宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

土星の衛星タイタンの湖

2013年10月31日 | 土星の探査
土星探査機“カッシーニ”によって撮影された、土星の衛星タイタンの北極にある湖。

この画像は、今年の7月と9月にタイタンをフライバイした時に、“カッシーニ”が撮影した画像を合成したものです。

画像中央やや上に写っている黒の部分が、メタンもしくはエタンの湖とみられているんですねー

タイタンは土星最大の衛星で、直径が約5150キロ。
窒素とメタンの分厚い大気に覆われていて、地表温度はマイナス170度です。

地球のような水循環はないのですが、メタンなどの炭化水素が液体状態で存在していると考えられています。
“カッシーニ”のこれまでの観測で、タイタンの北極には多数のメタンの湖が集中して存在していることが確認されているんですねー

今回の新しい画像は、タイタンの湖がどのようにして形成されたのかということと、
水ではなく炭化水素の循環による気候サイクルの、新しい手掛かりになると期待されています。

ホットジュピターでなくても、傾いた軌道を持つ系外惑星

2013年10月30日 | 宇宙 space
はくちょう座の方向約3000光年彼方の赤色巨星“ケプラー56”。
この中心星“ケプラー56”を回る2つの惑星が、中心星の赤道面に対して45度も傾いた軌道を回っていることが分かりました。

実は、中心星から近い軌道を回る巨大ガス惑星“ホットジュピター”のないこの惑星系は、
貴重な発見になるようです。







中心星“ケプラー56”と
周囲の惑星軌道





NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”のデータから、
中心星表面の複数個所における明るさの変動を分析した結果、
地球からの観測方向に対して、その自転軸が45度も傾いていることが分かりました。

2つの惑星は、地球から見て手前を通過(トランジット)しながら公転。
つまり、これらの惑星の公転面は、中心星の自転軸に対して45度傾いているということになります。

惑星は中心星をとりまくチリやガスの円盤の中から生まれるので、中心星の赤道面と惑星の公転面は揃っているのが自然なんですねー
この太陽系でも、惑星は太陽の赤道面から7度以内の範囲を公転しています。

ではなぜ、“ケプラー56”の惑星の軌道は傾いているのか?
この疑問については、コンピュータシミュレーションから、
中心星からはるか遠くを周回する、木星の3倍以上の重さを持つ巨大惑星の影響だということが分かってきました。
そして、この第3の惑星はケック天文台の観測で実際に見つかったんですねー

ホットジュピターには、中心星の赤道面から傾いた軌道を持つものもあるのですが、
ホットジュピター以外の系外惑星で見られるのは今回が初めてのことです。

これには、ほかの天体との「重力の押し合いへし合い」で形成されるなどの説があるのですが、確かなことはまだ分かってないんですねー
ただ、「傾いた軌道がホットジュピターだけでない」っということを示した今回の発見は、これらの謎を解く重要な一歩になるのかもしれませんね。

宇宙でもっとも大きい恒星の寿命

2013年10月29日 | 宇宙 space
これまで知られている恒星の中で、最も大きいとされる“W26”。
この恒星の寿命が近づいていて、最終的には爆発するそうです。

ヨーロッパ南天天文台の超大型探査望遠鏡がとらえた超星団“Westerlund 1”。
これまで知られている恒星の中で最も大きいとされる“W26”は、この超星団の中にある。

1998年に最初に観測された恒星“W26”は、さいだん座の方向約1万6000光年の距離にあります。
直径は太陽の約3000倍で、これまで観測された恒星の中では最も大きいんですねー

“W26”は、巨大で短命な天体“赤色超巨星”に分類されます。
“赤色超巨星”は、燃料を使い果たして超新星爆発を起こすまでの寿命は、通常数百万年以下とされています。

南米チリにあるヨーロッパ南天天文台の望遠鏡を用いた観測で、“W26”に死期が迫っている兆候を確認したのですが、その兆候というのは、“W26”が不安定化していて、外層が流出していることでした。

これが、この星の寿命が近づいていることを示す大きな証拠だということです。

地球と月の高速通信

2013年10月28日 | 月の探査
NASAの月探査機“LADEE”に搭載されたレーザー通信装置“LLCD”。
この装置により、地球と月の間で622Mbpsの最大通信速度を達成したんですねー
深宇宙との大容量通信に対応するため、
NASAは従来の電波通信から、レーザー通信技術の実用化を目指していて、
“LLCD”は、NASA初の2方向レーザー通信システムの実証ミッションになります。

“LADEE”に搭載された通信機器“LLCD”は重量がおよそ30キロあり、
口径10センチの望遠鏡と、2軸のジンバル、0.5ワット赤外線レーザー送信機を搭載し、
最大で622Mbpsの通信が可能です。

通信は地上局の6インチ反射望遠鏡から、
探査機へビーコンを送信し、“LLCD”は、検知したビーコンの方向へデータを送信します。

今回、NASAのジェット推進研究所のテーブルマウンテン施設、ヨーロッパ宇宙機関のスペイン・カナリア諸島テネリフェ島観測施設などの地上局が、受信実験に参加しています。

ニューメキシコの地上局と、月周回軌道上の探査機との間で、エラーフリーデータの20Mbpsアップロード実証を行うのも、目的のひとつになっています。

レーザー大容量通信実証に成功したことで、
将来は月以遠の深宇宙探査で、高解像度画像や3D映像の送受信が可能になるんですねー

たとえば、平均的な映画と同程度の長さのHD動画の場合、
“LADEE”に搭載された通常の通信用のS帯送受信では639時間かかるところを、
“LLCD”であれば8分で送信できるようです。

“LADEE”は、9月にヴァージニア州ワロップス飛行施設から打ち上げられた月探査機で、
ミッション期間は約100日と比較的短いんですねー

“LLCD”の実証期間もごく短期間に限られたものとなるので、NASAでは2017年にさらに長期にわたるレーザー通信実証実験“LCRD”を予定しているようです。

アルマ望遠鏡が解き明かす、銀河中心ブラックホールの活動

2013年10月27日 | 宇宙 space
3000万年前と110億年前の銀河の中心あるブラックホール。

これらのブラックホールから噴き出すジェットを、
アルマ望遠鏡で観測し、サブミリ波で詳しく調べることで、
ブラックホールの活動が銀河の進化に与える影響が分かってきたんですねー


時代で変わるブラックホールの活動

ほぼ全ての銀河の中心には、
太陽の数十億倍にもなる超大質量ブラックホールが存在します。

非常に遠方にある、つまり宇宙の歴史においてはるか昔の銀河では、
こうしたブラックホールは周囲の物質を大量に吸い込むと同時に、
大きなエネルギーを放ちます。

高温に熱せられたガスが明るく輝き、
一部のガスがジェットとして激しく噴き出すなど、
とても活発な活動を見せるんですねー

でも、現在に近くなるにつれ、
こうしたブラックホールがガスを吸い込むペースは落ちていき、
昔ほどの活発さは無くなってしまいます。


穏やかなブラックホールと小さなジェット

とけい座の方向およそ3000万光年彼方に棒渦巻銀河“NGC 1433”があります。

この銀河の中心ブラックホールは比較的穏やかで、
アルマ望遠鏡で観測したところ、
ブラックホールに物質が流れ込むようすを示す分子ガスの渦巻構造や、
わずか150光年の長さのジェットが見つかりました。


“NGC 1433”と、その中心部で渦巻く分子ガス
(青:ハッブル宇宙望遠鏡、赤・黄:アルマ望遠鏡)

銀河中心ブラックホールで、
これほど小さい分子ガスジェットが見つかったのは、初めてのことなんですねー

星の材料となる分子ガスがジェットとして銀河中心から放出されると、
その周辺では星が作られにくくなります。

なので今回、“NGC 1433”中心にあるような穏やかなブラックホールにも、
分子ガスのジェットが見つかったことで、
ブラックホールが銀河の進化に与える影響の一端が明らかになったということです。


遠方の激しいブラックホール

アルマ望遠鏡を用いた銀河中心ブラックホールの研究発表はもうひとつあり、
こちらは、とても遠くの銀河で激しい活動を見せるブラックホールです。

いて座の方向110億光年もの彼方にある、
銀河“PKS 1830-211”の中心ブラックホールの観測では、
ジェットの根元に大量の物質が流入して、
ジェットが瞬間的に激しくなるようすがとらえられました。

銀河“PKS 1830-211”のブラックホール周囲を電波で見た明るさ。
重力レンズ効果によりジェットで明るい部分が2つの像として見えている。

アルマ望遠鏡で見えるのは、サブミリ波(電波の一種)での明るさなので、
ガンマ線観測衛星“フェルミ”のデータでも調べたところ、
ガンマ線でもはっきりとした変化の兆候がとらえられたんですねー

ブラックホールジェットから発せられるガンマ線とサブミリ波で、
これほどはっきりと連動的な変化が見られたのは初めてのことでした。

今回取り上げた研究結果は、
「近傍」と「遠方」の超巨大ブラックホールから噴き出すジェットの観測研究において、
アルマ望遠鏡が、確かな一歩を踏み出したということの表れなんですねー