宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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着陸から1年半、火星探査車“キュリオシティ”の成果は?

2013年12月31日 | 火星の探査
NASAの探査車“キュリオシティ”が火星に降りたってから約一年半経ちました。

“キュリオシティ”は膨大な量のデータを送信し続け、火星の実態を調査、解明する上で多大な貢献を果たしています。

これにより、さまざまな側面を、それぞれ異なる科学的視点から取り上げた6本の論文も発表され、30~40億年前の様子をはじめ、赤い惑星に関する理解がさらに深まりつつあるんですねー


1.かつて生物が生息可能な環境だったことを確認

河川がゲイル・クレーターに流れ込んでいた痕跡を確認した調査チームは、この領域に湖が存在していたと報告しています。
その表層水と、数百メートル下を流れていた地下水があれば、微生物が生き延びられたそうです。

ゲイル・クレーターが温暖湿潤で居住可能だったのは、およそ35~40億年の昔、地球で生命が誕生した時期に近いようです。


2.過去の川床の跡を発見

しかもその水は、専門家が不可能だと考えていた形で存在していたようです。

火星を周回する衛星が担う遠隔観測と連携を果たした“キュリオシティ”の貢献度は特筆に値し、
過去の火星に水が存在し、ゲイル・クレーターに流れていたことを示す強力な手がかりが発見されています。

この結果、はるか昔の小川や水路、デルタ、湖を示す幾重もの地層に関する確たる証拠が得られています。


3.有機化合物を特定

重要な目標の1つである火星の炭素系有機化合物の調査は、現在難航していて、しばらくは悪戦苦闘が続くとみられています。

小型の科学実験装置である火星サンプル分析装置で、6種類の有機化合物が特定されましたが、その起源は明らかになっていません。
今のところ言えるのが、火星特有の化合物とは断言できないということです。


4.自然放射線量の測定

宇宙線と太陽からの放射線がダイレクトに降り注ぐ地表は、生物の生存が不可能な状態になります。

そして、“キュリオシティ”搭載の放射線評価検出器により、地表の放射線量が初めて測定され、
宇宙飛行士にとって重大な問題になると判明するんですねー

このレベルの放射線に暴露すれば、表面または地下数メートル以内に生息する微生物は、数百万年以内に死に至るそうです。


5.放射線が正常な化学物質を分解

専門家の多くは、火星表面の有機物の特定が困難な理由として、放射線による炭素化合物の影響を挙げています。
なんでも、イエローナイフ湾の地表は約8000万年、放射線にさらされているとようです。


6.急がば回れ

着陸後の“キュリオシティ”は、ゲイル・クレーターの中心にあるシャープ山に直行する予定でした。
でも、実際には大幅に遅れていて、出発して480日以上が経過しているのですが、到着は数か月も先になる見込みです。

遅れている理由は、イエローナイフ湾に立ち寄ったためで、
ここがデータの宝庫だったからなんですねー

“キュリオシティ”は現在、高さ約5000メートルのシャープ山を目指して、高速輸送ルートを走行中です。
大半の時間を移動に費やしているので、調査には絶好とみられる多くの地点を素通りしている状態だったりします。


調査チームでは、放射線の影響が少ないサンプル採取の候補地に関するデータをもとに、今後も探査を続行する予定です。

なので、有力視されているシャープ山に接近するにつれ、火星の有機物調査は佳境に入ることになります。  さて、来年こそ大きな発見があるといいですね。

37年間も月面着陸が行われなかった理由は?

2013年12月30日 | 宇宙 space
中国の無人月探査機“嫦娥三号”が、12月14日に月面着陸に成功しました。
月に探査機が軟着陸するのは、実に37年ぶりのことになるんですねー

“嫦娥三号”には月面探査車“玉兎”が搭載されていて、
これから月の表面を調査し、2つの望遠鏡で観測を行うことになります。

中国の月探査車“玉兎”が着陸した
“虹の入り江”

軟着陸を成功させ、重量100キロの探査車を月面に送り込んだ中国は、ソ連、アメリカについで、月面に宇宙船を軟着陸させた3番目の国になりました。

それ以前に月面軟着陸が行われたのは1976年で、月の石を地球に送った旧ソ連の“ルナ24”が最後になります。

その4年前の1972年には、“アポロ17号”が現時点で最後になる月への有人飛行ミッションを行っていて、これがアメリカにとって最後の月面軟着陸になるんですねー

それ以来なぜ、ロシアやアメリカは月面着陸を行っていないのか?
そしてなぜ、最後の着陸からこれほど間があいたのでしょうか?

答えは簡単で、「再び月へ行くだけの十分な科学的理由がなかった」からなんですねー
そして、今も十分な理由はないようです。

NASAのアポロ計画は、合計382キロの月の石を地球に持ち帰っています。
その分析結果は、月の年齢に関する疑問解明に役立ち、約45億年前に地球と火星サイズの天体が衝突して、月が誕生したことも分かってきました。

ただ、これらのミッションは、
「人間を月に送り込むのは莫大な費用と危険が伴う」ことを証明したんですねー

特に、危うく死者を出すところだった1970年の“アポロ13号”の事故後は、
当時のアメリカ大統領リチャード・ニクソンを慎重にさせ、1972年の再選後には宇宙開発予算を削減することを考えていたそうです。


ではなぜ、十分な科学的理由がないのに、中国は月を目指し軟着陸を行ったのでしょうか?

理由は、中国にとって月探査計画が、国家の科学目標にのっとっているからで、
その目標とは、月・地球・太陽系の歴史を解明し、その未来の予測にあります。

中国はこれまでに2度、探査機を月周回軌道に投入することに成功しています。
なので、今回の月面軟着陸は、中国が10年以上前から取り組んでいた月探査計画の集大成になるんですねー

また、中国はこの10年間に有人宇宙飛行も成功させていて、無人宇宙実験室との有人ドッキングを行うなど、アメリカとロシアが40年前に刻んだ足跡を後追いしています。

こうした中国の取り組みが行き着く先が、
当然、入念な計画のもと行われる有人月面探査になるんですねー


ただ、中国が探査機を月に送り込む10年ほど前から、世界各国の宇宙機間が再び月に関心を向け始めていたりします。

1994年に打ち上げられたアメリカの月探査衛星“クレメンタイン”により、月に凍った水が存在する可能性があることが分かったのが、大きなきっかけになって月面への関心が再燃したということです。

そして、2010年の観測機“エルクロス”のミッション。
これは、観測機とこの上段ロケットを、わざと月面に衝突させてチリを舞い上がらせるというもので、
衝突の結果、月の南極域にある日光の当たらないクレーターの下に、氷が隠れていることが確認されたんですねー

この発見がアメリカの次なる有人宇宙飛行計画をめぐる議論に影響を与えることになり、
アメリカとカナダは共同で、将来の月ミッションで水を採掘するための“リゾルブ”という月探査ローバーの開発を進めることになります。

他にも、グーグル・ルナー・エックスプライズでは、10以上の民間チームが賞金約41億円をかけて争っています。
このレースは、2015年までに月面に無人探査機を着陸させ、月面を500メートル以上移動させられるかを競うのもです。

十分な科学的理由がなかった月ですが、
今は、宇宙開発の新興国や民間企業にとって、困難だけど達成可能な目標になってきたんですねー
再び月から地球を眺める日はいつになるのか、楽しみになりますね。

降水観測衛星と7つの小型衛星が2月に打ち上げへ

2013年12月29日 | 地球の観測
H-IIAロケット23号機により、
全球降水観測計画主衛星“GPM主衛星”の打ち上げが決定しました。

この計画は、2014年2月28日の午前3時~5時に種子島宇宙センターから打ち上げられ、
“GPM衛星”を所定の軌道に投入するものです。

H-IIAロケット23号機は、H-IIA202形態で4メートル径の4S型フェアリングを使用しています。
打ち上げ能力に余裕があるので、小型副衛星7基も軌道投入されるんですねー

固体ロケットブースタを打ち上げ約1分48秒後に、衛星フェアリングを約4分5秒後に分離し、約6分36秒後には第1段主エンジンの燃焼を停止して、約6分44秒後に第1段を分離します。

続いて、約6分50秒後に第2段エンジンの燃焼を開始、約14分58秒後に燃焼を停止した後、近地点高度約398キロ、遠地点高度約406キロ、軌道傾斜角65度の楕円軌道上で“GPM主衛星”を分離するんですねー

その後、ロケットは惰性飛行を続けて小型副衛星を分離することになります。

“GPM衛星”は、JAXAとNASAが共同開発した衛星で、複数の衛星データを組み合わせることで、高精度、高頻度な降水の観測を目指しています。

小型副衛星は、打ち上げ能力の余裕を活用して、民間企業や大学が製作する小型衛星に対して、容易で迅速な打ち上げ・運用機会を提供するものです。

宇宙開発利用の裾野を広げるとともに、小型衛星を利用した教育・人材育成への貢献を目指しているんですねー

WISEからNEOWISEへ 眠りから覚めた赤外線衛星

2013年12月28日 | 宇宙 space
NASAの赤外線天文衛星“WISE”が2年半ぶりに再稼動しました。
名前も“NEOWISE”になり地球近傍小惑星の観測を行い、
有人探査の対象となる天体も、このミッションの観測対象から選ばれるかもしれないんですねー
NASAの赤外線天文衛星“NEOWISE”が、およそ2年半の冬眠モードから目覚め、初のテスト観測画像を送ってきました。
この画像は口径40センチ望遠鏡と赤外線カメラにより、直径42キロの小惑星“ホルダ”が以前と変わらない画質でとらえられています。
当初“WISE”と名付けられた衛星は、2009年12月に打ち上げられ、
メインミッションとなる全天サーベイ“WISE”と、太陽系小天体サーベイ“NEOWISE”を行っていました。

1年余りで3万4000個以上の小惑星を発見し、そのデータから7億4700万以上の天体を含むカタログが作成され公開されています。

そして、予定ミッションが終了した2011年2月に、ほとんどの搭載機器をオフにして省エネの冬眠モードに入り、再稼動したのが今年の9月です。

衛星自体も“NEOWISE”と名前を変えて、
今は新たなミッションの準備が行われているところなんですねー

本格稼動後は、地球近傍小惑星の統計的な観測を行い、地球に危害を及ぼす可能性のある天体などの発見と、さらに詳しい観測を行っていきます。

アメリカが2025年までの実現を目指す、小惑星捕獲・有人探査の目標となる天体も、この“NEOWISE”の観測対象から選ばれるかもしれないそうですよ。

国際宇宙ステーションの修理は2回で終了

2013年12月27日 | 宇宙 space
熱制御用外部排熱システムの故障で、
一部機器の電源を落として運用していた国際宇宙ステーション。

12月24日に行われた冷却系故障箇所の修理は、船外活動2回目でアンモニア循環ポンプモジュールの交換が終了したので、
3回目の船外活動は行わないことになったんですねー
2回目の船外活動では、12月21日に取り外されたループAアンモニア循環ポンプモジュールに代わって、新しいポンプが取り付けが行われています。

作業中にアンモニア循環系の周辺で、アンモニア漏れが見つかったので、二人の宇宙飛行士はいったんエアロックで宇宙服の点検を行ったのですが、新しいモジュールの取り付けは無事に終了。

電気系統の接続も完了して、モジュール再起動が確認されています。
っということで、国際宇宙ステーションの船外活動は25日に全て終了したということです。