宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

プログレス補給船、電離層の観測後をしてから大気圏へ再突入

2014年07月31日 | 宇宙 space
国際宇宙ステーションに係留されていた、ロシアのプログレスM-23M補給船が、
22日に国際宇宙ステーションから分離、単独飛行に入りました。

これから11日間にわたって技術試験を行い、
その後、地球の大気圏に再突入し、燃え尽きることになります。
プログレスM-23M補給船は22日に、国際宇宙ステーションのピアース・モジュールから出航。
数回に分けた離脱噴射により、国際宇宙ステーションから離れて単独飛行を開始しています。

通常プログレス補給船は、この後すぐに地球の大気圏に再突入して焼却処分されます。

でも、今回は11日ほど留まり、
ラダール・プラグリェースと呼ばれる実験が、行われることになっています。

これは、プログレス補給船が装備するスラスターの噴射によって電離層をかき乱し、
それを地上のレーダーから観測、電離層の密度や温度、組成を測定するという実験なんですねー
同じ実験は過去に、プログレスM-14MやM-15Mでも行われています。

実験が終了した後、7月31日に軌道を離脱、大気圏に再突入する予定です。

プログレスM-24M補給船は、4月10日にソユーズUロケットに載せられ、
カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。

6時間後には国際宇宙ステーションにドッキング、水や食料、酸素や燃料、修理用の部品など約2.3トンの補給物資を届けています。

今は逆に、国際宇宙ステーションで発生したゴミを搭載していて、
再突入によって機体と共に焼却処分されることになります。

24日にはすでに、新しく補給物資を搭載した次の補給船、
プログレスM-24Mが、国際宇宙ステーションにドッキングしているんですねー

予想以上に巨大でいびつだった。ケンタウルス座Aの最外縁部

2014年07月30日 | 宇宙 space
巨大な楕円銀河“ケンタウルス座A”。

この銀河の最外縁部を初めて観測した結果、
銀河を球状に取り巻くガスや星の雲“ハロー”が、予想以上に巨大で片寄った形をしていて、
水素やヘリウムより重い“重元素”の含有量も、考えられていたより多いことが分かりました。


ヨーロッパ南天天文台などの研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載された超高感度カメラを用いて、
地球低軌道上の望遠鏡の位置から“ケンタウルス座A”の走査観測を行いました。

“ケンタウルス座A”は1200万光年以上彼方にあるのですが、それでも地球に近い銀河の1つとされています。

ハッブル宇宙望遠鏡はこれまで、
“ケンタウルス座A”の全長約45万光年と、幅約29万5000光年に及ぶ範囲のマッピングを完了していたのですが、それでもまだ“ハロー”の外縁部には到達していませんでした。

まぁー 天の川銀河の目に見える主要部分の直径が、約12万光年あることを考えると、
この距離はたいへん大きな距離になるんですねー

銀河には、明るく輝く中心部と、
それを取り巻くチリ、ガス、星、暗黒物質(ダークマター)などでできた、
渦状腕または円盤状のぼやけた部分があり、
それらは、さらに薄暗い星の“ハロー”で取り囲まれています。

“ハロー”に関しては光が弱く広がりが大きいという性質のため、
解明がほとんど進んでいません。

今回のハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測により、
“ケンタウルス座A”の“ハロー”は、同銀河の中心部から外側の宇宙空間に向けて、
これまで考えられてきたよりも、はるかに遠方にまで広がっている上、
奇妙な形状をしていることが分かります。

ある方向には他よりも多くの星が散在していて、
これによって“ハロー”は片寄った形状になっているんですねー

このように銀河“ハロー”領域の大部分を詳細に調査することで、
銀河の形成、進化、構成などに関する驚くべき知見が得られます。

また、ハッブル宇宙望遠鏡のデータからは、“ハロー”内にある星々を形成したガスに、
重元素が含まれていることも分かっています。

ただ、天の川銀河や他の近傍の渦状銀河の“ハロー”内にある星は、
通常、重元素含有量が少ないそうですよ。

地球にある重い元素は、中性子星の合体で作られていた。

2014年07月29日 | 地球の観測
地球上に存在する金や銀、ウランなどの鉄より重い元素。
これらが、中性子星の合体によって作られた可能性が高いことが、スーパーコンピュータの数値シミュレーションで分かってきたんですねー
計算結果は、太陽系で観測される重元素組成とほぼ一致し、宇宙の重元素の起源に、新しい手がかりを与えるものとして注目されています。
○○○

水素やヘリウムは、宇宙の始まりのビッグバンで生まれ、それより重い鉄までの元素は、恒星内部の核融合により生成されます。

そして、レアアースや金、ウランなど鉄よりもさらに重い元素は、大量の中性子の核融合で生成されると考えられています。
でも、この“宇宙の錬金術”が、どのような天体現象で起きるのかは謎のままでした。

超新星爆発では中性子の量が不足し、中性子星の合体では90%以上が中性子なので、非常に重い元素だけが作られることに…
いずれも、太陽系や他の恒星で観測される重元素組成を説明できませんでした。

今回の研究では、質量が太陽の1.3倍、半径12キロの2つの中性子星が、互いに回りながら合体し、物質が放出されるまでの間の数値シミュレーションを実施。
用いられたのは東京大学のスーパーコンピュータ。シミュレーションでは一般相対性理論とニュートリノの影響を考慮されました。

このシミュレーションによる再現で分かったのが、中性子の一部がニュートリノを吸収して陽子に変わるので、中性子の割合が60~90%程度にまで減少すること。

この結果を基に、元素合成の数値計算をしてみると、観測による太陽系の重元素分布とほぼ一致。
これにより、今まで明らかにされていなかった金やウランなどの鉄より重い元素の起源が、中性子星の合体である可能性が高いことが分かりました。

超新星に比べて中性子星の合体は複雑な現象になります。
なので、シミュレーションは難しくなるのですが、今回の研究では、中性子の割合がほど良く減って、多くの重い元素が形成できることが初めて分かりました。

中性子星の合体は、宇宙のどこかで時々起きている現象です。
地球に存在する重い元素も、過去に起こった中性子星の合体が起源になるのでしょうね。

スーパーコンピュータによる中性子星合体の数値シミュレーション。左は2つの中性子星の合体の瞬間、右は合体から8ミリ秒後の様子を表す(距離のスケールの違いに注意)。上は物質の密度の対数値(g/㏄)、下は物質中の中性子の割合(%)を表す。右下の黄色からオレンジの渦状部分で金やウランなど、青から水色の部分で銀やレアアースなどがつくられる。(Credit: 理化学研究所)
スーパーコンピュータによる中性子星合体の数値シミュレーション。左は2つの中性子星の合体の瞬間、右は合体から8ミリ秒後の様子を表す(距離のスケールの違いに注意)。上は物質の密度の対数値(g/㏄)、下は物質中の中性子の割合(%)を表す。右下の黄色からオレンジの渦状部分で金やウランなど、青から水色の部分で銀やレアアースなどがつくられる。(Credit: 理化学研究所)


観測による太陽系重元素組成と数値計算による重元素組成の比較。元素部分布を質量数の関数として表す。例えば銀は107,109、レアアースは約140~180、プラチナは192,194~196,198、金は197、ウランは235,238など。左は従来の結果(ここでは中性子の割合を95%と設定)、右は共同研究チームによる研究結果を表す。(Credit: 理化学研究所)
観測による太陽系重元素組成と数値計算による重元素組成の比較。元素部分布を質量数の関数として表す。例えば銀は107,109、レアアースは約140~180、プラチナは192,194~196,198、金は197、ウランは235,238など。左は従来の結果(ここでは中性子の割合を95%と設定)、右は共同研究チームによる研究結果を表す。(Credit: 理化学研究所)


太陽最接近前に活動停止していた“アイソン彗星”

2014年07月28日 | 流星群/彗星を見よう
2013年11月に、大彗星になると期待されながらも消滅してしまった“アイソン彗星”。

太陽最接近時刻のわずか半時間前にとらえられた紫外線画像から、
彗星が近日点通過前に、活動を停止していたようすが明らかになったんですねー
遠紫外線で撮影された“アイソン彗星”の尾。
左上の赤い十字が、彗星核があったはずの位置。

太陽に最接近して消滅した“アイソン彗星”の最期のようすを明らかにしたのは、
NASAの太陽観測衛星“SOHO”の紫外線観測です。

“SOHO”はLASCOカメラでも“アイソン彗星”をとらえていたのですが、
近日点通過時刻のおよそ1時間前に彗星が遮光板の陰に入ったので、
これ以降の彗星の姿は紫外線観測装置(SUMER)のみがとらえていました。

本来は太陽の外層大気のプラズマの流れや温度、密度を調べる装置なんですが、今回は太陽の紫外線が照らす、彗星のチリの粒子を見ていたんですねー

画像は、最接近時刻のおよそ30分前、11月28日17時56分から5分間にわたってとらえられた“アイソン彗星”です。

24万キロ以上に伸びた「とがった矢」のような形の尾が見えるのですが、
彗星核があるはずの位置(画像左上)には何もないんですねー

そして、18時2分以降の10分おきに取得したデータでも、
彗星からのプラズマガスを見ることはできませんでした。

今回の研究では、粒子のサイズや放出時刻、スピードを仮定したコンピュータシミュレーションを行い、
この尾の形状の再現を試みています。

その結果得られたシナリオは、
SUMERの観測時点で、彗星はすでに活動を停止していたというものでした。

シミュレーションでは、近日点通過の8.5時間前に彗星核が最期の崩壊を起こし、
アウトバーストにより1万トン以上のチリが放出されます。

尾の形状はそれが原因のようで、
その数時間後、彗星は完全に活動を停止したそうです。

3つの巨大ブラックホールが、互いに回転し合っている銀河

2014年07月27日 | 宇宙 space
遠く離れた銀河の中心で、
3つの巨大ブラックホールが、互いに回転し合っているのが発見されました。
宇宙には、2組や3組のブラックホールが、意外に多いのかもしれません。
超大質量ブラックホールは、そこから放出さえれるジェットにより観測される。

過去10年から20年の間に、多くの銀河の中心には、
太陽の数百万倍から数十億倍もの質量を持つ、巨大質量ブラックホールが存在することが分かってきました。

でも、今回行われた観測では、
多くの銀河が、1つではなく2つ以上の巨大ブラックホールを中心に持ち、
それらが、重力的に密接に影響し合いながら、
互いの周りを回転していることが分かってきたんですねー

2つの銀河が近づくと、両者の重力で合体して、1かたまりの星の集団を形成する、
という説は広く受け入れられていて、
実際、銀河系と、比較的近くにあるアドロメダ銀河とは、
約40億年後にこのような合体をすると考えられています。

そして、各銀河の中心には1つの大質量ブラックホールがあるので、
合体した銀河は2つのブラックホールを持つことになるんですねー

でも現実には、二重のブラックホールは、
これまで、それほど多く発見されてきませんでした。

これは、「ブラックホールは非常に短時間で融合してしまうため、二重の状態ではあまり見つからない」からだそうです。
まぁー あまりにも接近した軌道を回っているので、識別できないのかもしれませんが…


今回、観測プロジェクト“スローン・デジタル・スカイ・サーベイ”で、
“SDSS JI50243.091111557.3”という長い名前をもつ銀河の中心に、
明るい光源が2つあるように見えることが分かります。

そしてこのことは、そこに2つのブラックホールがある可能性を示すことに…

もちろん、目に見えないブラックホールから光が発せられるわけではなく、
周辺のガスがブラックホールの強力な重力に引き寄せられ、
渦を巻きながら降着していく際に、熱を帯びてジェットが噴き出し発光しているからです。

なので、そのブラックホールの位置は、
放出されるジェットにより、正確に分かることになります。

この2つの光源が何であるのかを突き止めようと、
この銀河を、超長基線電波干渉計“VLBA”で観測することになります。

結果、そこには数千光年の間隔を持つ、2つのブラックホールが見つかります。
さらに片方のブラックホールは、
実際にはそれ自体2つの巨大ブラックホールであることも分かることに…
あまりにも近くの軌道を回っているので、1つの天体に見えていたんですねー


この2つのブラックホールは、
わずか460光年しか離れておらず、15万年の周期で互いの周りを回っています。

ブラックホールが互いの周りをスパイラル運動するためには、
軌道エネルギーの一部を放出する必要があります。
1つの方法は、周囲の恒星やガスを投げ飛ばすことになります。

でも、ある時点で周囲に投げ飛ばす星がなくなると、
重力波の形でエネルギーを放出するしかなくなります。
これは、アインシュタインが予測した現象なんですが、
これまで直接的に観測されたことがないんですねー

2つのブラックホールが非常に近づくと、こうした重力波が強くなります。

すると原理上は、重力波を検出する装置“レーザー干渉計宇宙アンテナ”で、
検出できるレベルに達することになります。

どれくらいの割合の銀河に、
接近した軌道を持つ複数のブラックホールがあるか分かれば、
“レーザー干渉計宇宙アンテナ”が重力波を検出できる可能性が、
どのくらいかを絞り込むことができます。

わずか6つの銀河を観測しただけで、
接近した二重ブラックホールを発見できたのは朗報なんですが、
この2つは、“レーザー干渉計宇宙アンテナ”が重力波を検出できるほど近くを回っていませんでした。

でも今回の発見から、
これよりはるかに接近した二重ブラックホールも、
たくさん見つかると期待できるんですねー