NASAが計画している木星の衛星エウロパ探査。
この探査ミッションの名称が“エウロパ・クリッパー”に決定したそうです。
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探査機“ガリレオ”が撮影したエウロパ |
最優先のミッション
木星の衛星エウロパは、これまで探査の最優先ターゲットと考えられてきました。
それは、エウロパの氷の殻の下には、
塩分を含んだ液体の水からなる海が存在するからです。
なので、NASAではエウロパを探査するため、
2020年代に探査機“エウロパ・クリッパー”を打ち上げる予定で、
もちろん探査の目的は、液体の水、化学物質、十分なエネルギー源の調査になります。
これらの生命に必要な3つの要素が、
エウロパに存在するかどうかを決定することにあるんですねー
地球外生命の探査へ! NASAがエウロパ探査のコンセプトを発表
高速で宇宙を渡る探査機
探査機の“クリッパー”という名前は、
高速で海を渡る19世紀の大型帆船からきています。
3本のマストを備えた流線形の高速大型帆船は、その優美さと速さで有名で、
大西洋を行き来してアメリカとヨーロッパの間で様々な物品を送っていました。
その高速大型帆船の偉大なる伝統を受け継ぐ“エウロパ・クリッパー”は、
エウロパに2週間ごとに接近して帆走するように探査することになります。
初期ミッションで予定されているのは、計40~45回のフライバイ(接近通過)探査。
探査では衛星の凍った表面を高解像度で撮影したり、
衛星の組成や内部構造、氷の殻を調べたりするそうです。
ただ、“エウロパ・クリッパー”は木星の強い放射にさらされるので、
エウロパ付近を短時間で通過することになります。
なので、速度を上げてエウロパの上空を通過しながら、
膨大な量のデータを集めることになるそうです。
ハッブル宇宙望遠鏡による観測
一方、ハッブル宇宙望遠鏡による新たな成果も報告されています。
2014年にエウロパで観測された噴出らしい現象が、
2016年にも同じ場所でとらえられたんですねー
2014年に観測されたものは高さが約50キロだったのに対し、
2016年のものはエウロパの上空100キロにまで達していました。
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2014年と2016年にハッブルがとらえたエウロパの合成画像。エウロパが木星の前を通過する際にUV光で撮影された画像には、プルームのシルエットが見られる。 |
噴出が見られた場所は暖かい領域に位置していて、
ここには1990年代終わりに木星探査機“ガリレオ”が発見した、
割れ目らしきものが存在しています。
この噴出はエンケラドスと同様に、
衛星内部からの水の噴出の証拠ではないかと推測されています。
もし噴出と暖かい場所に関係があるならば、
氷の地殻の下から噴出した水が、周囲の地表を暖めているのかもしれません。
木星の衛星エウロパ、表面の筋模様は塩でできている?
あるいは、噴出した水が細かい霧のように地表に降ることで、地表の粒子の構造に変化が生じ、
熱をより長く保持できるようになって周囲との温度差が生じているとも考えられます。
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ガリレオがとらえたエウロパの画像。ハッブルが観測したプルームは緑色の楕円形内にあり、この地域はエウロパ表面の暖かい領域と一致している。 |
土星探査機“カッシーニ”は、
エンケラドス表面にある割れ目から噴出している水蒸気プルーム(水柱)で、
生命のエネルギー源となりうる水素分子を検出するという大きな成果を上げています。
生命存在の可能性が高くなった? 衛星エンケラドスで水素分子を検出!
“エウロパ・クリッパー”は、どんな発見をしてくれるのでしょうか。
探査によりで噴出の正体や成分、地下海の活動などを調査していけば、
エウロパにも、生命に必要な3つの要素が存在することが分かってくるのかもしれませんね。
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