脚のうちの2本を伸ばした“フィラエ”の機体がはっきりと写っていました。
岩陰にとらえられた“フィラエ”。
機体の角度から着陸後に通信困難となった理由も見てとれる。


どうやって発見したのか

“フィラエ”は2014年11月に“ロゼッタ”から分離され、
史上初となる彗星への軟着陸を果たすのですが、
機体の固定に失敗し弾みで飛ばされてしまいます。

岩陰に入ってしまった“フィラエ”は太陽光発電が出来なくなり、
着陸の3日後にはバッテリーを使い果たして冬眠モードに入りことになります。

それでも、彗星が太陽に接近した2015年6月と7月には、
“フィラエ”は短いながらも目を覚まし“ロゼッタ”と交信するんですねー
  彗星着陸機“フィラエ”と6月24日以来の通信に成功! また途絶えることに…

でも“フィラエ”の正確な位置は分からず…

電波を使った捜索により、ある程度の範囲まで絞り込まれていたのですが、
離れたところから撮影された低解像度画像には、
あまりにも多くの候補物体がありすぎたんですねー

ただ詳しい画像解析によって、ほとんどの候補が外されていくと、
ある1つのターゲットが“フィラエ”である可能性が高まっていきます。

そして、1ピクセルあたり5センチという高解像度の画像の中に、
脚やパネル、カメラといった“フィラエ”の特徴が見え、
このターゲットが間違いなく“フィラエ”であると分かりました。
“フィラエ”のクローズアップ


“ロゼッタ”の最終ミッション

“ロゼッタ”は2014年夏から、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の周回探査を続けてきましたが、
そのミッションも間もなく終わることになります。

“ロゼッタ”は9月30日に、彗星の表面へと降下して至近距離から観測を行い、
彗星の内部構造の秘密に迫る予定です。
  彗星探査ミッション延長へ、“ロゼッタ”は彗星に着陸するかも…

そう、二度と戻ることのない片道ミッションを実施することになります。

ミッションも残すところ1か月を切った今、
“フィラエ”の姿がとらえられ、驚くほど詳細にその機体を見ることができました。

着陸機“フィラエ”の捜索が終わったことで、
“ロゼッタ”に残されたのは彗星への着地だけとなりました。

最後に楽しみなのは、彗星にさらに接近した“ロゼット”から送られてくる画像ですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 彗星探査機“ロゼッタ”がガス噴出と地すべりを観測


彗星探査機“ロゼッタ”がガス噴出と地すべりを観測

2016年09月12日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
ヨーロッパ宇宙機関が2004年に打ち上げた彗星探査機“ロゼッタ”。

2014年には搭載してていた着陸機“フィラエ”が、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸するなどの活躍をしているんですねー
2月19日に噴出活動があったチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。
“ロゼッタ”のオシリス広角カメラで撮影。

今回は“ロゼッタ”が新たに観測したのは、彗星で発生したガス噴出と地すべりでした。

太陽を周回していたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、
2015年8月には太陽に最も近づく近日点を通過しています。

それによって彗星が熱せられ、今回のガス噴出につながったようです。

報告によると今年の2月19日、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のアトゥムという場所で噴出活動が始まります。
噴出活動があったアトゥム

この活動をとらえたのが、彗星の35キロ上空を飛行していた“ロゼッタ”の搭載機器、
ガス/プラズマ検査偏光子や粒子感知器でした。

ガス噴出の途中には粒子感知器が多数の粒子の放出をとらえ、
またガスやプラズマの増加、そしてガス自身の30度ほどの加熱も観測されていました。

さらに、この噴出は彗星内部というよりも、彗星の氷が熱せられたことでガスになり、
それが地すべりを発生させたものと見られています。
彗星探査機“ロゼッタ”
赤字は活動をとらえた観測機器。

このように彗星探査で様々な活躍してきた“ロゼッタ”ですが、
今月(9月)末にはミッションの終了が予定されています。

さらに彗星に降り立った“フィラエ”も交信が断念され、実質的に活動を終了…

10年を超える航海を続け、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の観測と、史上初の着陸をやってのけた“ロゼッタ”と“フィラエ”。
ご苦労様でした。

 
こちらの記事もどうぞ ⇒ 彗星着陸機“フィラエ”の復旧を断念… 交信用システムはオフへ