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【三大流星群】夏の風物詩“ペルセウス座流星群”が今年もやってくる! 2024年の見頃はいつ? どの方角を見ればいいの?

2024年07月10日 | 流星群/彗星を見よう
“ペルセウス座流星群”は、12月の“ふたご座流星群”や1月の“しぶんぎ座流星群”と共に三大流星群と呼ばれていて、年間でも1,2を争う流星数を誇っています。

2024年の“ペルセウス座流星群”の活動が最も活発になる“極大”を迎えるのは、8月12日(月)23時頃と予想されています。
なので、多くの流星が見れそうなのは、12日深夜から13日未明にかけてになります。

11日から13日にかけての3夜でも普段よりも多くの流星が見れそうです。
いずれの夜も、21時頃から流星が出現し始め、夜半を過ぎて薄明に近づくにつれて流星の数が多くなることが予想されています。

予想極大時刻の12日23時頃は、それなりに多めの流星が見られそうです。
ただ、放射点がまだ低く、空の暗い場所で観察した場合の流星数は、1時間当たり25個程度…
最も多く流星が見れそうなのは、さらに放射点が高くなる13日の夜明け近く。
こちらは、空の暗い場所で観察したすると、1時間当たり40個程度の流星数が予想されています。

12日と14日の夜明け近くにも多めの流星数が予想され、空の暗い場所で1時間当たり20個程度の流星が見れそうです。

なお、各夜とも夜半前に月が沈もので、流星数が多くなる夜半から明け方までの時間帯は月明かりの影響がなく、良い条件で観察できそうです。

ただ、ウェザーニュースによると絶好の流星日和とはいかないようです。(2024.08.10更新)
低気圧や前線などの大きな転機の崩れは予想されていませんが、湿った空気の影響を受けやすい気圧配置が予想されているので、天気が好条件とはいい難い状況…
東日本から北日本の太平洋側では、日本の東に広がる太平洋高気圧の縁を回って流れ込む湿った空気により、雲が広がりやすい予想です。
中国東北区には前線を伴った低気圧が進んでくるので、九州などでは天気が下り坂になりそうです。
他の地域では雲が散在するものの、観測のチャンスがあるそうです。
図1.放射点が高くなる13日の夜明け近くだと最も多くの流星が見れそう。
図1.放射点が高くなる13日の夜明け近くだと最も多くの流星が見れそう。


夜空のどこを見ればいいの?

流星が、そこから放射状に出現するように見える点を“放射点”と呼びます。

流星群には、放射点の近くにある星座や恒星の名前が付けられています。
“ペルセウス座流星群”の場合はペルセウス座の辺りに放射点があるので、この名前が付けられたというわけです。

ただ、流星が現れるのは、放射点付近だけでなく、空全体なんですねー

流星は、放射点から離れた位置で光り始め、放射点とは反対の方向に移動して消えます。
いつどこに出現するかも分からないので、なるべく空の広い範囲を見渡すようにします。

あと、流星の数は放射点の高度が高いほど多くなり、逆に低いほど少なくなります。
なので、放射点が地平線の下にある時間帯には、流星の出現は期待できません。

また、目が屋外の暗さに慣れるまで、最低でも15分間ほどは観察を続けるといいですよ。

レジャーシートを敷いて地面に寝転んだり、背もたれが傾けられるイスに座ったり… 楽な姿勢で観察を楽しんでください。


“ペルセウス座流星群”とは?

“ペルセウス座流星群”は、少なくても2000年近くは継続して観測されている歴史ある流星群です。

記録も紀元前から始まり、様々なところで記録に残っていて、その量はかなり膨大なものになります。

約135年周期で太陽系を巡っているスイフト・タットル彗星(109P/Swift-Tuttle)が“ペルセウス座流星群”の母天体になります。
母天体とは、チリを放出して流星群の原因作っている天体のことです。

現在スイフト・タットル彗星は地球から遠く離れた位置にありますが、彗星から放出されたチリは彗星の軌道に広がって分布しているんですねー

地球は毎年同じ時期に、このスイフト・タットル彗星の軌道を通過。
軌道に残されたチリの帯に突入することで、チリが地球の大気圏に飛び込んで燃え尽きるところを流れ星として見ることになります。


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2024年の年始めは“しぶんぎ座流星群”から! 見ごろはいつ? どこを見ればいいの?

2024年01月04日 | 流星群/彗星を見よう
1年の最初を飾る流星群“しぶんぎ座流星群”は、8月の“ペルセウス座流星群”、12月の“ふたご座流星群”と並ぶ三大流星群のひとつです。

でも、流星の出現数は年によってかなりムラがあり、どのくらい流れるかを予測するのが難しい流星群でもあるんですねー

このため、熟練した観察者によって1時間当たり100個程度の流星が見られた年もありますが、通常は1時間当たり20~50個程度の出現になります。

毎年安定して多くの流星が出現する“ペルセウス座流星群”や“ふたご座流星群”と比べると、“しぶんぎ座流星群”は活動が活発な期間が短いことや、年によって出現数が変化しやすいことから、流星が多く見える年は限られてしまいます。
“しぶんぎ座流星群”と放射点(2024年1月4日、5日3時頃の東京の星空)(Credit: 国立天文台)
“しぶんぎ座流星群”と放射点(2024年1月4日、5日3時頃の東京の星空)(Credit: 国立天文台)


月明かりの影響を受けるので今年の条件はあまり良くない

今年の“しぶんぎ座流星群”の極大(※1)は1月4日18時頃。
ただ、この時間帯は日本では放射点が昇っていないか、昇っていても大変低い位置なので、観察には向かず…

日本で観察しやすい時間帯が極大から大きくズレているので、それだけ流星の数は少なくなりそうです。
なので見ごろは、放射点が高くなる4日未明と5日未明ですね。
※1.極大とは、流星群の活動が最も活発になること。ある場所で見える流星の数には、流星群自体の活動の活発さだけでなく、その場所での放射点の高度や月明かりなども影響する。そのため、極大の日時と、それぞれの場所で多くの流星が見える日時とは、必ずしも一致しない。
観察に適した時間は、東京や大阪だと4日と5日のそれぞれ1時から5時頃です。
2024年1月5日5:00の夜空(大阪)。放射点が高い位置にあるが、下弦過ぎの月明かりの影響を受けるので条件は良くない。
2024年1月5日5:00の夜空(大阪)。放射点が高い位置にあるが、下弦過ぎの月明かりの影響を受けるので条件は良くない。
4日は、放射点(※2)が高い空に達する5時頃が最も多く見えるはずです。
5時頃に実際に見える流星の数は、空の暗い場所で1時間当たり約10個ほどになります。
※2.放射点とは、流星群の流れ星が、そこから放射状に出現するように見える点。流れ星の数は、放射点の高度が高いほど多くなり、逆に低いほど少なくなる。“ふたご座流星群”の“放射点”はふたご座の2等星カストルの近く。
5日は、極大を過ぎて流星数が減る効果と、放射点が高くなって流星数が増える効果が釣り合うので、2時から5時まで前日とほぼ同じくらいの流星数となりそうです。
空の暗い場所で、1時間当たり10個程度と予想されています。

両日とも下弦過ぎの月明かりの影響を受けるので、今年の条件は良くないといえます。
月のない方向の空を見るなどの工夫をして観察するといいですよ。

流星は放射点の方向だけに現れるのではなく、空全体に現れます。
いつ、どこに出現するかは分からないので、なるべく空の広い範囲を見渡すようにしましょう。
屋外の暗さに目が慣れるまで、最低でも15分ほどは観察を続けるとよいです。

レジャーシートを敷いて地面に寝転んだり、背もたれが傾けられる椅子に座ったりすると、楽な姿勢で観察できます。
大変寒い季節なので、寒さ対策をしっかり行って風邪をひかないようにしてください。


流星の元になるチリを放出した天体は?

実は、流星群の由来になっている“しぶんぎ座”という名前の星座は今は存在していません。

“しぶんぎ座流星群”の放射点があるのは、“うしかい座”と“りゅう座”の境界付近。
かつて、この辺りに“へきめんしぶんぎ(壁面四分儀)座”という星座が設定されていたので、この名前が付けられています。

チリを放出して流星群の原因を作っている天体を母天体といいます。
“しぶんぎ座流星群”の母天体(※3)には諸説あり、まだ確定していません。
※3.母天体とは、チリを放出して流星群の原因作っている天体のこと。
母天体の多くは彗星なんですが、最近有力視されているのは、2003年に発見された小惑星番号196256(仮符号2003EH1)の小惑星です。
でも、この小惑星がどのように流星の元になるチリ(ダスト)を放出したのかは分かっていません。


なぜ活動期間が短いの?

地球が彗星や小惑星の通り道を、毎年同じ時期に通過することで流星群が現れます。

彗星の通り道にはチリの帯が残されているので、それらが地球の大気に飛び込むことで、上空100キロ前後で発光して流れ星として見えるんですねー

ただ、“しぶんぎ座流星群”の元となるチリの帯は、地球の公転面と直角に近い角度で交差するので、地球はチリの帯を短時間で抜けてしまうことに…

このため、“しぶんぎ座流星群”の活動は、“ふたご座流星群”や“ペルセウス流星群”などほかの流星群に比べて、活動が活発な時間(流れ星を多く観測できる時間)が短いという特徴を持っています。


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2023年の“ふたご座流星群”は絶好の条件で観察できる! 1時間当たり70個を超える時間帯も!? 見ごろはいつ? どこを見ればいい?

2023年12月08日 | 流星群/彗星を見よう
1月の“しぶんぎ座流星群”や8月の“ペルセウス座流星群”と並び、活動が安定していて流れ星が多い“ふたご座流星群”がやってきます。

2023年の“ふたご座流星群”は、12月15日4時頃に極大(※1)となり、この前後で流星群の活動がとても活発になると予想されています。
※1.極大とは、流星群の活動が最も活発になること。ある場所で見える流星の数には、流星群自体の活動の活発さだけでなく、その場所での放射点の高度や月明かりなども影響する。そのため、極大の日時と、それぞれの場所で多くの流星が見える日時とは、必ずしも一致しない。
12月13日が新月で月明かりの影響もなく、極大時刻にほど近い12月14日夜から15日明け方にかけては、とても多くの流星が観察できそうですよ。
“ふたご座流星群”と放射点(2023年12月15日1時頃の東京の星空)(Credit: 国立天文台)
“ふたご座流星群”と放射点(2023年12月15日1時頃の東京の星空)(Credit: 国立天文台)

絶好の観察条件をもつ2023年“ふたご座流星群”

多くの流星が観察できそうなのは12月13日から15日の3夜。
どの夜も、21時頃から見える流星の数が増え、夜明けを迎える翌朝の5時過ぎころまで観測できそうです。

最も多く見えるのは、12月14日夜から15日明け方と考えられます。
空の暗い場所で観察すると、14日21時頃にはすでに1時間当たりの流星数が30個を超えそうです。

その中でも狙い目は、放射点(※2)が高い空に達する15日0時から3時頃
この時間帯だとさらに多くなり、暗い空で見える流星数は、1時間当たり70個に達する可能性がありそうです。
※2.放射点とは、流星群の流れ星が、そこから放射状に出現するように見える点。流れ星の数は、放射点の高度が高いほど多くなり、逆に低いほど少なくなる。“ふたご座流星群”の“放射点”はふたご座の2等星カストルの近く。
この流星の予想数は、ここ数年のうちでは最も多いもの!
2023年の“ふたご座流星群”は絶好の観察条件と言えます。
2023年12月15日4:00の夜空(大阪)。放射点が高い位置にあり、月明かりもない絶好の条件。
2023年12月15日4:00の夜空(大阪)。放射点が高い位置にあり、月明かりもない絶好の条件。
また、極大の前日に当たる12月13日夜から14日明け方は、空の暗い場所で1時間に10個から25個程度。
極大の翌日に当たる12月15日夜から16日明け方だと、空の暗い場所で1時間に15個から20個程度の流星が見えると予想されます。

流星は放射点の方向だけに現れるのではなく、空全体に現れます。
いつ、どこに出現するかは分からないので、なるべく空の広い範囲を見渡すようにしましょう。
屋外の暗さに目が慣れるまで、最低でも15分ほどは観察を続けるとよいです。

レジャーシートを敷いて地面に寝転んだり、背もたれが傾けられる椅子に座ったりすると、楽な姿勢で観察できます。
大変寒い季節なので、寒さ対策をしっかり行って風邪をひかないようにしてください。

“ふたご座流星群”の母天体は彗星ではなく小惑星“フェートン”

チリを放出して流星群の原因を作っている天体を母天体といいます。

この母天体の軌道と地球の軌道が交差していると流星群が出現することになります。

そう、地球が母天体の通り道を毎年同じ時期に通過する際に、通り道に残されたチリが地球の大気に飛び込んでくるんですねー
チリは上空100キロ前後で発光、これが流星群です。

母天体の多くは彗星なんですが、“ふたご座流星群”の場合は約1.4年周期で太陽系を巡っている小惑星“フェートン”になります。

一般的に小惑星は彗星のように尾をたなびかせチリを放出することはなく、“フェートン”も現在は活動を停止していると考えられています。
2017年のレーダーによる観測では、“フェートン”のおおよその形や自転周期求められた。さらに、2019年には、“フェートン”が恒星の光を遮る掩蔽が観測され、その直径や形を詳しく探ることができた。
チリが多く集まっていれば流れ星の数も増えます。
ただ、“ふたご座流星群”の場合に考えられるのは、チリが“フェートン”の軌道上の一部に遍在しているのではなく、軌道全体に広がって分布していること。

チリも“フェートン”と同じ軌道を運動しているので、地球は毎年のように多くのチリとぶつかることになります。
なので、“ふたご座流星群”の流れ星は“フェートン”の位置に関わらず毎年多く見られるわけです。


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2023年のオリオン座流星群の見ごろはいつ? 一番は10月21日(土)の深夜から22日(日)の明け方にかけて

2023年10月09日 | 流星群/彗星を見よう
2023年10月21日更新
2023年の“オリオン座流星群”。
活動が最も活発になる“極大”を迎えるのは10月22日(日)の午前9時ごろ
そう、日本では日中になるんですねー

なので、一番の見ごろは、10月21日(土)の深夜から22日(日)の明け方にかけてになります。
放射点が昇る21日22時ごろには月は沈み、明け方にかけて放射点の位置もどんどん高くなるので、月明かりの影響もなく好条件で観察できそうです。

21日(土)夜~22日(日)明け方は、西高東低の気圧配置となり、日本列島の上空には寒気が流れ込む予想です。
 ・北日本や日本海側を中心に雲に覆われ、流星の観測は難しそうです。
 ・西日本や東日本の太平洋側ほど雲が少なく、流星が見られる可能性が高くなります。
ただ、関東周辺は雲の発生する可能性があるんですねー
この雲に邪魔されなければ、観測のチャンスはありそうです。
北日本太平洋側や南西諸島も雲が出やすくなる見込みです。

土日は、この秋一番の寒気が流れ込み、夜間はぐっと冷えるので、観測の際はしっかりと寒さ対策をする必要がありますよ。
10月21日(土)の22時頃の東の空(紫色でオリオン座と書かれた十字マークが放射点)。月は沈み、放射点は東の空の低い位置にあるが、明け方にかけて放射点の位置はどんどん高くなる。月明かりの影響もなく、明るい土星(約0.7等級)と木星(約‐2.9等級)も昇っているので天体観測も楽しめる。
10月21日(土)の22時頃の東の空(紫色でオリオン座と書かれた十字マークが放射点)。月は沈み、放射点は東の空の低い位置にあるが、明け方にかけて放射点の位置はどんどん高くなる。
月明かりの影響もなく、明るい土星(約0.7等級)と木星(約‐2.9等級)も昇っているので天体観測も楽しめる。
ただ、今年のオリオン座流星群は月明かりの影響はなくても活動は低調…
条件の良い場所でも1時間あたり5~10個程度になりそうです。
ちなみに、流れ星が出現する放射点はオリオン座の右腕のあたりです。

オリオン座流星群の母天体は、5月の“みずがめ座η流星群”と同じハレー彗星です。

ハレー彗星が最後に太陽系で見られたのは1986年のことです。
今年12月に海王星の彼方で太陽から最も遠い位置(遠日点)に達し、そこを回って再び太陽に戻るための帰路につきます。

そして、2061年7月29日には最も太陽に近づく位置(近日点)を通過。
太陽に近付くにつれ、熱で核の氷が解けて噴き出し、広がったものが尾のようになり、ハレー彗星による天体ショーを楽しむことができます。

地球はハレー彗星の通り道を毎年この時期に通過しています。
すると、彗星の通り道に残されたチリが地球の大気に飛び込んでくるんですねー
チリは上空100キロ前後で発光、これがオリオン座流星群です。

オリオン座流星群は速度が速いので明るい流星が多く見れるのが特徴で、火球と呼ばれる明るい流星や流星痕と呼ばれる痕を残す流星が出現することがあります。
また、ピークがなだらかな流星群なので、22日の極大を中心に4~5日間は観測のチャンスがありそうです。

朝晩の冷え込みが増してきているので、防寒に気を使って観測してください。

夜空のどこを見ればいいの?

流星が、そこから放射状に出現するように見える点を“放射点”と呼びます。

流星群には、放射点の近くにある星座や恒星の名前が付けられています。
“オリオン座流星群”の場合はオリオン座の右腕の辺りに放射点があるので、この名前が付けられたというわけです。

ただ、流星が現れるのは、放射点付近だけでなく、空全体なんですねー

流星は、放射点から離れた位置で光り始め、放射点とは反対の方向に移動して消えます。
いつどこに出現するかも分からないので、なるべく空の広い範囲を見渡すようにします。

あと、流星の数は放射点の高度が高いほど多くなり、逆に低いほど少なくなります。
なので、放射点が地平線の下にある時間帯には、流星の出現は期待できません。

また、目が屋外の暗さに慣れるまで、最低でも15分間ほどは観察を続けるといいですよ。

レジャーシートを敷いて地面に寝転んだり、背もたれが傾けられるイスに座ったり… 楽な姿勢で観察を楽しんでください。


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ふたご座流星群の元になるチリはどのようにして放出されたのか? 彗星ではない母天体“フェートン”と過去の天体衝突

2023年08月14日 | 流星群/彗星を見よう
ちょうど、“ペルセウス座流星群”観察のタイミングですが、
今回は、“ペルセウス座流星群(8月)”や“しぶんぎ座流星群(1月)”と共に三大流星群と呼ばれている“ふたご座流星群(12月)”のはなしです。

チリを放出して流星群の原因を作っている天体を母天体といい、この母天体の軌道と地球の軌道が交差していると流星群が出現することになります。

そう、地球が母天体の通り道を毎年同じ時期に通過する際に、通り道に残されたチリが地球の大気に飛び込んでくるんですねー
チリは上空100キロ前後で発光、これが流星群です。

ただ、“ふたご座流星群”の場合は、母天体が彗星ではなく“フェートン”という小惑星…

彗星のように表面活動の活発な天体は、その公転軌道上に大量のチリを放出します。
では、小惑星の“フェートン”からは、どのようにして流星群の元になるチリが放出されているのでしょうか?
図1.小惑星“フェートン”のイメージ図。(Credit: NASA/JPL-Caltech/IPAC)
図1.小惑星“フェートン”のイメージ図。(Credit: NASA/JPL-Caltech/IPAC)

小惑星を母天体に持つ珍しい流星群

流星群の母天体の多くは彗星なんですが、“ふたご座流星群”の場合は約1.4年周期で太陽系を巡っている3200番小惑星“フェートン”。
“はやぶさ2”が探査した小惑星“リュウグウ”やNASAの“オシリス・レックス”が探査した“ベンヌ”と同じ“C型小惑星”と呼ばれる炭素質の小惑星です。

今回発表されたのは、この“フェートン”からのチリの放出が、天体衝突のような激しいプロセスによって生じたとする研究。
研究にはNASAの太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”の観測データが用いられています。
この研究は、プリンストン大学のW. Z. CukierさんとJ. R. Szalayさんのチームが進めています。
この研究成果が正しければ、“ふたご座流星群”は天文学的なスケールでは、ごく一時的な現象になってしまいます。

毎年決まって同じ時期に観測される流星群は、流星の元になるチリの分布が関係していると考えられています。

彗星のように表面活動の活発な天体は、その公転軌道上に大量のチリを放出します。
このような天体の公転軌道が地球の公転軌道と交差していると、地球は毎年同じ時期に交差点を通過することになるので、毎年同じ時期に流星群が観測されるわけです。

でも、母天体が彗星だと推定されている他の流星群とは異なり、小惑星である“フェートン”が母天体だと推定されている点で、“ふたご座流星群”は非常に珍しい存在と言えます。

どのようにして流星群の元になるチリが放出されているのか

確かに、太陽に極めて接近する“フェートン”の軌道は小惑星というよりも彗星のようで、わずかながら尾を形成するような活動も観測されていました。

そのため、“フェートン”はもともと彗星で、氷などの揮発性物質が枯渇した天体なのではないか、とする説もあったんですねー

でも、近年の観測結果では、“フェートン”がごく普通の小惑星で、太陽に極めて接近するために彗星のような活動を示しているに過ぎない、という認識でほぼ一致していました。
尾の主成分は高温の環境下でなければ蒸発しにくいナトリウムであり、揮発性物質やチリは含まれていないことも判明しています。

このような性質を持っているので、“フェートン”からどのようにして流星群の元になるチリが放出されているのか、という謎は深まるばかりでした。

“フェートン”は、太陽に極めて接近したとき以外はごく普通の小惑星のように振る舞っています。
なので、何か特異な現象が起きているとすれば、太陽に接近した時に限られるはずです。

でも、太陽に接近した時の“フェートン”を観測するには、太陽が明るすぎるのでこれまで困難でした。
図2.“パーカー・ソーラー・プローブ”は太陽探査機で、チリを直接観測するための観測装置は搭載されていない。でも、工夫することで間接的に“フェートン”のチリをとらえることに成功した。(Credit: NASA / Johns Hopkins APL / Steve Gribben)
図2.“パーカー・ソーラー・プローブ”は太陽探査機で、チリを直接観測するための観測装置は搭載されていない。でも、工夫することで間接的に“フェートン”のチリをとらえることに成功した。(Credit: NASA / Johns Hopkins APL / Steve Gribben)
そこで、今回の研究では、“フェートン”からのチリの放出をシミュレートし、それを“パーカー・ソーラー・プローブ”の観測結果と比較することで、“フェートン”がどのようにして“ふたご座流星群”の母天体になったのかを調べています。

研究チームが検討したシミュレーションは3つ。
これにより2000年間にわたるチリの動きと広がり方を検証しています。

1.標準的な放出
“フェートン”から低速度でチリが放出されることを想定しています。
“フェートン”は太陽の放射によって極度に乾燥してひび割れています。
さらに、放射圧の非対称さによって起こり得るのが、自転が一時的に加速する現象“YORP効果”。
この2つの要因が重なると、表面からゆっくりとチリが放出されると考えられます。

2.激しい放出
“フェートン”に小さな天体が衝突し、その衝撃でチリが放出されることを想定しています。
衝突の速度は秒速1キロ程度で、標準的な放出と比べて放出されたチリの速度は速く、瞬間的なプロセスによる現象を特徴とします。

3.普通の彗星活動による放出
“フェートン”が普通の彗星と同じような活動をしていることを想定しています。
このシミュレーションは、比較のために検討されたもの。
数々の観測結果に反する仮定なので、研究チームもこのプロセスが働いている可能性は低いと考えています。

観測に用いられたのは、“パーカー・ソーラー・プローブ”の磁場観測装置“FIELDS”のデータ。
複数のアンテナや磁力計で構成されている“FIELDS”は、電場や磁場、太陽コロナを通過する衝撃波の測定を行うための装置ですが、チリ検出器として利用することもできました。
アンテナにチリが衝突することで生じる電位変化の値を読み取り、そこからチリの密度を算出しています。
図3.左から“標準的な放出”、“激しい放出”、“普通の彗星活動による放出”のシミュレーション結果。チリの空間的な広がり方から、最も実態と一致するのは“激しい放出”だと判明した。(Credit: Cukier & Szalay)
図3.左から“標準的な放出”、“激しい放出”、“普通の彗星活動による放出”のシミュレーション結果。チリの空間的な広がり方から、最も実態と一致するのは“激しい放出”だと判明した。(Credit: Cukier & Szalay)
研究の結果、観測データと最も一致したシミュレーションは、“フェートン”に小さな天体が衝突し激しくチリが放出されたと想定したもの。
この想定は、今回の“パーカー・ソーラー・プローブ”の観測データだけでなく、過去の観測結果とも一致するものでした。

ただ、シミュレーションの結果は完全ではありません。

今回の研究で示されたモデルでは、地球が“フェートン”のチリと交差するタイミング、つまり“ふたご座流星群”が出現する時期を予測することはできませんでした。

このことが意味しているのは、シミュレーションが完全でないこと…
どこが誤っているのかが明らかになるのは、今後の研究次第になってしまいます。

なお、JAXAが2024年に打ち上げを計画している深宇宙探査機“DESTINY+”は、“フェートン”のフライバイ観測を目的の1つとしているミッションです。
“DESTINY+”は、惑星間航行中にダスト(個体微粒子)の組成をその場で分析し、3200番小惑星“フェートン(Phaethon)”のフライバイ探査を行う計画。これまでの深宇宙探査機が、ロケットで惑星間空間に一気に投入されるのに対し、“DESTINY+”では小型のイプシロンロケットで地球周回の長楕円軌道に投入され、1~2年かけて燃料消費のけた違いに少ないイオンエンジンで高度上昇し、月スイングバイで加速して惑星間空間へ出発する。これは将来の低コスト・高頻度で持続的な深宇宙探査を実施可能にするための技術実証になる。
フライバイ探査対象の“フェートン”は“ふたご座流星群”の母天体で、活動的でC型(炭素質)小惑星、最大級(5.8キロ)の地球衝突可能性天体になる。搭載される3つの科学観測機器の開発や理学全体の取りまとめを千葉工業大学が担当し、多くの組織の研究者が参加している。
“DESTINY+”は、宇宙空間を漂うチリを観測する装置を搭載していますが、今回の研究結果を考慮すれば、“フェートン”のチリの直接観測は難しいかもしれません。

でも、“パーカー・ソーラー・プローブ”のような間接的な検出は可能だと見込まれていて、フライバイ観測によって得られる情報は他にもあります。

“フェートン”の深まる謎は、そう遠くないうちに“DESTINY+”が明らかにしてくれるはずですね。


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