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なぜ土星には大型衛星がタイタンしか存在していないのか? 木星には4つも大型衛星があるのに…

2020年03月31日 | 土星の探査
今回は太陽系で木星に次いで2番目に大きな惑星のお話し。
土星は巨大なガス惑星ですが大型衛星はタイタンしかありません。
同じ巨大ガス惑星の木星には大型衛星が4つもあるのに、なぜ土星には大型衛星が1つしか無いのでしょうか?
今回、シミュレーションを用いた研究により、このメカニズムが初めて再現されたそうです。


巨大衛星が1つだけ誕生するメカニズム

土星には現在82個の衛星が見つかっています。

でも、その中で衛星タイタンだけが群を抜いて大きく、その質量は2番目に大きな衛星レアの約50倍もあります。
このことは、同程度に巨大な4つのガリレオ衛星が存在する木星とは対照的でした。
  木星を周回する4つの大型衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)は、ガリレオ・ガリレイが望遠鏡で発見したので通称“ガリレオ衛星”と呼ばれている。衛星が大きいのでガリレオ手製の低倍率の望遠鏡でも見ることができた。

では、惑星の周りに大型衛星が一つしか存在しない衛星系は、どうやって誕生するのでしょうか?
これまで様々な理論研究が試みられてきました。でも、いまだに大きな謎なんですねー
  衛星系とは、中心の惑星とその周りを回る衛星からなる星系。

生まれたばかりの惑星の周囲には、ガスやチリなどからなる円盤が形成され、その中で衛星が成長すると考えられています。

ただ、円盤にガスが残っている間は、軌道の外側のガスから衛星が後ろ向きに引っ張られるように力を受けることで、惑星の周囲を回転する勢いが失われていきます。

このため、多くの衛星はだんだん惑星に近づいていき、最終的に惑星に落ち込んでしまうはずです。

こうした環境をシミュレーションしたこれまでの研究では、円盤が消えるまでにすべての大型衛星が惑星に飲み込まれるか、複数の衛星が生き残るかのどちらかであり、1個だけ残るシナリオを描くことができませんでした。
惑星と衛星が誕生する様子を再現したイラスト。土星のようなガス惑星が生まれたときに周りを取り巻いていたガスやチリの円盤の中で、固体成分が集積して衛星が形成される。
惑星と衛星が誕生する様子を再現したイラスト。土星のようなガス惑星が生まれたときに周りを取り巻いていたガスやチリの円盤の中で、固体成分が集積して衛星が形成される。(Credit:名古屋大学)


ガスの温度差が衛星の“安全地帯”を作り出していた

衛星の回転運動を減速させる力は、円盤のガスの温度によって変化します。

でも、これまでの研究で行われてきた衛星の運動の計算では、円盤の温度や密度などが簡略化されていて、実際の円盤の状態と異なる可能性がありました。

そこで、今回の研究では、円盤を構成するガスやチリなどによる熱の放射や吸収の影響を取り入れ、円盤の温度や密度の状態をこれまでよりも詳細に計算。
そして、円盤での衛星の運動を重力多体シミュレーションで行い、詳しく解析しています。
  計算に用いられたのは、国立天文台シミュレーションプロジェクトが運営する共同利用計算機の“計算サーバ”。

その結果、円盤のガスは一律に衛星を内側に引っ張るわけではないこと、惑星からある程度離れた領域では外向きの力が働く“安全地帯”が存在しうることが判明します。

円盤はガスの摩擦によって、惑星に近いほど暖かく、遠いほど冷たいという温度分布になっています。

そこで、研究チームが行ったのは“安全地帯”の詳細な計算でした。
すると、“安全地帯”の周辺がチリの影響によって内側と外側の温度差が、特に大きくなる領域だと分かります。

この急な温度差によって、衛星軌道の内側のガスと外側のガスから受ける力にも差が生じ、衛星が外側に押されることで、衛星が惑星に落ち込むことなくとどまれる領域ができていました。

この“安全地帯”に一時的に衛星がとらえられ、円盤のガスが散逸するまで生き残ると、衛星が一つだけ形成されることも可能になるわけです。
衛星と惑星の距離が時間変化する様子をシミュレーションした結果の例。シミュレーション開始時に7つあったタイタンと同じ質量の衛星が、円盤状のガスの中を移動し、時間とともに衛星の軌道が変化していく。ほとんどの衛星が惑星に落ち込んでいくが、最初に一番外側に置いた衛星だけは、ガスが散逸しきるまで惑星に落ち込まずに生き残る。
衛星と惑星の距離が時間変化する様子をシミュレーションした結果の例。シミュレーション開始時に7つあったタイタンと同じ質量の衛星が、円盤状のガスの中を移動し、時間とともに衛星の軌道が変化していく。ほとんどの衛星が惑星に落ち込んでいくが、最初に一番外側に置いた衛星だけは、ガスが散逸しきるまで惑星に落ち込まずに生き残る。(Credit:Fujii & Ogihara, A&A, 202)

円盤で生まれた衛星(黒丸)が生き残る過程のシミュレーション結果。青い領域では衛星は惑星(左)に向かって引きずられ、赤い領域では外向きに動く。時間とともに多くの衛星が次々と内側に移動し惑星に落ち込むが、一番外側に位置していた衛星は途中から赤で示された“安全地帯”の範囲に位置し、ガスが散逸し終わるまで残った。(Credit:Fujii & Ogihara, A&A, 2020)

本当にこのようなシナリオが土星とタイタンで起こっていたのでしょうか?

このことを直接確認することは現時点ではできません。

ただ、今後は系外惑星の衛星も次第に観測されてくるはずです。

その観測から、土星のように大きな衛星が一つしかない衛星系がたくさん見つかれば、そのような衛星系の形成についての議論が大いに進展するでしょう。

この時に、このシナリオの正しさも議論され、問題の解明へと近づくのかもしれませんね。
大型衛星が一つだけ形成されるメカニズムの模式図。(1)惑星の周囲を回るガスやチリからなる円盤が形成される。円盤の中でチリなどの固体成分が集積・成長する。→(2)円盤の中で固体成分が衛星の大きさまで成長する。→(3)円盤内の衛星の軌道がガスに影響を受けることで次第に変化し、多くが回転しながら惑星に近づき、やがて惑星に落ち込む。軌道が“安全地帯”に位置するものは、惑星からの距離を保ち続ける。→(4)円盤のガスが散逸し、“安全地帯”で生き延びた衛星は安定した軌道を持ち生き残る。
大型衛星が一つだけ形成されるメカニズムの模式図。(1)惑星の周囲を回るガスやチリからなる円盤が形成される。円盤の中でチリなどの固体成分が集積・成長する。→(2)円盤の中で固体成分が衛星の大きさまで成長する。→(3)円盤内の衛星の軌道がガスに影響を受けることで次第に変化し、多くが回転しながら惑星に近づき、やがて惑星に落ち込む。軌道が“安全地帯”に位置するものは、惑星からの距離を保ち続ける。→(4)円盤のガスが散逸し、“安全地帯”で生き延びた衛星は安定した軌道を持ち生き残る。(Credit:国立天文台)


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宇宙のどこかに爆発的なエネルギーを生み出す何かがある! 世界最大の粒子加速器の7桁も大きい宇宙線の発生源を探す研究。

2020年03月28日 | 宇宙 space
京都大学などの研究グループが、“極高エネルギー宇宙線”を新開発の宇宙望遠鏡で観測することに成功したんですねー
“極高エネルギー宇宙線”は世界最大の粒子加速器で到達するエネルギーより7桁も大きいもの。
なので、宇宙のどこかに爆発的なエネルギーを生み出す発生源があるはずです。
今後さらに広い範囲で定常観測し、その発生源を突き止めるそうです。


宇宙空間で最大のエネルギーを持つ宇宙線

莫大なエネルギー(10の20乗電子ボルト)を有する“極高エネルギー宇宙線”の存在が明らかになりました。

この宇宙線のエネルギーは、世界最大の粒子加速器で到達するエネルギーより7桁も大きいもの。
なので、爆発的なエネルギーを生み出す発生源が、宇宙のどこかにあると考えられているんですねー

また、“極高エネルギー宇宙線”は宇宙磁場の中をほぼ直進し、その到来方向が発生源を示すことから、極限宇宙を見るための次世代の天文学として注目されています。
“極高エネルギー宇宙線”が地球に到来するイメージ。背景にある天体は活動銀河核やスターバースト銀河、強磁場星といった発生源の候補天体。
“極高エネルギー宇宙線”が地球に到来するイメージ。背景にある天体は活動銀河核やスターバースト銀河、強磁場星といった発生源の候補天体。(Credit:Ryuunosuke Takeshige and Toshihiro Fujii (Kyoto University))


宇宙線の発生源を特定する

これまで“極高エネルギー宇宙線”の定常観測は、アメリカの“テレスコープアレイ実験”とアルゼンチンの“ピエールオージェ観測所”で10年以上にわたって続けられてきました。

でも、発生源についての決定的な証拠は得られていません。
それは、“極高エネルギー宇宙線”がとても低い頻度でしか到来しないから… 琵琶湖の面積当たり1年間で約1個という頻度なんですねー
  宇宙空間に存在する放射線は宇宙線と呼ばれ、1秒間に手のひらに約1個という頻度で地上に到来している。

発生源を突き止めるために、さらに観測範囲を広げるという方法もあります。
ただ、単に現在の手法で観測範囲を拡張することは、予算や管理の面から難しく、新しい観測手法の確立が求められていました。

そこで、京都大学白眉センター/大学院理学研究科の研究グループが考えたのは、新たな宇宙線望遠鏡の開発でした。

新型望遠鏡に採用されたのは、“極高エネルギー宇宙線”の観測に特化した低コストの設計。
そして、直径1.6メートルという小型の集光部と4本の直径20センチの光電子倍増感からなり、遠隔操作による自動観測が可能な望遠鏡が開発されます。
これにより、低コストで管理しやすい観測手法を確立しています。

この新型望遠鏡は“テレスコープアレイ実験”に3基設置され、研究グループは“極高エネルギー宇宙線”の観測に成功することになります。
アメリカ・ユタ州の“テレスコープアレイ実験”に設置された3基の新型宇宙望遠鏡。
アメリカ・ユタ州の“テレスコープアレイ実験”に設置された3基の新型宇宙望遠鏡。(Credit:Ryuunosuke Takeshige and Toshihiro Fujii (Kyoto University))
さらに、研究グループでは“ピエールオージェ観測所”に設置した同型の望遠鏡1基でも観測を開始。
これは、同一の望遠鏡を南北半球の異なる場所に置くことで、2地点での測定結果を検証することを可能にするためでした。
  新型望遠鏡は、稼働中の宇宙線観測装置の測定結果を検証するためにも使用される。

今後研究グループが目指すのは、新型宇宙望遠鏡を20キロ間隔で複数の場所に設置し、これまでより一桁大きい範囲での定常観測の実現。
“極高エネルギー宇宙線”の1年あたりの検出数を、これまでの10倍にまで増やすそうです。

爆発的なエネルギー“極高エネルギー宇宙線”の発生源を突き止められるか。
新型宇宙望遠鏡の活躍を期待して待ちましょう。
将来的な極高エネルギー宇宙線観測のイメージ。
将来的な極高エネルギー宇宙線観測のイメージ。(Credit:Ryuunosuke Takeshige and Toshihiro Fujii (Kyoto University))


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アルマ望遠鏡がとらえた老星がジェットを噴出して変身する瞬間。惑星状星雲や宇宙における物質の進化が見えてくる。かも…

2020年03月26日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡による老齢の星の観測から、星から噴き出すジェットとその周囲の物質の分布が、これまでにない解像度で描き出されました。
このデータを分析して分かったのが、ジェットが噴き出し始めたのは今からわずか60年ほど前のこと。
ジェットによって星の周囲のガス雲の形状が変形している… まさにその現場をとらえられたようです。


多様な“惑星状星雲”の形状

太陽程度の質量の星は、一生の最期に大きく膨らんで赤色巨星になります。
その後、自身を形作るガスを噴き出して“惑星状星雲”と呼ばれる天体として一生を終えます。

“惑星状星雲”の形状としては、球状のものや細長く伸びたものなど様々なものが知られています。
でも、“惑星状星雲”の元になった星は球状なので、多様な形状の星雲が作り出されるメカニズムは、多くの天文学者の関心を引くことになります。

“惑星状星雲”の形状は、元になった星が単独星か連星を成しているかによっても、異なると考えられています。

単独星の場合だと、年老いた星からガスがほぼ球対称に噴き出すので、“惑星状星雲”も球対称な形状になると考えられます。
一方、二つの星が互いに回り合う連星系の場合、老齢の星から噴き出したガスが、もう片方の星の重力によって影響を受け、球対称ではない複雑な形に広がることが想定されます。

この“惑星状星雲”を作り出すメカニズムの解明には、年老いた星周辺の観測が必要になります。
ただ、この領域は星からすでに放出された物質によって隠されているので、これまで直接観測することは困難でした。


連星系で起きている現象

今回の研究を進めているのは、鹿児島大学、スウェーデン・チャルマース工科大学の国際研究チーム。

これまでに電波望遠鏡を用いて終末期にある星々を数多く観測し、一部の天体からは水分子が放つ特異的な電波が検出されることをすでに明らかにしています。研究チームではこれらの天体を“宇宙の噴水”天体と呼んでいます。

これらの現象が連星系で起きているかは確定できていません。
でも、以下のようなメカニズムで水分子の電波が放射されていると予想しています。

まず、2つの星の片方が先に進化して、赤色巨星を経てガスを噴き出し自身は芯だけになります。
ここに、低質量の伴星からガスが流れ込むと、そのガスの一部が終末期の星から双極方向に高速で噴き出すジェットを作ります。
このジェットは、赤色巨星が過去に噴出したガスとぶつかることで、複雑なガスの構造が作られるとともに、この衝突現場から水分子の電波が出ることになります。
年老いた星を含む連星系の進化のイメージ図。(1)AとBの二つの星からなる連星系 → (2)連星系のうち質量の大きい星Aが先に進化して赤色巨星になる。 → (3)星Aの進化がさらに進み、ガスを周囲に噴き出す。中心には星Aの芯が残される。 → (4)星Bも膨らみ始め、星Bのガスが星Aの芯の重力にとらえられて流れ込む。そのガスの一部は星Aから両極方向にジェットとして放出される。
年老いた星を含む連星系の進化のイメージ図。(1)AとBの二つの星からなる連星系 → (2)連星系のうち質量の大きい星Aが先に進化して赤色巨星になる。 → (3)星Aの進化がさらに進み、ガスを周囲に噴き出す。中心には星Aの芯が残される。 → (4)星Bも膨らみ始め、星Bのガスが星Aの芯の重力にとらえられて流れ込む。そのガスの一部は星Aから両極方向にジェットとして放出される。(Credit: NAO)
この現象のカギとなるジェットの継続時間は100年未満と考えられています。
この時間は、星々の寿命に対して数百分の1以下と大変短いので、実際にジェットを噴き出す段階にある星が観測できる確率は低くなってしまうんですねー

1000億個以上の星が存在する天の川銀河の中でも、この段階にある連星系が発見されたのは、これまでの観測で15例しかありません。

短時間しか継続しないジェットは、地球からは遠くにあって非常に小さく見えるので、これまでジェットと周囲にあるガスが衝突している様子は詳しくとらえられていませんでした。


アルマ望遠鏡による高解像度の観測

そこで研究チームが考えたのは、高い解像度を持つアルマ望遠鏡を用いて、“宇宙の噴水”天体の一つである“W43A”を観測することでした。
“W43A”は、わし座の方向約7200光年彼方に位置している年老いた星との連星系です。

アルマ望遠鏡による観測の結果、年老いた星から噴き出すジェットからの電波放射と、その周囲のチリの広がりを、これまでにないほど鮮明にとらえることに成功しています。
アルマ望遠鏡で観測した年老いた星を含む連星系“W43A”の周囲の様子(疑似カラー画像)。中心に連星系があり、左右方向に細長い高速ジェットが伸びていることが分かる(青色)。ジェットの周りには低速なガス流も見えている(緑色)。ジェットの周りに広がっているのがジェットで掃き寄せられたチリ(オレンジ色)。
アルマ望遠鏡で観測した年老いた星を含む連星系“W43A”の周囲の様子(疑似カラー画像)。中心に連星系があり、左右方向に細長い高速ジェットが伸びていることが分かる(青色)。ジェットの周りには低速なガス流も見えている(緑色)。ジェットの周りに広がっているのがジェットで掃き寄せられたチリ(オレンジ色)。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Tafoya et al.)

観測データを詳しく調べて分かってきたのは、老齢の星から間欠泉のように断続的に噴き出したジェットによって、周囲の物質が掃き寄せられ始めていること。
今回観測されたチリは、こうして集められた物質であり、ジェットによって今後さらに外側へと運ばれていくと考えられます。

さらに、ジェットの速度がこれまで推定されていたよりもはるかに大きいことも分かります。
天体から放出された時には秒速175キロにも及んでいました。

ジェットの長さとこの速度から逆算して明らかになったのは、ジェットが噴出を始めたのがわずか60年前ということ。極めて最近のことなんですねー
  このジェットの中に、ほぼ等間隔に並ぶガスの塊も確認している。

ジェットが非常に若いことを考えると、この天体では星周物質の分布が、ジェットによって変形され始めた段階にあるようです。
  星周物質は、星の近傍に存在している物質。
アルマ望遠鏡による観測結果をもとにした“W43A”の周囲(イメージ図)。画面いっぱいに広がる淡いガス雲は、より早い段階で中心の星から球対称に噴き出したガス。星から噴き出す細長いジェットが周囲の物質を掃き寄せて変形させていくことで、複雑な“惑星状星雲”の形が今まさに作られようとしている。
アルマ望遠鏡による観測結果をもとにした“W43A”の周囲(イメージ図)。画面いっぱいに広がる淡いガス雲は、より早い段階で中心の星から球対称に噴き出したガス。星から噴き出す細長いジェットが周囲の物質を掃き寄せて変形させていくことで、複雑な“惑星状星雲”の形が今まさに作られようとしている。(Credit: NAO)

数十年というタイムスケールで変化する現象であれば、一人の人間が生きている間にその動きを追跡することができます。

このジェットにしても、今後数十年以内に形成される“惑星状星雲”にしても、星間空間と恒星との間の物質の輪廻の一部です。
それらを通して、恒星内部で合成された元素が宇宙空間にまき散らされる過程を見ていることになります。

その仕組みを解き明かすことができれば… 宇宙における物質進化についても理解がより深まることになりますね。


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ちょっとした旅行にも持って行きたいゲーム機。Nintendo Switch Liteを手に入れました。

2020年03月25日 | book gadget goods etc
無人島暮らし始めました。

そう、どうぶつの森”をプレイするため、久しぶりに携帯ゲーム機を購入しました。

手に持った本体は思っていたよりも軽いな~って感じ。
これならバッグに入れても気にならない重さ。外でも無人島暮らしをエンジョイできそうです。

○○○

少しプレイして気付いたことは、それほどバッテリーが持たないこと。
まだ外でプレイしたことが無いので何時間持つのか気になるところです。

ただ、Switch LiteのコネクタはUSB Type-Cなんですねー

スマートフォンやノートPCもUSB Type-Cなので、同じ充電器とケーブル、モバイルバッテリーが使えます。
持ち歩くモノを増やさずに充電ができるわけです。

これで、バッテリー残量を気にせずに出先でもゲームがプレイできる。
ちょっとした旅行に持って行って、移動や待ち時間に無人島暮らしをするのもありですね。

今は案内所の建て替えのため木材や鉄鉱石を集めているところ。
自由度が高いので、初めは何から手を付ければいいのか迷いました。

今度はカフェのFree wifiやd wifiにつながるか試してみます。

金星の極域では強い上下方向の大気の運動が発生している? 地球では赤道上空で発生している現象です。

2020年03月24日 | 金星の探査
質量や大きさが地球とよく似ているので、地球の双子星と呼ばれる金星。
これまで金星大気の温度構造は、ごく限られた場所でしか測定されなかったので、金星大気で起こっている様々な現象や、雲の構造を理解するのは難しい状況でした。
今回、金星探査機“あかつき”を用いることで、地球の大気構造とは真逆の傾向があることが分かってきたようです。


金星は地球の双子星だけど大気や気候が全く違っている

金星は地球の双子星と呼ばれるほど、その質量や大きさが地球に似ている惑星です。
でも、金星と地球の大気や気候は全く異なっているんですねー
金星探査機“あかつき”の赤外線カメラ“IR2”がとらえた金星の夜面(疑似カラー画像)。“IR2”では夜面の雲を透過してきた赤外線を観測しているので、雲は影絵のように暗く写るが、画像では明暗反転して雲を明るく表示している。
金星探査機“あかつき”の赤外線カメラ“IR2”がとらえた金星の夜面(疑似カラー画像)。“IR2”では夜面の雲を透過してきた赤外線を観測しているので、雲は影絵のように暗く写るが、画像では明暗反転して雲を明るく表示している。(Credit:PLANET-C Project)
金星大気の成分は主に二酸化炭素です。
このため金星では温暖化が進んでいて、金星地表の気温は約460度、気圧は90気圧にも達しています。

そして、雲の主成分は濃硫酸… 金星全体はこの雲で覆われています。

さらに、金星では、自転スピードの60倍もの速さで大気が回転しています。
これは“スーパーローテーション”と呼ばれる現象で、なぜこのような大気の高速運動が起こっているのかは分かっていません。

太陽系の中で地球と隣り合った公転軌道を持ち、惑星そのものの質量や大きさが似ている金星。
なぜ、地球と金星では気候や大気の状態がこれほど違うのでしょうか?

この謎の解明に必要なのは金星の大気を調べ理解すること。
そうすれば、金星大気やそこで起こる現象を地球のものと比較ができ、地球の大気をより深く理解することにもつながります。


必要なのは全球的な温度の高度分布

金星の大気データを集め、大気で起こる様々な現象を理解すること。
このために打ち上げられたのがJAXAの金星探査機“あかつき”です。いわば金星の気象衛星なんですねー
“あかつき”による観測の概念図。
“あかつき”による観測の概念図。(Credit:PLANET-C Project)
異なる波長で金星を観測すると、様々な高度での大気の情報を得ることができます。

たとえば、撮像観測装置(カメラ)が得意とするのは、特定の高度(主に雲頂あたり)における大気の水平構造を明らかにすることです。
すでに、金星大気の大規模な弓状構造や極域のS字構造など、特定の高度で見た雲の構造を見つけています。

でも、水平方向の情報だけでは大気を理解することできません。
地球の場合もそうですが、大気が高さ方向にどのような構造になっているかを知ることは、金星の大気の変化を明らかにするために重要な情報になります。

また、地球では地形が大気の変化や雲の発生に影響していることも知られています。

では、金星でも地形によって大気は影響を受けているのでしょうか?

これを明らかにするのに必要なのが雲の下の大気を調べることです。
特に大気の温度分布は、雲の発生や雲の変化を知るために重要な情報をもたらしてくれます。
なので、惑星大気や気象現象を理解するのに不可欠なデータといえます。

ただ、金星には分厚い雲があるんですねー
観測波長を変えたとしても、撮像観測で雲の中や下を観測するのは難しい状況です。

もちろん、これまでに着陸機などを用いた観測では温度の高度分布が測定されています。
これは特定の地点における観測であり、観測数も少なく、緯度60度より高緯度のデータはありませんでした。

限られた場所での分布ではなく、全球的な温度分布が、金星大気を理解するために必要になります。


電波掩蔽(えんぺい)観測により金星全球のデータを取得

今回の研究では京都産業大学のチームが、電波掩蔽観測データを用いた金星大気の高度方向気温分布の調査を実施しています。

電波掩蔽観測とは、地上から見て探査機が惑星の背後に隠れるとき、または背後から現れるときに探査機から電波を発し、地上のアンテナで電波を受信。このときの周波数変化から、惑星大気の温度を測定する手法です。
電波掩蔽観測の概念図。
電波掩蔽観測の概念図。(Credit:PLANET-C Project)
探査機から送信された電波は、探査機の軌道運動と通過した大気の屈折によって周波数が変化します。

探査機の軌道運動は、電波掩蔽観測とは独立したデータがあります。
一方、大気の屈折率は大気の温度によって変化するので、電波の周波数変化によって大気の温度が推測できるわけです。

さらに、探査機は軌道上を動いています。
なので、違う時刻に探査機から送信された電波は、金星大気の違う場所を通過して地球に届くことになります。
そう、違う場所(具体的には高度)の大気の温度を見積もることができるんですねー

研究チームが用いた電波掩蔽観測データは、“あかつき”とヨーロッパ宇宙機関の金星探査機“ビーナス・エクスプレス”によるもの。
これにより、雲層の下になる高度40キロ~85キロにおける温度の高度分布を、金星全球で取得することに成功しています。
電波掩蔽観測によって得られた温度の緯度-高度分布(パネルa)と大気安定度の緯度-高度分布(パネルb)。
電波掩蔽観測によって得られた温度の緯度-高度分布(パネルa)と大気安定度の緯度-高度分布(パネルb)。(Credit:PLANET-C Project)
今回の研究で得られた温度の緯度-高度分布から分かるのは、高度60キロより低い領域では、温度が緯度とともに単調に下がっていること。
逆に、高度60キロより上空では、温度は緯度と共に上昇していました。
  緯度65度付近に局所的に冷たい領域が存在していることも分かっている。

過去のデータがある場所については、今回の研究で得られたデータと過去の観測結果が整合していることを確認しています。


大気安定度は金星と地球では真逆の傾向にあった

次に、大気構造をより詳しく調べるため、研究チームが注目したのは大気安定度でした。

大気安定度は気流やどのような雲が発達するのかを知るための重要な指標。
大気安定度が低いと上昇気流や下降気流が発生し、積雲や積乱雲のように垂直方向に雲が発達することになります。

今回の観測結果から見積もられた緯度70度よりも低緯度の大気安定度は、高度50~55キロでは大気安定度が低く、高度55キロより上空では高安定、逆に高度50キロより下では弱安定でした。

これらの特徴は過去の観測結果と一致しているので、金星大気が長年にわたって構造を維持していることを示しています。
  1961年と1984年に行われたソビエト連邦の金星探査機“ベネラ”や、1978年から1992年まで行われたNASAの金星探査機“パイオニア・ヴィーナス”で実施された観測結果と一致していた。

一方、緯度が70度よりも高緯度の領域で初めて明らかになったことがあります。
それは、大気安定度の低い領域が高度40キロまで広がっていること。
金星の高緯度上空では、大気の不安定な領域が低緯度よりも広く存在していることを示していました。

地球では、大気安定度の低い領域は赤道上空が最も広く、高緯度に行くに従い大気安定度の低い領域は狭くなります。

つまり、金星と地球は大気安定度という観点から見ると、真逆の傾向を持っていることになります。

金星の極域で大気安定度が低い領域が広がっているということは、そこで強い上下方向の大気の運動が発生していることになります。

このような大気の垂直方向の運動が、下層から水蒸気や硫酸蒸気などの雲の材料になる物質を速やかに上空へ運び、分厚い雲の生成や維持につながっている可能性があります。

実際、金星の雲は極域で最も分厚いことが観測により示されています。
金星の大気安定度の緯度分布の概念図。
金星の大気安定度の緯度分布の概念図。(Credit:京都産業大学)
これまでのモデルは、着陸機などによるわずか数回の直接観測データに基づいて作られていました。

でも、今回の研究で用いられたのは、金星全球にわたり均一に取得したデータで、より信頼性が高く、不定性が低いもの。
金星の大気で起こる気象現象を理解するための新しいモデルの構築や、モデルにより観測結果を解釈するときに大いに役立つはずです。


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