宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

新ミッションが正式決定! 探査機“ニュー・ホライズンズ”はカイパーベルト天体“2014 MU69”へ

2016年07月13日 | 冥王星の探査
2006年に打ち上げられ、
2015年の7月14日に冥王星への接近通過(フライバイ)を果たした、
NASAの探査機“ニュー・ホライズンズ”。

はるかな旅の後に行った冥王星やその衛星カロンの観測は見事に成功させ、
いま“ニューホライズンズ”は地球からどんどん遠ざかりながらも、
膨大なデータを少しずつ送信しています。

さらに、今回新しいミッションも正式に決定。
“ニュー・ホライズンズ”は新たな目的地“2014 MU69”へと向かうことになります。

予定されていた追加ミッション

次の探査目標天体は、
冥王星よりさらに約16億キロ外側を公転しているカイパーベルト天体“2014 MU69”。

“ニューホライズンズ”は当初から、冥王星系だけでなく、
他のカイパーベルト天体も探査するように計画された探査機でした。

なので追加の目標をフライバイするための燃料も残っていて、
電力系統も、あと数年は稼働するように設計されているんですねー


カイパーベルト天体“2014 MU69”

新たな目標として選ばれた“2014 MU69”は、
2014年にハッブル宇宙望遠鏡で発見されたカイパーベルトにある天体です。

太陽系の外側にカイパーベルトがあります。

そこには惑星になりきれなかった物質や惑星同士が衝突してできた破片が漂っていて、
それらは太陽系の初期の頃のままの状態を保っていると推測されています。

カイパーベルトにある天体の数は数十億個とも言われ、
その多くが岩石や氷、凍ったメタンやアンモニアの塊などで、
その中でも“2014 MU69”は比較的大きく、その直径はおよそ48キロもあるんですねー

典型的な彗星より10倍以上大きく1000倍以上重い天体になり、
一方で冥王星と比べると0.5~1%の大きさで質量は1万分の1しかなく、
冥王星などを作る元になった天体と考えられています。

NASAがこの天体を選んだのは、
“ニュー・ホライズンズ”が向かっている方向と、
使える燃料の残量からもっとも余裕をもって到達できるからで、
到達した後も柔軟な観測が行えることになります。

今回、予算が無事に通り、
“2014 MU69”が正式なターゲットとして承認されました。

すでに軌道修正は行われていて、“2014 MU69”への到着予定は2019年1月1日。

さらに“ニュー・ホライズンズ”は“2014 MU69”に向かう途中にも、
小惑星イリスなど複数の天体の観測を行うようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 【冥王星探査】フライバイ(接近通過)を振り返ってみると

凍りついた天体“冥王星”… でも氷が絶えず湧きあがる場所がある

2016年06月18日 | 冥王星の探査
冥王星で最も目立つ、明るいハート形の領域“スプートニク平原”。
この平原が、地質学的に「生きている」ことが明らかになりました。

今回発表された発見の内容は、
“スプートニク平原”の下にある氷の対流が、その表面をたえず新たに覆い直し、
多角形のパターンを作り出しているというもの。

一見穏やかそうな平原の西半分では、
比較的温度の高い窒素の氷が、下からたえず湧きあがっていて、
新たに表面に到達した氷は横に広がり、クレーターやその他の痕跡を消し去り、
この領域を若々しく保っているそうです。

“スプートニク平原”に見られる多角形のパターンも、
湧きあがってきた氷が作り出していて、
その形は、氷床のゆっくりした動きとともに変化していくと考えられているんですねー
NASAの探査機“ニューホライズンズ”が、
冥王星の帯状の領域を最高の分解能で撮影した画像。


科学者が驚いたこと

2015年7月のこと、NASAの無人探査機“ニューホライズンズ”が、
冥王星へのフライバイ(接近通過)を行いました。

このとき科学者たちが驚いたのは、
冥王星の地形や色、氷の様子が、低温の太陽系外縁部で作られたものとしては、
きわめて多様なこと。

それは、太陽から遠く離れた太陽系外縁部では、
太陽からの熱がほとんど届かないので、すべてがその場で凍りつくと考えていたから…

太陽系が誕生した当時から、
死んだ破片が円盤状になって、太陽系を取り巻いていると思っていたからでした。


次々に湧きあがる氷

“スプートニク平原”は差し渡しは約1200キロもある、
冥王星の特異な地形の1つです。

冥王星のように凍りついた古い天体の表面は、
風化などが無いのでクレーターだらけになっているはずです。

でも、“スプートニク平原”の滑らかな表面は、あまりにも若々しく、
周囲の山々から流れ下ってきた氷河が、氷原に氷を供給しているようでした。

詳しく観察すると、平原は多角形のパターンで埋め尽くされていて、
それぞれの多角形は中心部分がわずかに高くなっていました。

今回の発見は、これを見て、
「多角形のパターンは“スプートニク平原”の下にある
     氷の対流によって作り出されたのかも知れない」
という提案から始まることになります。

実は、“スプートニク平原”の正体は巨大な盆地で、
くぼみに柔らかい窒素の氷が堆積することで、平原のように見えているからです。

冥王星の内部にある放射性元素は、いまでも放射性崩壊により熱を発生しています。
その熱が、差し渡し10~40キロの多角形のセル構造を作り出しているようです。
“ニューホライズンズ”が撮影した最高の分解能画像を組み合わせたもの。

組み合わせた画像の全体像(巨大サイズ画像)。


どんどん塗り替える

新たな研究によると、
“スプートニク平原”の表面は50万~100万年で完全に置き換わるようです。

つまり、地球上でサーベルタイガーが生きていた時代には、
この領域の風景は、今とはまったく違っていたことになるんですねー

地球よりも40倍も太陽から遠く離れた小さな氷の天体で、
これほど高速な地質過程を目にするとは思いませんよね。

でも、地球や火星にあってもおかしくないような構造が、
太陽系の外縁の地球とは大きくかけ離れた環境に見つかった…

ただ、冥王星の対流については、
窒素の氷の層の厚さについては意見が分かれています。

その正解が明らかになれば、
冥王星の鼓動するハートの成り立ちについても、
なんらかの事実が明らかになるはずです。

そして、このプロセスを理解できれば、
冥王星の内部で起きていることも明らかになるのかもしれません。


仕組みの解明へ向けて

“スプートニク平原”の表面が、
対流によって湧きあがってきた氷に覆われているように見えることと、
その仕組みを解明することとは、まったくの別問題になります。

現時点では、“スプートニク平原”は、底が平らな衝突盆地に、
冥王星全体の窒素が集まっている場所である可能性が高いこと、
窒素をこの場所に集めたのが気候の作用なのか、氷河の作用なのかは、
まだ分かりません。

冥王星のハートの謎を解き明かし、
太陽系に唯一の構造であるかどうかを決定するのには、
さらなる研究が必要なようです。

それに、冥王星の近くにあるエリスやマケマケなどの大きな天体にも、
似たような構造があるかもしれません。

いま分かっていることは、冥王星が予想以上に活動的な天体だということ。

同じくらいの大きさの他の順惑星にも、
少なくとも同レベルの活動があると想像するとワクワクしますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ フライバイから半年… でも“ニューホライズンズ”のデータ送信はまだまだ続く

フライバイから半年… でも“ニューホライズンズ”のデータ送信はまだまだ続く

2016年01月28日 | 冥王星の探査
探査機“ニューホライズンズ”の冥王星フライバイから半年が経過しました。

現在“ニューホライズンズ”は地球からどんどん遠ざかりながらも、
膨大なデータを少しずつ送信しているんですねー

今回は、氷火山とみられる地形“ライト山”の高解像度画像が公開されました。
“スプートニク平原(非公式名)”と名づけられた地域の南側にあるの“ライト山”。
この画像には約230キロの範囲がとらえられている。


火山は最近まで活動していた

NASAの探査機“ニューホライズンズ”は、
昨年7月14日の冥王星フライバイ時に、冥王星表面を複数のカメラで撮影していました。

今回公開された高解像度画像は、
約4万8000キロの距離から、
  “LORRI”カメラで撮影されたデータ(1ピクセルあたり450メートル)と、
約3万4000キロの距離から、
  RalphとMVICカメラで撮影されたデータ(1ピクセルあたり650メートル)を
  合成して作られたもの。

この氷火山と思われる地形は、
ライト兄弟にちなんで“ライト山(非公式)”と呼ばれています。

高さは4キロ、幅は約150キロと巨大なもので、
もし本当に火山なら、太陽系外縁部に見つかったものとしては最大になるんですねー

研究者たちは、赤い物質が画像中にまばらに分布している様子に注目していて、
「なぜ、もっと広範囲に広がっていないのか?」という謎を解き明かそうとしています。

また不思議なことに、
“ライト山”には衝突クレーターがたった1つしか見当たりませんでした。

これは表面が比較的新しいことを意味していて、
地質学的な意味で、最近まで火山活動があったことを意味しているそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 冥王星に氷の火山を発見! 最近まで活動していたそうですよ

冥王星に氷の火山を発見! 最近まで活動していたそうですよ

2015年11月17日 | 冥王星の探査
早いもので、探査機“ニューホライズンズ”の冥王星フライバイから4か月が過ぎました。

当時観測されたデータは、
現在、“ニューホライズンズ”から次々に送られてきています。

そのデータからは、巨大な氷の火山と思われる地形が見つかったり、
小さい衛星の奇妙な振る舞いが明らかになっているんですねー


氷の火山は最近まで活動していた

“ニューホライズンズ”による冥王星の観測データから、
冥王星の2か所で、火山のように盛り上がった地形が見つかりました。

この氷の火山が見つかったのは、
“スプートニク平原(非公式名)”と名づけられた地域の南側で、
直径は数十キロ、高さは5キロ前後。

火山と言っても、火を噴いているわけではなく、
火口からは水の氷や窒素、アンモニア、メタンなどの混合物が噴出した「氷の火山」なんですねー

どちらも、おそらく地質学的な意味で、最近まで活動していたと考えられています。
氷の火山と思われる山の1つ“ライト山(非公式名)”

氷の火山というのは、まだ仮説に過ぎないのですが、
もし本当にそうなら、頂上にあるくぼみは地下から噴出した物質が崩れてできたもののはずです。

一風変わった山の側面にある輪状地形は、ある種の火山流によるものかもしれません。
でも、なぜ輪状なのか、一体どんな物質で構成されているのかは不明なんですね。
氷の火山と思われる山の立体画像(名称は非公式名)


40億年以上も地質学的に活発だった

驚くべき発見は他にもありました。

それは、冥王星の地質学的な年代が、
古いものから中期、比較的若いものと広範囲に及んでいること。

天体の表面の年代決定に用いられるクレーター計数から、
冥王星には約40億年前という、太陽系の惑星形成直後にまでさかのぼる、
古い表面の存在が示されています。

その一方で、全くクレーターの見られない広大な領域“スプートニク平原”は、
過去1000万年以内に形成されたと考えられています。
1000個以上のクレーター(黄色)の位置を示した図。
両サイドの赤紫色っぽい領域は地図未作成領域

さらに、最新のクレーター計数データによって、
冥王星上に中期に当たる年代の地形も発見されることに…

このことは、冥王星は40億年以上の長い歴史を通じて、
地質学的に活発だったということを意味しているんですねー


疑問はカイパーベルト天体の形成

クレーター計数は、
カイパーベルト天体の成り立ちにも影響を与えることになります。

太陽系の外縁部で無数の天体が密集するカイパーベルトにあるのが冥王星です。

そして、この冥王星と衛星カロンには小さなクレーターが少なすぎるので、
カイパーベルトには、予測よりも小さな天体が少ないということになります。

でも、そうすると
「幅1キロ程度の小天体が集まってカイパーベルト天体が形成された」
とする、長年のモデルに疑問が生じることになるんですねー

そして、幅数十キロのカイパーベルト天体は直接形成された、
というモデルが支持されることになります。

多くのカイパーベルト天体が、現在の大きさで誕生したのかもしれないというのは、
研究者にとって実にエキサイティングことになります。

“ニューホライズンズ”の次のターゲットになる、
幅40~50キロのカイパーベルト天体“2014 MU69”の探査によって、
ひょっとすると太陽系を形成する元になった原初の天体の姿が、
初めて見えるくるのかもしれませんね。


冥王星の4衛星

“ニューホライズンズ”のミッションは、
魅力的な冥王星の衛星と、その変わった特徴にも光を当てています。

たとえば、月を含め太陽系のほぼすべての衛星は、
自転と公転が同期しています。

でも、カロンを除いた冥王星の4つの小衛星は、
自転の方がはるかに速いことが分かったんですねー

最も外側の衛星ヒドラは、冥王星の周りを1回公転する間に89回も自転していました。
ひょっとすると、カロンの影響で小衛星の自転速度が変化したのかもしれません。

さらに、4衛星のうちいくつかが、2つ以上の天体の合体から生まれたことも、
データから示されました。

このことにより冥王星は、過去にもっと多くの衛星を従えていたことが考えられ、
大きな衝突の結果、カロンが作られたのかもしれません。


冥王星の大気

“ニューホライズンズ”による新しいデータからは、
冥王星の上層大気が著しく冷たくコンパクトで、
大気が宇宙空間へ逃げ出す割合は、これまでの説より3桁以上も低いことも分かりました

冥王星からの大気散逸プロセスは、彗星に似ていると考えられてきましたが、
どうやら、地球や火星で起こっているメカニズムと同じようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 巨大な割れ目と氷火山活動… 衛星カロンには激動の歴史があった。

冥王星の空は青かった!

2015年10月27日 | 冥王星の探査
NASAの探査機“ニューホライズンズ”による観測で、
青く美しい冥王星の大気のもやがとらえられました。

もやの粒子自体の色はおそらく灰色や赤。
でも、その粒子が青い光を散乱し、この美しい光景として見えているんですねー

まさか、カイパーベルトに青い空を持つ天体が存在するとは、
思いもよらないことでした。
青いもやに包まれた冥王星

地球では窒素分子が太陽光を散乱し、そのおかげで空が青く見えます。
では、冥王星の場合はどうなのでしょうか?

冥王星では、窒素分子より大きい“ソリン”と呼ばれる粒子が、
その役割を果たしているようです。


“ソリン”が表面を赤くする

“ソリン”の粒子は、高度の高い大気中で作られると考えられています。

そこでは太陽光の紫外線が窒素やメタンの分子を分解・電離し、
より複雑なイオンができていきます。

初めて土星の衛星タイタンの上層大気中で確認されたプロセスと同様に、
イオンは再結合して、さらに複雑な高分子となり、それらが結合して小さな粒子になります。

その後、粒子に霜がつき、大気中から冥王星表面へと降って、
冥王星の表面が赤っぽくなることになるようです。


水の氷が露出

また“ニューホライズンズ”は、
冥王星の表面に、水の氷が露出した領域を検出しています。

領域は小さいのですが、数多く見つかっているようです。
検出された水の氷(青い部分)

冥王星の表面は別の物質の氷で覆われているので、
広い範囲にわたって水の氷の露出は見られませんでした。

なぜ、今回の場所で水の氷が露出していて、他の場所でしていないのか?
が、今後解決すべき課題になるようです。

さらに興味深いことは、
水の氷のスペクトルがはっきりと見られた領域が、
冥王星の明るい赤い領域と対応していること。

ただ、氷はひじょうに赤いのですが、
赤っぽい“ソリン”の色素との関係は、まだ分かっていないそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 【冥王星探査】“ニューホライズンズ”が最接近のデータを本格送信