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ヴァージン・ギャラクティックが宇宙船スペースシップ2による最後の宇宙飛行に成功! 2026年からは新型宇宙船デルタ・クラスへ

2024年06月15日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
日本時間2024年6月9日未明のこと、
アメリカの民間宇宙企業ヴァージン・ギャラクティック社(Virgin Galactic)は、宇宙船スペースシップ2の2号機“VSSユニティ(VSS Unity)”による、同社7回目の商業宇宙飛行ミッション“Galactic 07”を実施しました。

6名のクルーを載せた“VSSユニティ”は、高度80キロ以上の宇宙空間(※1)へ到達した後に、無事地上へ帰還したことが同社から発表されています。
※1.国際的には高度100キロ以上が宇宙と定義されているが、米空軍は高度80キロ以上と定義している。
図1.“Galactic 07”ミッションでロケット・モーターを点火して上昇する“VSSユニティ”。(Credit: Virgin Galactic)
図1.“Galactic 07”ミッションでロケット・モーターを点火して上昇する“VSSユニティ”。(Credit: Virgin Galactic)
ヴァージン・ギャラクティック社によると、空中発射母機ホワイトナイト2の“VMSイブ”に吊り下げられた“VSSユニティ”は、日本時間2024年6月8日23時31分にアメリカ・ニューメキシコ州のスペースポート・アメリカを離陸。
高度約1万3580メートル(4万4562フィート)で“VMSイブ”から切り離された“VSSユニティ”は、ロケット・モータを点火し最大速度マッハ2.96まで加速・上昇していきます。

地球を回る軌道には乗らないサブオービタル軌道を飛行した後に、日本時間6月9日0時41分にスペースポート・アメリカに着陸。
最高到達高度は約87.5キロ(54.4マイル)とされています。

今回の“Galactic 07”は、ヴァージン・ギャラクティック社にとって2024年1月に実施された“Galactic 06”に続く12回目、商業宇宙飛行としては7回目の宇宙飛行ミッションでした。

また、今回は2023年11月の“Galactic 05”以来3回目となる“準軌道科学実験室”としてのミッションでもあり、推進剤の挙動を研究するための装置(パデュー大学)と微小重力環境下における新しい3D印刷技術をテストするための装置(カリフォルニア大学バークレー校)が搭載されていました。
図2.“Galactic 07”ミッションでサブオービタル軌道を飛行中の“VSSユニティ”のキャビンの様子。(Credit: Virgin Galactic)
図2.“Galactic 07”ミッションでサブオービタル軌道を飛行中の“VSSユニティ”のキャビンの様子。(Credit: Virgin Galactic)
本ミッションのクルーは6名。
1名は研究者で3名は民間宇宙飛行士でした。

このうち研究者として搭乗したトルコ宇宙機関(TUA)のTuva Ataseverさんは、アメリカの民間企業アクシオム・スペース社(Axiom Space)による民間主導の国際宇宙ステーション滞在ミッション“Ax-3”でバックアップクルーを務めた人物。
有人宇宙飛行に関連した生理学的データとして、脳の活動をモニタリングするための装置など3つの実験装置を携えて登場していました。

なお、ヴァージン・ギャラクティック社は新たな宇宙船“デルタ・クラス(Delta Class)”の開発を進めていて、“VSSユニティ”による商業宇宙飛行は今回が最後となります。
同社によると、“デルタ・クラス”は毎月8回のミッションを実施可能とし、最初の商業宇宙飛行は2026年に予定されているそうです。


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スペースXの新型ロケット“スターシップ”が打ち上げ成功! 多数のタイル消失やフラップ損傷でも大気圏再突入・軟着水を成功

2024年06月07日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
日本時間2024年6月6日、アメリカの民間宇宙企業スペースX(SpaceX)社は、開発中の新型ロケット“スターシップ(Starship)”による第4回飛行試験を実施しました。

第1段の“スーパーヘビー(Super Heavy)”は海上への軟着水に成功。
第2弾の宇宙船“スターシップ(Starship)”本体は宇宙空間を飛行後、機体が一部破損しながらの大気圏再突入を経て海上への軟着水に成功しました。
図1.スターシップは第4回飛行試験のため、アメリカ・テキサス州ボカチカにあるスペースX社の施設“スターベース(Starbase)”を離床。第1段に搭載された33基のラプターエンジンのうち1基が停止したが、スターシップは無事宇宙へ向かった。(Credit: SpaceX)
図1.スターシップは第4回飛行試験のため、アメリカ・テキサス州ボカチカにあるスペースX社の施設“スターベース(Starbase)”を離床。第1段に搭載された33基のラプターエンジンのうち1基が停止したが、スターシップは無事宇宙へ向かった。(Credit: SpaceX)
“スターシップ”は、第1段の大型ロケット“スーパーヘビー”と第2段の大型宇宙船“スターシップ”で構成された、全長121メートルの再利用型の新型ロケット。
打ち上げシステムとしても“スターシップ”の名称で呼ばれています。

今回の無人飛行試験は、2023年4月、2023年11月、2024年3月に続く4回目のもの。
計画では、スターシップ宇宙船は最終的にインド洋へ発射約1時間5分後に着水することになっていました。

スターシップ宇宙船は、日本時間2024年6月6日21時50分(※1)にアメリカ・テキサス州ボカチカにあるスペースX社の施設“スターベース(Starbase)”を離床。
スーパーヘビーは33基搭載するラプターエンジンの1基が早々に停止したが、他のエンジンには波及せず順調に高度と速度を上げています。
※1.発射からの時刻などの情報はスペースX社のライブ配信を参照している。
打ち上げの約2分50秒後には、第1段のスーパーヘビーを分離。
第2段を点火しながら第1段を切り離すことで、推力の損失を抑える“ホットステージング”に成功しています。

その後、スーパーヘビーはブーストバック燃焼(飛行経路に対する逆噴射)を行って落下へ。
高度を下げて行き海上スレスレでエンジンの着陸噴射を実施し、打ち上げの約7分30秒後に計画通りメキシコ湾への軟着水に成功しています。
“スターシップ”は第1段と第2段の両方を再使用する計画で、一連の軌道打ち上げ試験では初の軟着水成功となりました。
図2.第1段のスーパーヘビーは、おなじみの“垂直着陸”により海上への軟着水を成功させた。(Credit: SpaceX)
図2.第1段のスーパーヘビーは、おなじみの“垂直着陸”により海上への軟着水を成功させた。(Credit: SpaceX)
一方、上昇を続けるスターシップ宇宙船は、打ち上げの8分30秒後に高度約150キロでエンジン燃焼を停止。
慣性飛行に移行したスターシップ宇宙船は順調に飛行し、高度約190キロの宇宙空間を巡行しています。
図3.宇宙空間を巡行するスターシップ。(Credit: SpaceX)
図3.宇宙空間を巡行するスターシップ。(Credit: SpaceX)
打ち上げの約45分後、スターシップ宇宙船の高度が100キロを下回り大気圏への再突入が始まります。
時速2万6000キロという猛スピードでの降下により、機体が前方の大気を圧縮することで生じるプラズマに包まれていました。
図4.猛スピードの機体に前方の大気が圧縮されて超高温になることで生じるプラズマ。(Credit: SpaceX)
図4.猛スピードの機体に前方の大気が圧縮されて超高温になることで生じるプラズマ。(Credit: SpaceX)
前回の試験では、機体がすぐに不安定化しましたが、今回はしばらく安定していました。
でも、大気が濃くなる高度60キロ付近から機体の一部が破損し始めることに…
ライブ映像に映し出されていたのは、フラップの一つが高熱によって損傷していく様子でした。

それでもスターシップ宇宙船は、姿勢制御を失うことなく大気を利用した減速を継続。
海面付近で機体を水平姿勢から垂直姿勢に起こして着陸噴射を行い、打ち上げの約1時間5分後にインド洋へ着水しました。
図5.機体の一部(おそらくフラップ)が破損されている様子。(Credit: SpaceX)
図5.機体の一部(おそらくフラップ)が破損されている様子。(Credit: SpaceX)
スペースXは公式X(旧Twitter)アカウントで、「着水が確認された。4回目の飛行テストを達成したチーム全員に祝福を」とコメント。
イーロン・マスク氏は「多くのタイルが失われ、フラップが損傷したにもかかわらず、スターシップは海に軟着陸した」と投稿しています。


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NASAの火星小型衛星ミッション“EscaPADE”はブルーオリジンの大型ロケット“ニューグレン”初号機に搭載され打ち上げへ

2024年05月03日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
EscaPADE(Ecape and Plasma Acceleration and Dynamics Explorers)は、火星を周回する軌道に2機の探査機を投入し、火星を取り巻く磁気圏などを観測するミッションです。

このミッションにより様々なデータを得ることで、太陽風が火星の磁気圏に与える影響などが理解できる見込み。
簡単に言えば、太陽風が火星の大気をどのように吹き飛ばし、火星の気候を変えてしまったのかが分かってくるはずです。

2機の探査機はRocket Labが開発し、大きさは冷蔵庫ほど、燃料込みの重さは約120キロとなり、打ち上げは9月29日が予定されています。

この2機の探査機を打ち上げるのが、ブルーオリジン社の新型ロケット“ニューグレン(New Glenn)”です。
ニューグレンは、直径7メートルの2段構成で全長82メートル、3段構成で全長95メートルとなる大型ロケット(3段構成はオプション)で、今回が初打ち上げとなります。
軌道投入能力は地球低軌道(LEO)で45トン、製紙以降軌道(GTO)で13トンで、1段目は再使用することを想定しています。

NASAは、スタートアップ企業の育成や大企業の競争力強化を目的に科学技術衛星の打ち上げを民間企業に委託する“VADR(Venture-class Acquisition of Dedicated and Rideshare)”の契約を進めています。

EscaPADEの打ち上げでも“VADR”での契約を活用し、ブルーオリジン社(※1)に2000万ドル(約31億円)を与えています。
ブルー・オリジン社は、インターネット小売り大手のアマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏が設立したアメリカの民間宇宙開発企業。
NASAのNick Benardini氏は、ケープカナベラル宇宙軍基地での探査機の組み立てや、火星の汚染を防ぐ保護要件について言及していますが、ブルーオリジン社による正式な打ち上げ日の発表はなし…

“ニューグレン”の開発は、当初のスケジュールから数年遅れているので、EscaPADEの打ち上げはスケジュール上のリスクも指摘されています。

ただ、ブルーオリジン社は2月に、新型の大型ロケットエンジン“BE-4(Blue Engine 4)”を搭載していない“ニューグレン”を、ケープカナベラルの第36打ち上げ施設に配備。
ブルーオリジンのニューグレン担当シニアバイスプレジデントのJarrett Jones氏によれば、初号機は2024年には打ち上げ予定としています。

“BE-4”エンジンは、アメリカの民間宇宙企業ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社の新型ロケット“ヴァルカン(Vulcan)”初号機の1段目に採用され、今年の1月に無事打ち上げられています。
なので、ニューグレンロケットより一足先に“BE-4”エンジンには成功事例ができた訳です。

さらに、ヴァルカンロケットは、アメリカの民間宇宙企業シエラ・スペースが開発した有翼の宇宙往還機“ドリーム・チェイサー(Dream Chaser)”の初号機“テナシティ”を搭載し、近々打ち上げられる予定です。

ひょっとすると、ニューグレンロケット向けの“BE-4”エンジンは、ヴァルカンロケットに持っていかれたのかもしれませんね。
ブルーオリジン社の大型ロケット“ニューグレン(New Glenn)”。(Credit: Blue Origin)
ブルーオリジン社の大型ロケット“ニューグレン(New Glenn)”。(Credit: Blue Origin)



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【打ち上げ成功】ボーイングの新型宇宙船“スターライナー”が有人飛行試験の打ち上げを成功!

2024年04月06日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
2024年6月6日更新
日本時間2024年6月5日、ボーイングの新型有人宇宙船“スターライナー(Calypso:カリプソ)”による有人飛行試験ミッション“Crew Flight Test(CFT)”の打ち上げが実施されました。
この有人飛行試験のクルーは以下の2名です。
コマンダーのNASAのバリー・ウィルモア(Barry Wilmore)宇宙飛行士
パイロットのスニータ・ウィリアムズ(Sunita Williams)宇宙飛行士

ユナイテッド・ローンチ・アライアンスの“アトラスV N22”ロケットに搭載された“スターライナー”は、日本時間2024年6月5日23時52分に打ち上げを実施。
発射の14分52秒後に“アトラスV”のセントール上段から分離し、発射31分後に計画通りスラスターを噴射して地球を周回する安定した軌道に入りました。
国際宇宙ステーションへのドッキングは、日本時間2024年6月7日1時15分頃になるそうです。

2024年6月2日更新
現地時間6月1日に予定していた“スターライナー”の打ち上げが、土壇場で延期されました。
中止が決定されたのは、打ち上げまで4分を切ったタイミング。
理由は、“地上発射シークエンサー”の不具合で、今後は地上支援装置を評価し、現地時間6月2日に情報をアップデートするそうです。
すぐに打ち上げ可能との判断が下されれば、次の打ち上げ機会は現地時間6月5日から6日になるそうです。

2024年5月16日更新
“スターライナー”の最初の有人飛行試験の打ち上げが、現地時間5月21日16時43分(日本時間22日5時43分)以降に再設定することが発表されました。
もともと飛行試験が予定されていたのは5月7日。
でも、ロケット上段の液体酸素のタンクの圧力調整バルブに異常が見つかり、17日以降の打ち上げとされていました。
11日にバルブの交換に成功しましたが、今度は“スターライナー”のサービスモジュールで少量のヘリウム漏れが新たに判明。
これにより、打ち上げが21日以降に再設定されたそうです。

2024年4月27日更新
有人宇宙船“スターライナー”による、有人飛行試験ミッション“Crew Flight Test(CFT)”の飛行試験準備完了審査(Flight Test Readiness Review)が完了したことを、2024年4月25日付でNASAとボーイング社が発表しました。
これにより、打ち上げは早ければ5月6日に実施される予定ですが、国際宇宙ステーションでは“スターライナー”の到着に備える準備として、現在国際宇宙ステーションに係留中の無人補給船“カーゴドラゴン”の出発と、有人宇宙飛行ミッション“クルー8”の“クルードラゴン”宇宙船の移動が行われる予定です。
当初、“カーゴドラゴン”の国際宇宙ステーション離脱は、アメリカ現地時間の2024年4月26日に予定されていましたが、着水予定海域の悪天候が予想されることから同4月28日に延期されていて、“スターライナー”による有人飛行ミッションのスケジュールにも影響する可能性が出ています。
なお、“スターライナー”を搭載するユナイテッド・ローンチ・アライアンスの“アトラスV(Atlas V)”ロケットについては、アメリカ現地時間の2024年4月26日にNASA、ボーイング社、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社による打ち上げリハーサルが実施されています。



ボーイング社の商業用旅客機“ストラトライナー”や“ドリームライナー”に連なる名前が付けられた開発中の有人宇宙船“スターライナー(CST-100 Starliner)”。
NASAによると、早ければ2024年5月6日(アメリカ現地時間)に、有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”による打ち上げを実施するそうです。(2024年4月2日発表)
図1.2022年5月に実施された無人飛行試験“OFT-2”で国際宇宙ステーションに接近するボーイング社の新型宇宙船“スターライナー”。(Credit: NASA TV)
図1.2022年5月に実施された無人飛行試験“OFT-2”で国際宇宙ステーションに接近するボーイング社の新型宇宙船“スターライナー”。(Credit: NASA TV)
“スターライー”はスペースX社の“クルードラゴン”とともに、NASAのコマーシャルクループログラム(宇宙飛行士の商業輸送契約)のもとで開発がスタートした4人乗りの有人宇宙船です。

初飛行は、2019年12月に実施された無人での軌道飛行試験“OFT(Orbital Flight Test)”。
このミッションでは、ソフトウェアの問題が生じたので計画されていた軌道に入ることができず…
“スターライナー”は国際宇宙ステーション“ISS”への到達を断念し地球に帰還しています。

2022年5月には、2回目の無人飛行試験“OFT-2(Orbital Flight Test 2)”が実施され、国際宇宙ステーションへのドッキングを含む打ち上げから帰還までの実証試験に成功しています。

2度の無人飛行試験に成功した“スターライナー”は、本格的な有人飛行の開始に先立ち、実際にクルーが搭乗する有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”の実施を控えていました。
“CFT”では、NASAのバリー・ウィルモア(Barry Wilmore)宇宙飛行士とスニータ・ウィリアムズ(Sunita Williams)宇宙飛行士がプライムクルーに、マイケル・フィンク(Edward Michael Finche)宇宙飛行士がバックアップクルーに任命されています。

NASAによると、“スターライナー”の有人飛行試験“CFT”の実施は、早ければアメリカの現地時間2024年5月6日。
フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から、ユナイテッド・ローンチ・アライアンスの“アトラスV(Atlas V)”ロケットに搭載され打ち上げ予定です。

国際宇宙ステーションへのドッキング成功後、バリー・ウィルモア宇宙飛行士とスニータ・ウィリアムズ宇宙飛行士は8日間ほど滞在してから地球へ帰還することになります。

有人飛行試験“CFT”に先立ち、国際宇宙ステーションでは2024年3月23日に到着した無人補給船“カーゴドラゴン”の出発や、有人宇宙飛行ミッション“クルー8”の“クルードラゴン”宇宙船を現在係留中のドッキングポートから別のドッキングポートに移動させるなど、“スターライナー”の到着に備えた準備が進められています。
図2.2024年3月25日時点で国際宇宙ステーションに係留中の宇宙船を示した図。“スターライナー”は、有人宇宙飛行ミッション“クルー8”の“クルードラゴン”宇宙船が係留されている“ハーモニー”モジュールの前方にドッキングする。このため、“カーゴドラゴン”補給船の出発後に空いたドッキングポートへ“クルードラゴン”宇宙船を移動させる作業が行われる。(Credit: NASA)
図2.2024年3月25日時点で国際宇宙ステーションに係留中の宇宙船を示した図。“スターライナー”は、有人宇宙飛行ミッション“クルー8”の“クルードラゴン”宇宙船が係留されている“ハーモニー”モジュールの前方にドッキングする。このため、“カーゴドラゴン”補給船の出発後に空いたドッキングポートへ“クルードラゴン”宇宙船を移動させる作業が行われる。(Credit: NASA)
2023年4月の時点では、有人飛行試験“CFT”の実施は同年7月21日以降に予定されていました。
でも、パラシュートの問題や機体全体で使われているテープの問題といった2つの問題が発覚したことで、延期が発表されています。

一旦は、2024年4月中旬に実施される予定でしたが、国際宇宙ステーションの運用スケジュールの見直しを受けて2024年5月に変更へ…
国際宇宙ステーションの混み具合によって決定されたようです。

ボーイング社では、コマーシャルクループログラム(宇宙飛行士の商業輸送契約)として、最大6機の“スターライナー”による宇宙飛行士の打ち上げを実施したいそうです。

今回の有人飛行試験“CFT”が成功すれば、“スターライナー”の正式な運行開始は2025年春頃。
その頃には、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の新型ロケット“ヴァルカン(Vulcan)”により“スターライナー”の打ち上げが実施されているのかもしれませんね。


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国際宇宙ステーションへ向かう無人補給船“シグナス”運用20号はアンタレスでなくファルコン9ロケットで打ち上げ

2024年02月05日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
2024年1月31日2時7分(日本時間)、国際宇宙ステーションに向かう補給船を搭載したスペースX社のファルコン9ロケット(ブロック5)が、アメリカ・フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられました。

今回のミッション“NG-20”は、NASAの“商業輸送サービス2(CRS-2)”契約の下で実施されるもの。
実験装置やクルーへの補給品など、合計3726キロの補給物資が国際宇宙ステーションに届けられることになります。
図1.無人補給船“シグナス”運用20号機を搭載して打ち上げられたファルコン9ロケット。(Credit: NASA/Kim Shiflett)
図1.無人補給船“シグナス”運用20号機を搭載して打ち上げられたファルコン9ロケット。(Credit: NASA/Kim Shiflett)
ただ、ファルコン9ロケットに搭載されていた補給船は“ドラゴン”ではなく、ノースロップ・グラマン社の“シグナス”だったんですねー

“シグナス”補給船と言えば、“アンタレス”ロケットとの組み合わせが定番です。
でも、ノースロップ・グラマンでは、“シグナス”補給船の打ち上げに使用してきた“アンタレス”ロケットの1段目を強化した“アンタレス330”の開発を、ファイアフライと共同で進めている際中なんですねー

その“アンタレス330”の初飛行予定が2025年なので、それまでのギャップを埋めるため、今回の“シグナス”補給船の打ち上げにファルコン9ロケットが使用された訳です。
“シグナス”補給船がファルコン9ロケットで打ち上げられたのは、今回が初めてのことでした。
ノースロップ・グラマンによる20回目の“商業輸送サービス2(CRS-2)”。(Credit: NASA)
ケープカナベラル宇宙軍基地第40発射施設を離床したファルコン9ロケットは、搭載していた無人補給船“シグナス”運用20号を予定通りの軌道へ投入。
“シグナス”補給船は、2024年2月1日18時59分(日本時間)に国際宇宙ステーションのロボットアーム“カナダアーム2”でキャッチされ、同日21時14分に“ユニティ”モジュールの地球側へ結合されています。
その後、国際宇宙ステーションへ無事到着したことがNASAのSNSやウェブサイトで報告されました。
ノースロップ・グラマンの“シグナス”補給船が2024年2月1日に国際宇宙ステーションに到着。(Credit: NASA)
国際宇宙ステーションは地球低軌道にあって大気抵抗を受けるので、リブーストで高度を上昇させる必要があります。
このため、“シグナス”補給船による追加のサービスとして、リブーストが提供されるかもしれません。
その後、“シグナス”補給船は、2024年5月に国際宇宙ステーションを離れ、大気圏に再突入しミッションを終える予定です。

“シグナス”運用20号の愛称“S.S. Patricia(Patty)Hilliard Robertson”は、医学博士であり、熱気球のパイロットでもあったNASAの宇宙飛行士パトリシア・ロバートソンさんに敬意を表して名付けられたものでした。
1998年に宇宙飛行士に選抜されたロバートソンさんは、2002年に国際宇宙ステーションへ飛行する予定でしたが、2001年に自家用飛行機の事故で命を落としています。


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