宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

ISSで試験開始! 宇宙で膨らませて使う居住モジュール

2016年05月31日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
いま国際宇宙ステーションでは、
宇宙空間で膨らませて利用する仮説居住モジュールの運用試験が、
始まろうとしています。

その運用試験で最初に行われるのが、
モジュールを完全な大きさにまで膨らませる作業。

NASAの発表によると、
26日の試みでは、モジュールが完全に膨らまず試験を中止…
でも28日には、完全な大きさにまで膨らませることに成功したそうです。


収縮可能な居住空間

このモジュールの名前はビゲロー拡張可能活動モジュール。

今後数十年以内に月や火星での利用も視野に入れた、
拡張可能な居住空間を試験する実験の一部になります。

NASAのジェフ・ウィリアムス飛行士が、
26日の午前にヒューストン管制センターと連携して、
モジュールを膨らませる作業を担当。

でも、開始から数時間が経過しても、
モジュールは、ほとんど膨らまず…
26日の試験で膨らまなかったビゲロー拡張可能活動モジュール。

モジュールは完全に膨らむと、
全長4メートル、幅3.23メートルに達するのですが、
この日、モジュールが膨らんだのは数センチだったので、
そのまま作業は中止になったそうです。

そして28日、ジェフ・ウィリアムス飛行士は手動弁を使い、
7時間以上かけてステーションからモジュールに送風。

すると、モジュールはゆっくりと170センチまで膨らんだんですねー
国際宇宙ステーションでの試験で膨らんだピゲロー拡張可能活動モジュール。

その後モジュールは、内部の8つの空気タンクを開け、
ステーション内の気圧に近いレベルまで内部を加圧。

NASAによると、
モジュールから空気が漏れないかどうかを確認する、
一連のテストや準備を行っているそうです。

1週間以内にステーションのトランクウィリティーモジュユールから、
ビゲロー拡張可能活動モジュール内部へ初めて入る予定になっています。

民間宇宙企業のアメリカビゲロー・エアロスペース社が、
NASAと1800万ドル(約20億円)の契約を交わして開発したのが、
ビゲロー拡張可能活動モジュールです。

居住モジュールは楕円形で、宇宙空間での運用試験は今回が初めて。

NASAがこの拡張モジュールを試験しているのは、
もちろん将来の月や火星へのミッションのため。

そう、将来的にはNASAの宇宙飛行士たちが、
この膨らむ仮説居住モジュールを使用するかもしれないんですねー


こちらの記事もどうぞ ⇒ スペースシャトルの後継機は?

インドが再使用型宇宙往還機(試験機)の打ち上げに成功!

2016年05月30日 | スペースプレーン

インド宇宙研究機関が開発している再使用型宇宙往還機の試験機“RLV-TD”が、
23日に打ち上げに成功したんですねー

RLV-TD(Reusable Launch Vehicle - Technology Demonstrator)
と名付けられたこの無人機の翼長は約1メートル、
質量は3トンで、ロケットを含む全長は約6.5メートル。

“RLV-TD”は、1段式の固体燃料ロケット“HS9”の先端に装着され、
シュリーハリコータのサティシュ・ダワン宇宙センターの第2発射台から打ち上げられました。

“RLV-TD”は高度約56キロで“HS9”を分離、
そして高度約66キロまで到達。

その後、マッハ5で大気圏内を滑空飛行して、
打ち上げから約20分後に無事ベンガル湾に着水したんですねー

今回の飛行では、
地球周回軌道には乗らない、サブオービタル飛行で行われました。


有人のシャトル開発に向けて

さらにインド宇宙研究機関では、
現在、“アヴァター”という再使用ロケットの開発も進めています。

“アヴァター”は、いわゆる“Two Stage To Orbit”と呼ばれる2段式のシステムです。
第1段、第2段共に、打ち上げ後には、翼を使って滑走路に戻ってくることができ、
機体をすべて再使用することができるんですねー

また、“アヴァター”は宇宙飛行士を乗せることができ、
開発が順調に進めば、2025年ごろに打ち上げが行われるようです。

試験機“RLV-TD”は、
その“アヴァター”の第2段にあたる宇宙船部分を、小さくしたような形をしていて、
アヴァター”の開発に必要なデータを取ることを目的としています。

再使用可能なロケットの開発は、段階を踏んで進められていて、
今回の試験飛行は、その一つになるようですよ。


こちらの記事もどうぞ
  無人宇宙往還機“X-37B”が4回目の飛行へ
  “ドリーム・チェイサー”が宇宙へ! NASAの物資輸送でシエラ・ネバダ社が起用
  インドが再使用型宇宙往還機の試験機を打ち上げへ

火星の海岸線が消えたのは巨大津波が原因?

2016年05月29日 | 火星の探査
火星には、かつて広大な海が広がっていたと考えられています。

でも、海があったと考えられる火星の地表面に、
海のなごりになる海岸線の痕跡がみられないんですねー

この疑問を、どう解き明かすのか…

今回発表された仮説は大きな津波のお話し。

なんでも、34億年前の火星に巨大な津波が発生し、
海岸を飲み込んでしまったそうです。

巨大隕石の衝突

今回発表されたのは、
火星で津波が発生したことを裏付ける地形を発見したこと。

34億年前の火星では、数百万年という比較的短い期間内に、
2度の巨大津波が発生していたいようです。

この研究では、火星探査機の観測データを用いて火星北部の地形を分析しています。

すると山の斜面で、
斜め上方向に盛り上がるように堆積している地形が見つかります。

この地形が生まれた原因を探ると、
巨大な2つのクレーターに行きついたんですねー

直径が30キロもある隕石が衝突したことでクレーターが誕生。

そして、隕石の衝突によって発生した津波が、
海岸線付近の岩石を山方向に押し出したため、
盛り上がるように堆積している地形が誕生したということです。
赤色が1回目の津波が到達したラインで、黒色が2回目の津波が到達したライン。

火星の北半球には、かつて海が存在していた考えられています。

でも一部の場所では、
一定の高度に沿うように発生するはずの海岸線の痕跡が見られず…

この海岸線の消失は、
今回発表された「巨大な津波の発生によって生み出された」と考えると、
理にかなっているんですねー

シミュレーションでは、
1回目の隕石衝突によって発生した津波の高さは、
最大で120メートルにも達したそうです。

津波で浸食された範囲は、
8万平方キロから10万平方キロと推定されています。
2回目の巨大津波が発生した当時の火星の気温は氷点下でした。
ただ、火星の海は塩分濃度が高かったので、液体で存在していたと考えられているんですねー

2回目の津波で押し出された水は氷の破片になっているはずなので、
この氷を分析すれば、かつての生命体の痕跡が確認できるかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 火星に深さ1.6キロの海があったかも、約40億年前に…

今と昔では大きく違う、星形成活動を司る物理メカニズム

2016年05月28日 | 宇宙 space
遠方の銀河に含まれる重元素量と星形成活動の強さの関係。

この関係を観測調査してみると、
重元素量が星形成の強度に関係しないことが分かってきました。

この結果、これまで近傍の宇宙で知られていた関係とは異なるんですねー
っと言うことで、銀河における星形成の理論に新たな疑問が出てきたお話しです。


重元素量が星形成活動

星形成活動を行っている銀河の重元素(ヘリウムより重い元素)の量は、
銀河へのガスの流入や星形成、銀河からガスが流出する過程が、
複雑に絡み合った結果として現れます。

どのくらいの量の重元素が銀河に存在するのか、
その量が星形成活動の強さと関係性があるのかどうかを調べることは、
銀河の進化を明らかにする上で重要な手がかりになります。

今回の研究では、ハワイのマウナケアにあるケック望遠鏡を用いて、
110億年前の宇宙で典型的に見られる星形成銀河を41個観測。
観測された銀河の1つ(青枠)と重元素の量を示すデータ。

その結果、
110億年前の(つまり遠方の)宇宙に存在する平均的な銀河の重元素の量が、
現在の(近傍の)宇宙の平均的な銀河に比べて、
わずか2割程度しかないことが明らかになります。

さらに、遠方銀河の重元素量が星形成活動の度合いによらないことも、
新たに発見されました。

このことは、これまで近傍宇宙で知られていた
「星形成活動が弱い銀河では、重元素量が高い傾向にある」
という関係とは対照的な結果になるんですねー

つまり、初期の宇宙では星形成活動を司る物理的なメカニズムが、
現在とは異なっていたことになります。
銀河の重元素量を表すグラフ。
横軸は銀河の大きさ(恒星質量)、縦軸は重元素量。
同じ質量で比較すると、現在の銀河(2本の青いデータ)に比べて、
110億年前の銀河(四角のデータ)は重元素量が少ない。
また、現在の銀河は星形成率が低いと重元素量が高い傾向にあるが、
110億年前の銀河ではその傾向は見られない。

遠方宇宙では、
宇宙の大規模構造から供給されるガスの流入ペースが速すぎるので、
星形成活動が活発でも、大量のガスを直ぐには消費することができません。

このことが、重元素量の傾向が見られないことに関係しているのかもしれません。

銀河の重元素量と星形成率、恒星質量の関係を理解できれば、
銀河の進化についても、もっと分かってくるのかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 銀河に星形成を起こすガスの流れ“コールドフロー”

無名の大型準惑星が太陽系の外側に潜んでいた!

2016年05月27日 | 宇宙 space
系外惑星探査衛星“ケプラー”と、
赤外線天文衛星“ハーシェル”の観測データから、
太陽系外縁天体“2007 OR10”の大きさが、
約1500キロと計測されました。

まだ名前の付いていない天体が、
実は冥王星やエリスに次ぐ太陽系で3番目に大きい準惑星だったんですねー

太陽系外縁天体

準惑星は、火星軌道と木星軌道の間の小惑星帯に位置するケレスを除いて、
すべて海王星よりも遠いところに位置しています。

遠いことに加えて、
小さく低温なので、観測が困難で謎に包まれた部分が多く、
正確な大きさについても、はっきりしない天体が多くあります。

たとえば光の点が、
小さくて明るい天体なのか、大きくて暗い天体なのかが分からないんですねー

2007年7月に発見された太陽系外縁天体“2007 OR10”も、
遠くにあって正確な大きさが不明な天体の1つでした。

それが、NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”と、
ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“ハーシェル”の観測データから、
“2007 OR10”の直径が1535キロと計測されることに…

この数値は、これまでの見積りより250キロほど大きく、
まだ(符号でない)名前が付けられていない太陽系天体としては、
最大のものになりました。


3番目に大きい準惑星

準惑星候補天体になる“2007 OR10”を他の準惑星と大きさを比較すると、
冥王星(2374キロ)やエリス(2326キロ)より一回り小さく、
マケマケやハウメアよりも少し大きいようです。
準惑星と“2007 OR10”の大きさの比較。
図にはないがケレスは1000キロ未満。

これまで分かっていた“2007 OR10”の大きさは、
“ハーシェル”による赤外線観測データに基づくもので、
全体の明るさや大きさの正確さには限度がありました。

それを“ケプラー”が“2007 OR10”のわずかな光度変化をとらえ、
約45時間という非常にゆっくりした自転周期を観測。

すると、天体の詳細なモデルを作ることができ、
正確な大きさや反射率が分かってきたんですねー

“2007 OR10”が大きいということは、表面が暗いことを示唆していて、
明るい冥王星などとは性質が異なることを意味します。

地上観測から知られている“2007 OR10”の赤い色は、
どうやらメタンの氷によるもののようです。

さらに、直径の見積もりが大きくなったことで、
この天体が本来は失われやすい揮発性のメタンや一酸化炭素、
窒素の氷で覆われている可能性が増してきました。

遠く離れた太陽系の外縁部に存在する準惑星…
この新たな天体のことが少しずつ分かってきたところで、
気になるのは、この新たな準惑星の名前ですかねー


こちらの記事もどうぞ
  外縁天体の奇妙な軌道は、太陽系に9番目の惑星がある証拠
  太陽系内で一番遠い天体を発見! 考えられていたよりも太陽系は大きいようです