宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

銀河同士が衝突すると、高い確率で円盤銀河が作られる?

2014年09月30日 | 宇宙 space
衝突の最終段階にある銀河の観測から、
銀河同士が衝突した後に、高い確率でガスの円盤構造が作られることが、
初めて確かめられました。
円盤銀河“M31”(左)と、楕円銀河“NGC 1316”(右)

太陽系が属する天の川銀河は、
約1000億個の星と大量のガスやチリが集まった天体で、
渦巻構造を持つ円盤が特長的な銀河です。

そして宇宙に存在する銀河の7割以上が、
こうした円盤部を持つ“円盤銀河”だと考えられています。

一方、数千億個の星が楕円体状に集まった“楕円銀河”も存在します。

こうした銀河は、周囲の銀河と衝突を繰り返しながら、
変化と進化を遂げてきたと考えられています。

でも、衝突の結果どのような形の銀河が作られるのかは、
これまで観測されたことがなく、はっきりと分かっていませんでした。


今回の研究では、
アルマ望遠鏡、ミリ波干渉計(CARMA)、サブミリ波干渉計(SMA)による観測などから、
衝突の最終段階にある銀河を調査。
電波望遠鏡で観測した衝突銀河のガス分布。
赤色の領域は遠ざかる方向に、
青色は近づく方向に移動しているので、
回転運動をしているのが分かる。

すると、30天体で分子ガスからの電波が検出され、
そのうちの24天体では、分子ガスが円盤状に分布していたんですねー

つまり、少なくとも約4000万~6億光年の比較的に近い宇宙では、
銀河衝突によって、分子ガス円盤が作られるということが明らかになることに…

衝突の最終段階にある銀河に、高い割合でガス円盤が存在することを、
始めて観測により確認したことになります。

さらに、ガス円盤が銀河中心の周りを回転していることや、
24天体のうちほぼ半数で、分子ガスの円盤が銀河中心部に密集した星の集団よりも、大きく広がっていることも分かりました。

恒星のエネルギーを吸い取る惑星

2014年09月29日 | 宇宙 space
NASAのX線観測衛星“チャンドラ”の観測により、
恒星“WASP-18”が実際の年齢よりも、
はるかに老化が進んでいることが分かりました。
若い恒星のエネルギーを吸い取り、
弱らせる太陽系外惑星“WASP-18b”(イメージ図)

地球から330光年の距離にある“WASP-18”は、
恒星の活動レベルが低下しているのですが、
実際にはまだとても若く、
その年齢は5億~20億年とされています。

これに対して、太陽の年齢は50億年ほどで、
ちょうと中年に差し掛かったところ。

では何が、
“WASP-18”の老化を進めているのでしょうか?


ホットジュピターの重力が影響している

今考えられているのは、
“WASP-18”の周りを回っている、惑星に原因があるということです。

この惑星“WASP-18b”は、木星の10倍の質量を持ち、
恒星から、ひじょうに近い軌道を回っているので、
ホット・ジュピターと呼ばれています。

“WASP-18b”が公転に要する時間は、わずか23時間足らず。

このような惑星との近さが、
どうやら“WASP-18”の先行きを、暗くしているようです。

“WASP-18b”の重力により、
“WASP-18”の磁場に歪が生じている可能性が高いんですねー

その結果、X線放射とフレア生成の面で活動レベルが大きく低下…
そして実際の年齢よりも、老化が進むことになったようですよ。

火星軌道投入に成功! インドの火星探査機“マーズ・オービター”

2014年09月28日 | 火星の探査
インド宇宙研究機関の火星探査機“マーズ・オービター”が、
スラスター(ロケットエンジン)の噴射試験に成功しました。

このスラスターは、火星に向けて航行中の“マーズ・オービター”が、
火星周回軌道へ入る時に使うものだったんですねー

現在、“マーズ・オービター”は他の機器も正常なので、
火星到着に向けて、準備が整ったことになります。
軌道投入後、“マーズ・オービター”が通信を再開するのは、9月24日11時17分の予定でした。

でも、地球と火星は距離が離れているので、通信には約12.5分のタイムラグができます。

なので、データが地球に届き、
探査機の運用チームが、軌道投入噴射について確認を取れるのは、
11時30分ごろになります。

また、惑星の周回軌道への投入には、高い技術が必要になります。

さらに、地球と火星との位置の関係で、
今回の軌道投入噴射は、地球から見えない火星の裏側で行われることに…

“マーズ・オービター”には、
すでに自律して噴射を実行するためのコマンドが送信されているのですが、
これら一連の流れは、インドにとっては大きな挑戦になります。

そして、運用チームが待つ中、11時30分に探査機からのデータが到着!

“マーズ・オービター”は噴射を予定通り終え、火星を回る軌道に入っていることが確認されたんですねー

この軌道は、火星にもっとも近い高度が365.3キロ、もっとも遠い高度が80000キロの楕円の軌道を回ることになります。

今後“マーズ・オービター”は、
より大容量のデータを送受信するためのアンテナを、地球に向ける予定です。

これにより、軌道投入に関するより詳細な情報が送られることになります。

そして6か月から最大10か月に渡り、惑星探査に必要な技術の実証と、
5種類の観測機器を駆使した探査を行うことになります。

この成功により、現在火星には、
NASAの周回衛星
  “2001マーズ・オデッセイ”
  “マーズ・リコネサンス・オービター”
  “メイブン”
NASAの無人探査車
  “オポチュニティ”
  “キュリオシティ”、
さらに、ヨーロッパ宇宙機関の周回衛星
  “マーズ・エクスプレス”、
そして、今回のインド宇宙研究機関の周回衛星
  “マーズ・オービター”
による、7機もの探査機が活動することになるんですねー

人類による火星探査の新たな章が、始まったといえますね。

ガスが増えると切り替わる、銀河中心ブラックホールのX線放射

2014年09月27日 | 宇宙 space
天文衛星“すざく”によるX線観測から、
活動銀河核のブラックホールに流れ込むガスが、ある一定の量を超えると、
放射されるX線の成分や量、変動の仕方が、劇的に変化することが分かりました。

どうやら、ガスの重力エネルギーを放射に変換する機構が、
ガスの量次第で、異なる動作モードに切り替わるようです。
“NGC 3227”中心部の活動銀河核と、
推測される巨大ブラックホール周辺の構造。

今回の研究では、
しし座の方向約7700万光年彼方にある、
銀河“NGC 3227”の中心にある巨大ブラックホールを、
“すざく”のX線観測データから調べています。

この銀河中心ブラックホールには、大量のガスが吸い込まれ、
その重力エネルギーが変換されることで、強い放射となり明るく輝いています。

こうした活動銀河核のブラックホールを、やや離れて取り巻くガスの円盤からは可視光線が、
ブラックホールに近い領域の高温電子からは、X線が放射されると考えられています。
活動銀河核のX線強度相関図。
ある強度を境にして、X線のスペクトル構成が劇的に変化することが分かる。

銀河からのX線放射量および、
個々のX線光子が持つエネルギーの変化に着目して解析したところ、
ブラックホールへのガス流入量が少ない時には、
放射量が小さくエネルギーが高めのX線で構成され、
成分が、ゆるやかに変動することが分かりました。

一方、流入量がある境界を超えると、エネルギーが低めの別のX線成分が現れ、
放射量の増大とともに、激しく変動し始めることも分かりました。

ガスの重力エネルギーを放射に替える「活動銀河核エンジン」の中に、
異なる働きを担う2つの部分が存在し、
吸い込まれるガスの量が少ない時には、そのうちの片側だけが、
ガスの量が増えてくると両方が働き出すという、
活動銀河核の新しい機能や構造が示されることになりました。

火星周回軌道への投入に成功! 火星探査機“メイブン”

2014年09月26日 | 火星の探査
NASAの火星探査機“メイブン”が、
打ち上げから10か月間、約7億1100万キロに及ぶ航海を経て、
無事、火星を回る軌道に入りました。

“メイブン”は、これから約1年間に渡って、
火星の大気を中心に観測を行うことになります。
探査機メイブン(イメージ図)
“メイブン”は9月22日10時50分、機体に装備している6基のスラスターに点火し、
約33分後の11時24分に、火星を回る軌道に入ったと見られています。

その後、探査機からの電波を、
オーストラリアのキャンベラにある、NASAの深宇宙ネットワーク(DSN)のアンテナがとらえ、無事に火星を回る軌道に入っていることが確認されました。

今後、軌道の精密な測定が行われ、1年のミッションが予定されています。


“メイブン”はNASAのゴダード宇宙飛行センターが主導するミッションで、
同センターにとっては、初の火星探査ミッションになるんですねー

探査機の製造はロッキード・マーティン社が行っていて、
同社が、かつて製造した2001マーズ・オデッセイや、
マーズ・リコネサンス・オービターの設計を基に造られています。

“メイブン”には、大きく8種類の観測機器が搭載されていて、
火星の上層大気を中心に、観測することを目的としています。

それにより火星の大気と太陽風の相互作用や、
火星大気の宇宙空間への流出過程についての解明が期待されています。

これらはは、科学的な知見を得られると同時に、
将来の有人火星探査の検討にも役立つようです。

“メイブン”が回る軌道は、火星にもっとも近い高度が150キロ、
もっとも遠い高度が6000キロの楕円軌道になっています。

また、高度を125キロまで下げ、より詳しい調査を行うことも計画されています。

今後“メイブン”は、観測機器の立ち上げや確認などを行い、
11月8日から、本格的な観測を開始することになっています。


“メイブン”は、火星の高層大気を専門的に探査する、
最初の火星探査機になります。

そして“メイブン”の活躍は、
火星の気候はどのような過程を経て、どのように変わっていき、
またそれが火星の地表や環境に、どのような影響を及ぼしたかといった、
火星の大気の歴史に関する理解を、劇的に変えてくれるものになります。

さらに、2030年代に火星に人類を送り込むという、将来のミッションに向け、
大事な情報ももたらしてくれることになります。

NASAは現在、
2001マーズ・オデッセイ、マーズ・リコネサンス・オービターの2機の火星周回衛星と、
オポチュニティとキュリオシティの、2機の火星探査車を運用しています。

ここに“メイブン”が加わったことで、
NASAは計5機の火星探査機を、同時に運用することになるんですねー

また、“メイブン”と同時期に打ち上げられた、
インドの火星探査機“マーズ・オービター”も、現在火星の周回軌道に入ったようです。