天王星の衛星は総質量が天王星に比べてとても小さく、遠く離れた位置で天王星と同じく大きく傾いた軌道を回っています。
こうした特徴は、地球のような岩石惑星とも木星のようなガス惑星とも異なっているんですねー
ひょっとすると、氷惑星である天王星ならではの衛星形成モデルが存在しているのかもしれません。
とても小さい衛星の総質量
天王星は太陽系7番目の惑星で、あまりに遠いので太陽を一周するのに84年もかかるんですねー
不思議なのは、天王星の自転軸の傾きがほぼ横倒しになっていること。
太陽系の惑星の多くは、太陽の周りを回る軌道面に対しておおむね直立して自転していますが、天王星は直立方向から98度も傾いています。
そして、天王星の主要な衛星5つも天王星の自転に沿って横倒しの軌道を回っています。
主要な衛星はアリエル、ウンブリエル、タイタニア、オベロン、ミランダの5つ。
もともと天王星は、他の惑星のように直立した自転で誕生しました。
でも、約40億年前に地球の1~3倍の質量の天体が衝突して自転が傾いたという説が有力です。
その際に飛び散った破片が集まって衛星になったのだとすると、衛星の軌道面も横倒しになっていることが説明できます。
ただ、衛星すべてを合わせた質量は天王星の0.01%…
それに対して、理論上だと衝突の破片から誕生した衛星の質量は、惑星の1%程度になるはずです。
巨大衝突で生まれたことが有力視される地球の月は、この質量比に当てはまっているんですねー
離れた位置にある衛星
また、衝突の破片が集積するのは惑星のすぐそばのはずです。
もともと地球に近い位置にあった月は、45億年に及ぶ地球との重力相互作用で、だんだん遠ざかったと考えられています。
ただ、天王星の衛星はどれも軽すぎて重力相互作用は働きません。
それでも、天王星最大級の衛星は天王星半径の15~25倍という離れた位置にあります。
衛星が誕生するシナリオとして考えられるのは、巨大衝突説の他に円盤説があります。
これは、誕生直後の惑星が周囲のガスを取り込む際に円盤を形成し、その中から衛星が生まれるというものです。
これなら衛星の総質量は惑星の0.01%になり、この説で誕生したと考えられる木星のガリレオ衛星は条件に当てはまっています。
でも、天王星は最初から横倒しで誕生したわけではないはずです。
そう、衛星の軌道も横倒しになっていることは円盤説では説明できないんですねー
地球型惑星とも木星型惑星とも異なる衛星形成
天王星は氷を主成分とする惑星であり、地球のような岩石惑星とも木星のようなガス惑星とも異なっています。
そのため、巨大衝突では固体の破片が飛び散るのではなく、水が完全に蒸発して水蒸気の円盤が形成されるはず。
この点に注目した東京工業大学の研究チームが行ったのは、この水蒸気円盤から衛星が形成される過程のコンピュータシミュレーションでした。
衝突により天王星の質量の1%が蒸発して円盤になったとすると、そのままでは水蒸気に熱がこもって固まることができません。
水蒸気の99%が天王星に再吸収され、残りの円盤が天王星半径の10倍以上に広がったときにようやく氷が凝縮できるそうです。
1%の1%、つまり0.01%という数字は天王星の衛星の総質量と一致し、衛星の軌道が天王星から離れていることもこれで説明できます。
この天体の衝突で衛星が生まれるというシナリオは、一見すると地球の月が形成された過程と似ています。
でも、岩石を主成分とする地球では、飛び散った破片はすぐに凝縮してしまいます。
なので、どのような巨大衝突が起こるのかが月の作られ方を左右することになります。
一方、天王星のような氷天体で衛星が誕生するときに重要なのは、最初の衝突だけではないんですねー
円盤が冷えたり広がったりする過程も重要だということが、今回の研究結果から示されました。
このように、地球型惑星とも木星型惑星とも全く異なる衛星形成の理論モデルは、天王星と同じような氷惑星に一般的に適用できる標準モデルになりえるそうです。
太陽系の海王星だけでなく、地球の数倍の質量をもち岩石や氷からなると予想される“スーパーアース”に分類される太陽系外の惑星についても、同様の推論が成り立つようですよ。
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天王星の自転軸はどうやって横倒しになったのだろう? シミュレーションから分かった天体衝突のシナリオ
こうした特徴は、地球のような岩石惑星とも木星のようなガス惑星とも異なっているんですねー
ひょっとすると、氷惑星である天王星ならではの衛星形成モデルが存在しているのかもしれません。
とても小さい衛星の総質量
天王星は太陽系7番目の惑星で、あまりに遠いので太陽を一周するのに84年もかかるんですねー
不思議なのは、天王星の自転軸の傾きがほぼ横倒しになっていること。
太陽系の惑星の多くは、太陽の周りを回る軌道面に対しておおむね直立して自転していますが、天王星は直立方向から98度も傾いています。
そして、天王星の主要な衛星5つも天王星の自転に沿って横倒しの軌道を回っています。
主要な衛星はアリエル、ウンブリエル、タイタニア、オベロン、ミランダの5つ。
天王星の自転軸(黄色)の傾きは軌道面に対して横倒しになっていて、衛星の軌道も同じく横倒しになっている。(Credit: 京都大学) |
でも、約40億年前に地球の1~3倍の質量の天体が衝突して自転が傾いたという説が有力です。
その際に飛び散った破片が集まって衛星になったのだとすると、衛星の軌道面も横倒しになっていることが説明できます。
ただ、衛星すべてを合わせた質量は天王星の0.01%…
それに対して、理論上だと衝突の破片から誕生した衛星の質量は、惑星の1%程度になるはずです。
巨大衝突で生まれたことが有力視される地球の月は、この質量比に当てはまっているんですねー
離れた位置にある衛星
また、衝突の破片が集積するのは惑星のすぐそばのはずです。
もともと地球に近い位置にあった月は、45億年に及ぶ地球との重力相互作用で、だんだん遠ざかったと考えられています。
ただ、天王星の衛星はどれも軽すぎて重力相互作用は働きません。
それでも、天王星最大級の衛星は天王星半径の15~25倍という離れた位置にあります。
衛星が誕生するシナリオとして考えられるのは、巨大衝突説の他に円盤説があります。
これは、誕生直後の惑星が周囲のガスを取り込む際に円盤を形成し、その中から衛星が生まれるというものです。
これなら衛星の総質量は惑星の0.01%になり、この説で誕生したと考えられる木星のガリレオ衛星は条件に当てはまっています。
でも、天王星は最初から横倒しで誕生したわけではないはずです。
そう、衛星の軌道も横倒しになっていることは円盤説では説明できないんですねー
太陽系7番目の惑星“天王星”。(Credit: Lawrence Sromovsky、University of Wisconsin-Madison/W.M. Keck Observatory/NASA) |
地球型惑星とも木星型惑星とも異なる衛星形成
天王星は氷を主成分とする惑星であり、地球のような岩石惑星とも木星のようなガス惑星とも異なっています。
そのため、巨大衝突では固体の破片が飛び散るのではなく、水が完全に蒸発して水蒸気の円盤が形成されるはず。
この点に注目した東京工業大学の研究チームが行ったのは、この水蒸気円盤から衛星が形成される過程のコンピュータシミュレーションでした。
衝突により天王星の質量の1%が蒸発して円盤になったとすると、そのままでは水蒸気に熱がこもって固まることができません。
水蒸気の99%が天王星に再吸収され、残りの円盤が天王星半径の10倍以上に広がったときにようやく氷が凝縮できるそうです。
1%の1%、つまり0.01%という数字は天王星の衛星の総質量と一致し、衛星の軌道が天王星から離れていることもこれで説明できます。
天王星の衛星の質量と軌道半径について、実際の値とシミュレーション結果とを比較したグラフ。(Credit: 京都大学) |
でも、岩石を主成分とする地球では、飛び散った破片はすぐに凝縮してしまいます。
なので、どのような巨大衝突が起こるのかが月の作られ方を左右することになります。
一方、天王星のような氷天体で衛星が誕生するときに重要なのは、最初の衝突だけではないんですねー
円盤が冷えたり広がったりする過程も重要だということが、今回の研究結果から示されました。
このように、地球型惑星とも木星型惑星とも全く異なる衛星形成の理論モデルは、天王星と同じような氷惑星に一般的に適用できる標準モデルになりえるそうです。
太陽系の海王星だけでなく、地球の数倍の質量をもち岩石や氷からなると予想される“スーパーアース”に分類される太陽系外の惑星についても、同様の推論が成り立つようですよ。
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天王星の自転軸はどうやって横倒しになったのだろう? シミュレーションから分かった天体衝突のシナリオ