宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

最強クラスのブラックホールが作る、銀河サイズのガスの穴

2014年01月31日 | 宇宙 space
39億光年彼方の銀河団の中心に、
史上最強クラスのブラックホールの存在がとらえられました。

このブラックホールの重さは太陽の10億倍以上。
そして、噴き出す強力なジェットは、天の川銀河と同じサイズの巨大な空洞を作り、
その衝撃で周囲のガスがあたためられているんですねー
銀河団“RX J1532”の中心部に広がる高温のガス(紫)

ガスをあたためた犯人

今回チャンドラX線観測衛星が観測したのは、
38億光年彼方の銀河団“RX J1532”の中心領域に広がる膨大な高温ガス。

通常、銀河団中心でX線放射をするような高温高密度のガスは、
冷えやすく、すぐに圧力が低下して銀河に吸い込まれ、
爆発的に生まれる星の材料になります。

でも、この中心領域ではそうした星形成の兆候は見られていないんですねー

2種類の観測から見えてきた、その理由とは、
銀河団の中心にある巨大質量ブラックホールから噴出するジェット(電波で観測)が、
高温ガスにぶつかって空洞(X線で観測)が作られ、
その衝撃が広がってガスが加熱しているらしい っというものでした。

ガスが冷えなければ銀河に吸い込まれることもなく、
したがって星が爆発的に生まれることもありません。

そして幅10万光年という、
天の川銀河がすっぽり収まるほどの巨大な空洞を作り出すジェットは、
非常に強力なものに違いないんですねー

こうしたブラックホールのジェットは、
その強い重力で急激に物質が吸い込まれる反動で生成されます。

でも、この“RX J1532”の中心領域では、
通常X線で観測される物質の取り込みが見られず…

この場合考えられることは、ブラックホールが極端に重いということ。

ブラックホールが太陽の100億倍以上の質量の場合、
おるいは太陽の10億倍程度の質量で、かつ高速で自転している場合には、
物質をあまり飲み込まなくても、強力なジェットを生成することができるようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 超大質量ブラックホールが作ってきた3組の巨大な空洞

アトラスVロケット、データ中継衛星“TDRS-L”を打ち上げ

2014年01月30日 | 宇宙 space
ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社が、NASAのデータ中継衛星“TDRS-L”を搭載した、アトラスVロケットを打ち上げました。

アトラスVは1月23日、フロリダ州にあるケープ・カナベラル空軍基地のSLC-41を離床。
ロケットは順調に飛行し、約106分後に衛星を分離、所定の軌道へ送り込むことに成功しています。

NASAが運用するデータ中継衛星は、高度約3万6000キロの静止軌道から、地球低軌道を周回する国際宇宙ステーションやハッブル宇宙望遠鏡、地球観測衛星などのデータを中継し、ニューメキシコ州ホワイトサンズやグアムの地球局に送信する役割を担っています。

高速で地球を周回する低軌道の衛星と地上局では、直接交信できる時間は短く、送受信できるデータ量が限られてしまいます。
でも、いったん静止軌道上のデータ中継衛星へデータを送信すれば、5倍以上の時間、安定した通信が可能になります。

国際宇宙ステーションと通信する際に、応答にタイムラグが発生するのは、
高度約400キロの国際宇宙ステーションから、さらに高高度のデータ中継衛星と交信し、地上局へ中継する時間のためなんですねー

TDRSの製造はボーイング社が担当していて、打ち上げ時の質量は3454キロ、静止軌道で約15年間に渡り運用される予定です。

“TDRS-L”のTDRSとは、このデータ中継衛星の名前である「Tracking and Data Relay Satellite」の頭文字から取られていて、
続くLはアルファベットの12番目の文字なので、TDRSの12機目の衛星であるということを示しているんですねー

最初のデータ中継衛星“TDRS-A”は、1983年に打ち上げられています。
ただ、1号機から4号機まではすでに引退していて、今運用中なのは5号機から10号機になります。

そして、昨年1月に打ち上げられた11号機“TDRS-K”が、運用に向けたテストの段階にあり、来年には13号機“TDRS-M”と14号機“TDRS-N”の打ち上げも計画されているんですねー

今回の打ち上げに使われたアトラスVは401と呼ばれるもので、
構成はフェアリングの直径が4メートル、固体ロケットブースターが無く、セントールと呼ばれる上段のエンジンが1基というものです。

アトラスVはロッキード・マーティン社によって開発されたロケットで、打ち上げは今回で43機目となります。
2007年に一度、予定より低い軌道に衛星を投入してしまった以外は、安定していて成功続けています。

ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社の次の打ち上げは、“GPS-2F”を搭載したデルタIVロケットが2月20日に予定されています。
アトラスVロケットの方は、偵察衛星“NROL-67”を搭載して3月25日に打ち上げ予定になっています。

小惑星帯では初! 準惑星“ケレス”で水蒸気を検出

2014年01月29日 | 宇宙 space
小天体がひしめく小惑星帯で、最大の天体が準惑星“ケレス”です。
今回、この“ケレス”で水蒸気が検出されたんですねー
小惑星帯で水蒸気が発見されたのは初めてのことで、太陽系の水の歴史を知るうえで重要なことになります。
水蒸気を検出したのは、ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“ハーシェル”の観測からです。

1秒におよそ9キロの水蒸気が、凍った地表の2箇所を中心に放出されていて、
どうやら黒っぽい部分が太陽の光であたためられることによって、水が揮発しやすくなっているようです。

あるいは、氷が間欠泉のように噴き出している可能性もあるんですねー

準惑星“ケレス”は、火星軌道と木星軌道にはさまれた“小惑星帯”にある最大の天体で、直径はおよそ950キロあります。
その内部は、岩石の中心核と、氷のマントルの外側に分かれているようです。

これまで、“メインベルト彗星”と呼ばれる一部の天体が、小惑星帯にありながらガスやチリを噴き出す彗星のような活動を見せるので、小惑星帯に水分が存在すると考えられていました。
その水分が、水蒸気の形で検出されたはこれが初めてなんですねー
小惑星帯の天体に氷があるかどうかは、太陽系の歴史を理解するうえで重大な関心事です。

46億年前に太陽系が形成されたころ、
その内側は温度が高いので水が集まることはありませんでした。
水星や地球、火星など太陽に近い惑星に水がもたらされたのは、今から39億年前…
太陽から遠く離れた外側からやってきた、小惑星や彗星が次々と惑星に衝突した時のようです。

“ケレス”は、小惑星帯全体の質量の5分の1を占めるほどの天体なので、
今回の発見は、小惑星や彗星などの太陽系小天体だけでなく、地球の水の起源を知るうえでも重要なものになるんですねー

そして、同じように氷に覆われた天体に、木星の衛星“エウロパ”と土星の衛星“エンケラドス”があり、これらの天体でも水蒸気の放出が確認されています。
研究者は氷の表面の下には水があり、そこに地球外生命が存在する可能性があると考えています。
なので、“ケレス”にも期待が持てるんですねー

さらに、2015年初め頃には、今回の発見を間近で確かめるチャンスも訪れます。

小惑星“ベスタ”の探査を終えたNASAの探査機“ドーン”が、“ケレス”に向かっていているからです。
“ドーン”は、“ケレス”の上空から地表を観測するので、水蒸気放出のようすを詳しく伝えてくれかもしれませんね。

なぜ探査車の前に、突如岩が現れたのか? 火星人の仕業かも…

2014年01月28日 | 火星の探査
NASAの火星探査車“オポチュニティ”が、2014年1月1日に取得した火星のエンデバー・クレーターの画像の中に、2週間ほど前にはなかった岩の塊が見つかって話題になっているんですねー


3か月の活動予定を超え、10年にわたって活動する無人探査車“オポチュニティ”



火星の“オポチュニティ”は、2004年1月に火星に到着し、今年で活動10周年を迎えた無人探査車です。

今回、NASAジェット推進研究所の10周年記念イベントの中で、“オポチュニティ”の活動が研究者を驚かせたというエピソードが紹介されました。

これは、“オポチュニティ”のパノラマカメラが撮影した画像の中に、2013年12月26日の画像には写っていなかった岩が現れてたというもので、岩はドーナッツほどの大きさで「尖った頂きをもつ島」と名付けられています。





左側“Sol 3528”は昨年12月26日の画像、右側“Sol 3540”は今年1月8日の画像。




この岩が現れた理由は(火星人の可能性を除外して)2つ考えられ、
ひとつは、2週間ほどの間に新しい隕石が落下した可能性で、ふたつめが“オポチュニティ”自身が近辺にあった岩を弾き飛ばし、カメラの視野に入れたというものです。

ただ、天体の衝突に伴う痕跡が周囲に見られないので、隕石の可能性は低く、もともとあった岩である可能性が高いんですねー

岩は、周辺の地表に比べてコントラストが高く、カラー画像では白く、内側の一部が濃い赤なのが分かります。
なので、もともとあった岩の上下が逆さまになり、長いあいだ日光にさらされて風化していない側が、見えるようになった可能性があります。

岩の組成については発表されていないのですが、火星に水が豊富に存在した時代にできた石膏のようです。
と言うのも、“オポチュニティ”は2011年から、水の痕跡が残るエンデバー・クレーターで探査を続けていて、石膏と見られる白い鉱物を発見しているからなんですねー

恒星と惑星の中間のような天体

2014年01月27日 | 宇宙 space
とてもめずらしい種類の褐色矮星が直接撮影されました。
このことは、恒星と惑星の中間の質量を持つ天体を研究する上で、指標となる成果になりそうなんですねー








“HD 19467”と、
その伴星の褐色矮星(矢印)





ノートルダム大学の研究チームが、太陽に似た恒星“HD 19467(エリダヌス座の7等星)”を、ハワイのケック1望遠鏡で17年間にわたって観測していました。
すると、継続的に加速が見られ、わずかな重力で恒星を振り回す伴星の存在が示唆されたんですねー

そして、2012年にケック2望遠鏡を用いて高コントラストで観測したところ、画像のような伴星が見つかりました。

褐色矮星は、いわば「恒星のなりそこない」のような天体です。
太陽の8%以下の質量しかないので、中心温度が低く水素の核融合が行われず、低温でくすぶっているんですねー
なので、今回見つかったT型矮星は、主星に比べて10万分の1以下の明るさしかありません。

距離は正確に分かっているので、波長ごとに分けた光の成分“スペクトル”の情報を使わなくても直接撮像から、この惑星の質量や軌道、年齢、化学組成といった重要な属性について絞り込むことができるんですねー

恒星と違い、惑星のスペクトルについては複雑で理解が進んでいないので、恒星と惑星の中間のような褐色矮星は良いサンプルになるそうです。

今後この“HD 19467 B”をさらに詳しく調べることで、惑星大気の理論モデルを確かめるなど、系外惑星についての理解が進むかもしれません。

地球タイプの惑星を直接撮像して、スペクトルも得ることができれば…
将来的には、その惑星の組成や質量、大きさや年齢などの情報が、まるごと分かるようになるようですよ。