宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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謎の超高輝度X線パルサーの正体は? スーパーコンピュータで分かったこと

2016年09月30日 | 宇宙 space
X線で極めて明るく輝く天体のなかで、
周期的に明るくなったり暗くなったりするものがあります。

その中心にある天体がブラックホールでは無いことは分かっているんですねー

その正体は何か?
今回、スーパーコンピュータ“アテルイ”による計算で分かってきたことは、
中性子星の可能性でした。


明るく輝く謎の天体

宇宙には“超高輝度X線源”と呼ばれる、
極めて明るく光る謎のX線天体が数百個も発見されています。

その正体は、「多量のガスを吸い込んで光るブラックホール」
だという説が有力と見られているんですねー

  大量のガスを呑み込んでいたのは、小さなブラックホールだった?

でも、2014年にNASAのX線天文衛星“ニュースター”が検出したのは、
“超高輝度X線源”の1つ“M82 X-2”から、規則正しい周期で発せられるX線パルスでした。

ブラックホールはパルスを出さないので、このX線パルサー(明滅天体)の正体は、
ブラックホール以外の何かだと考えられることになります。


中性子星の可能性

一方で、直径10キロほどの高密度天体である中性子星は、
パルサーとして数多く見つかっています。

なので、天体の正体は中性子星であると考えることもできます。

でも、その場合には強いX線放射を発するメカニズムが謎として残ることに…

どのようにして固い表面をもつ中性子星が、
ガスを多量に取り込み明るいパルスを放射するのか?
この現象の解明には、いまも世界中の研究者が取り組んでいます。


コンピュータシミュレーション

今回の研究で行われたのは、
天文学専用のスーパーコンピュータ“アテルイ”を使った、中性子星へのガス降着シミュレーション。

このシミュレーションにより、
国立天文台の研究チームは新しいパルサーのモデルを提唱しています。

これまでのパルサーモデルは、
自転する中性子星の両極方向に光のビームが出るというもの(古典的な宇宙灯台モデル)なんですが、
今回のシミュレーションで検証されたのは、
“降着柱”の側面が明るく光るというモデルでした。

“降着柱”とは中性子星の磁場の極に形成されたガスの柱のことで、
この中をガスが落下すると中性子星の表面付近で衝撃波が発生し、
莫大な光が生み出されることがシミュレーションで確かめられています。

さらに、光が柱の側面から抜けることで継続的にガス降着が可能になること、
側面から抜ける光が“超高輝度X線源”の光度に匹敵するほど明るいことも示されました。

新タイプの宇宙灯台モデルのイメージ図

似たようなアイデアが提唱されたことはあったのですが、
側面が明るく光ることが可能であることが、実際に多次元シミュレーションンで確かめられたのは、
今回が初めてのことでした。

今後の課題は“超高輝度X線源”の中心天体の謎にさらに迫っていくこと。

それには、強い磁場中での放射とガスの相互作用に関する補正や、
一般相対論的な補正を加えた、より極めて詳しく細かい計算を行い、
新しい宇宙灯台モデルの詳細な観測的特徴を明らかにすることが必要になるようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 超高輝度X線源の正体はパルサーだった?


超大型ロケットを発表! ブルー・オリジン社が見据える未来とは?

2016年09月29日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
宇宙旅行をリーズナブルに提供するために、
再使用型ロケット“ニュー・シェパード”を開発しているブルー・オリジン社が、
超大型ロケット“ニュー・グレン”を発表したんですねー

  ブルー・オリジン社は、
  インターネット小売り大手アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏が、
  設立した宇宙開発企業。



イラストからも分かるように、
“ニュー・グレン”は現在運用されているスペースX社のファルコン9や、
ユナイテッド・ローンチ・アライアンスのデルタIVよりも、かなり大きなサイズになっています。

“ニュー・グレン”の直径は7メートル、全長が約82メートルから95メートルと、
アメリカ史上最大のロケット“サターンV”に迫るサイズなんですねー

初めて軌道周回飛行を行ったアメリカ人飛行士“ジョン・グレン”から名付けられたそうです。

またロケットが2段の構成でも、衛星を地球低軌道に投入可能となっていて、
3段の構成では荷物をさらに遠くへと投入可能になります。

そして、ロケットの第一段機体は地上への着地と再利用が可能になるようです。

そう、この仕様は現在ブルー・オリジン社が開発中の“ニュー・シェパード”や、
スペースX社の“ファルコン9”と同じく、ロケットの製造コスト削減が見込めるんですねー


パワフルなロケット

“ニュー・グレン”の本体下部に搭載されるのは、現在開発中の7基のBE-4エンジンで、
このエンジンはユナイテッド・ローンチ・アライアンス社が開発中の
新型ロケット“ヴァルカン”にも搭載される予定です。

  純アメリカ産の新型ロケット“ヴァルカン”

7基のエンジンの合計推力は385万ポンドにもなり、
これはデルタIVヘビー以上、ファルコンヘビー以下というスペック。

そして“ニュー・グレン”が建造されるのは、
現在フロリダのケープ・カナベラルにて建設中のブルー・オリジン社の施設。
打ち上げは10年以内にケープ・カナベラルの第36発射台から行われる予定です。

またブルー・オリジン社では、
“ニュー・アームストロング”というロケット計画も明らかにしています。

具体的なプランは不明なんですが、
おろらく、月などの衛星や惑星探査を視野に入れたロケットだと思われます。
  アポロ11号で初の月面着陸を成し遂げたのがニール・アームストロング船長なので…

これまでは宇宙観光や国際宇宙ステーションへの商用人員輸送に向けて、
歩みを進めてきたブルー・オリジン社。

“ニュー・グレン”を持つことで、人工衛星の打ち上げだけでなく、
地球周回軌道を超えた荷物の打ち上げを希望する企業や科学者へ、
新たな提案が可能になります。

今後、アメリカの民間宇宙開発競争は、
スペースX社やユナイテッド・ローンチ・アライアンス社だけでなく、
ブルー・オリジン社も含めた三つ巴で展開され、さらにヒートアップしていきそうですね。 


こちらの記事もどうぞ ⇒ アマゾン設立者が再使用型の衛星打ち上げロケットを開発へ


天の川銀河の歴史が分かってくるかも? 化石のような一般的でない星団“ターザン5”

2016年09月28日 | 宇宙 space
年老いた星と若い星で年齢が70億年も異なる…
そんな星が存在する星団が天の川銀河内に見つかったそうです。


2度の爆発的な星形成

いて座の方向約1万9000光年彼方にある“ターザン5”は、
発見以来40年あまり球状星団として認識されていた天体です。

そこをヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡“VLT”や、
ハッブル宇宙望遠鏡などを用いて観測してみると、
“ターザン5”には明確に種類の異なる2種類の星が存在することが分かりました。

化学組成の違いだけでなく、両種には70億歳もの年齢差があったんですねー
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した“ターザン5”。

年齢が2つに分かれているということは、
“ターザン5”では連続的な星形成があったというよりは、
2度の爆発的な星形成があったと考えることができます。

つまり“ターザン5”には、
2番目の(若い方の)星を誕生させるだけの大量のガスがあったことになり、
このガスの量は、少なく見積もっても太陽質量の1億倍になるそうです。


一般的ではない球状星団

“ターザン5”の特徴は球状星団としては一般的でないが、天の川銀河のバルジ(中心の膨らんだ部分)に見られる星の種族とは、非常によく似ているそうです。

銀河形成に関する理論によれば、ガスや星でできた巨大な塊が相互作用して、天の川銀河の原始バルジが形成されたと考えられています。

“ターザン5”は、天の川銀河のバルジを形成した、
最初期の構成要素の生き残りなのかもしれないんですねー

塊のいくつかは破壊されずに天の川銀河に残ることになり、
こうした生きた化石は、銀河の歴史再構築というパズルの重要なピースの1つになります。

また、星形成が活発な遠方銀河に見られる塊の性質と、“ターザン5”の性質には似ている部分があり、
遠方(過去)の銀河と近傍(現在)の銀河のどちらでも、
形成初期段階では同じようなプロセスが起こることが推測されます。

今回の発見から、様々な疑問が出てきました。

“ターザン5”はどのようにして生き残ったのか?
2回目の爆発的星形成を引き起こした原因は何だったのか?

まだ、答えを探している途中です。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 天の川銀河に見える巨大なX字形構造から銀河形成のプロセスが分かってくる?


衛星エウロパの表面から水柱! 地球外生命探しが一歩前進

2016年09月27日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
NASAが会見を行い、木星の衛星エウロパの氷の地表から、
水柱が頻繁に噴出していることを発表しました。
ハッブル宇宙望遠鏡の観測によりとらえられた水柱は、約200キロの高さまで噴出しているそうです。


地下の海って?

木星の周りを回る第2衛星エウロパの表面は、3キロに及ぶ氷で覆われています。

でもエウロパは、木星の潮汐力を受けることで、
揺れ動かされ摩擦で熱が生じ、星の内部が熱くなるんですねー

この熱により地殻下で氷が解け、液体の水が存在すると考えられてきました。

  エウロパには、地下に地球の海水の2倍にあたる量の水をたたえた、
  広大な海が存在するとみられています。
  この海は太陽系内で生命が存在する可能性の高い場所の1つと考えられていて、
  地球外生命探査の観点からも非常に関心の高い天体になります。


液体の水は、地球外生命が存在する条件の1つとされています。
なのでNASAの計画では、当初氷を掘り起こしロボットを潜らせる予定でした。
  地球外生命の探査へ! 衛星エウロパの探査計画が開発段階へ移行

ただ発表では、ロボット潜らせなくても、
噴出している水柱を分析することで海の成分を解明できるようです。
実は水柱の存在は、2012年に別のチームがエウロパの南極域に証拠を検出していました。

なので今回の観測は、水柱が存在する可能性をさらに高めたことになり、
エウロパは土星の衛星エンケラドスに続いて、
太陽系内で水柱が確認された2つ目の衛星になりそうです。

まずは、今年の7月に木星軌道に入って観測を開始した探査機“ジュノー”や、
2018年に打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による赤外線観測です。

これらの観測でさらなる事実が明らかになり、
「木星の衛星エウロパに生命がいるのか?」
という最大の謎に、一歩近づくことが期待されますね。


こちらの記事もどうぞ
  エンケラドスの地下には衛星全体に広がる海がある!?
  木星最大の衛星ガニメデにも地下海が存在する



最後のミッションは彗星への着陸。探査機“ロゼッタ”は9月29日に降下開始

2016年09月26日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
2014年11月、人類は初めて彗星に探査機を着陸させることに成功しました。

ただ、着陸機の“フィラエ”は機体の固定に失敗し、
日が当らない場所に傾いて着地してしまい、太陽光による発電が出来ない状態に…
バッテリーを使い果たした“フィラエ”は冬眠モードに入ってしまいます。

いっぽうで相棒の探査機“ロゼッタ”は、
その後約2年間も彗星の上空から数多くのデータを地球に送り続けてくれています。

でも、そのミッションもついに最後の時を迎えるんですねー

この9月末に“ロゼッタ”は彗星に着陸し、
その後最後のデータ収集に取りかかることになります。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星


着陸予定場所

最近、ヨーロッパ宇宙機関は“ロゼッタ”の着陸予定場所の画像を公開しました。

その場所は、ふたつの岩を合体させたように見えるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の、
小さい方の岩の先端近く。

その場所は無事着陸できることを祈るためか、
調和や秩序を司るエジプトの女神にちなんで“マアト”と名付けられています。
“ロゼッタ”の着陸予定場所“マアト”

“マアト”には石がゴロゴロ散らばった鳥肌のように見える部分と、
真っ暗で深そうな穴があり、そこからは激しいガスやホコリが噴き出しているようです。

見るからに荒涼としていますが、だからこそ探査する価値があり、
ここからチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の形成を理解するためのカギが、
見つかるかもしれないんですねー


どうやって彗星ができるのか

“マアト”の穴は、壁の内側の構造が変わっていて、
壁の表面が3ミリのボールをくっつけ合わせたみたいになっています。

これは彗星が形成されたときの無残りだと考えられている。

ロゼッタミッションにとって重要な課題は、
彗星がいかにして彗星になるのかということを突き止めることです。

小さな氷のかたまりが、いかにして集まり、凝固してまとまっていったのかを、
“マアト”の壁にある構造を調べることで、答えにつながる何かが得られるかもしれません。


ミッション最後の計測

“ロゼッタ”は9月29日に降下を始め、30日に着陸する予定です。
“ロゼッタ”の最後の1週間の動き。
彗星を周回していた“ロゼッタ”は29日に降下を始める。

そのとき、搭載された“オシリス狭角カメラ”は、
彗星上の複数の穴をより良くとらえるために角度を合わせ、
地球との交信を絶つまでの間、詳細な画像を撮り続けることになります。

“ロゼッタ”が最後に到着するのは、
“ディール・エル=メディナ”と呼ばれている幅130メートルの穴のわき。
(穴の中が横目で見えるイイ場所に降り立ちます。)

質量分析計による大気中の物質の計測や、ホコリの取り込み、
太陽風に対する地表の反応もプラズマ計測機で記録するなど、
カメラ以外の観測機器も最後の仕事を始めることになります。
彗星へ着地寸前の“ロゼッタ”のイメージ図

そして“ロゼッタ”が最期を迎える場所“マアト”は、
最近見つかった“フィラエ”と同じかたまり側にあります。

なので予定通りなら、
“フィラエ”と“ロゼッタ”は最後に数キロの距離に近づくことになります。

ミッション終了後には、
二つの探査機が寄り添ったように太陽を離れて行くことに…
最後のミッションが成功するといいですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ ついに発見! 行方不明の彗星着陸機“フィラエ”