宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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太陽系誕生時に元素を供給した超新星はいつ爆発したのか? 放射性元素“ルテニウム98”を調べれば分かるかも

2018年09月15日 | 宇宙 space
超新星爆発で起こる原子核反応のモデル計算から、反電子ニュートリノが放射性元素“テクネチウム98”を生成することが導き出されたんですねー

この元素の痕跡を隕石中に探せば、太陽系が形成される前に起こった超新星爆発の年代が分かるようですよ。


反電子ニュートリノからできる放射性元素“テクネチウム98”

太陽の8倍以上の質量で生まれる恒星は、一生の最後に超新星爆発を起こします。

その際、中心部から大量のニュートリノが放出され、既に存在している原子核と核反応を起こして新たな核種を生成するんですねー

ただ、6種類あるニュートリノのうち、5種類によって生成される原子核は特定されているのですが、“反電子ニュートリノ”が関与してできる原子核はまだ知られていません。

今回の研究で分かったのは、超新星爆発の反電子ニュートリノから放射性元素“テクネチウム98(98Tc)”が生成されること。
  原子核の詳細な構造の計算と超新星爆発のモデルから、
  量子科学技術研究開発機構と国立天文台の研究チームが見つけいる。


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超新星爆発ニュートリノによる元素生成(イメージ図)。

“テクネチウム98”は420万年ほどで“ルテニウム98”へ

“テクネチウム98”は420万年ほどの半減期で“ルテニウム98(98Ru)”に崩壊してしまいます。
なので、太陽系形成時に存在していたとしても46億年の間に無くなってしまい、天然には存在できません。

でも、太陽系形成時に“テクネチウム98”が存在していた場合には、始原的隕石中に“ルテニウム98”が含まれているはず。この“ルテニウム98”の量を計算すれば太陽系形成時の“テクネチウム98”の量が分かるんですねー
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超新星爆発で生成された物資の一部が原始太陽系に混ざる(イメージ図)。
そして研究の結果示されたのは、超新星爆発が太陽系形成の直前に起こった場合は、隕石に残される“ルテニウム98”の量は測定可能なほど多くなることでした。

今後、隕石の研究が進めば、“ルテニウム98”の量の測定をもとに、太陽系が誕生した時に元素を供給した超新星が太陽系形成時代よりもどれぐらい前に爆発したかを知ることもできます。
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超新星ニュートリノが生成する放射性元素で測る太陽系の時間。
さらに、“ルテニウム98”の量から“テクネチウム98の量を見積もれば、超新星爆発で放出された反電子ニュートリノの平均エネルギーも決定できます。

このことは、超新星爆発のメカニズムの理解や“ニュートリノ振動”といった物理現象の理解にもつながるんですねー。

今回の結果で、超新星ニュートリノの正確なエネルギー分布を知る手がかりが得られました。

ハイパーカミオカンデなどの将来のニュートリノ観測器によって超新星ニュートリノが測定できとき、超新星のさらなる解明に今回の研究が役立つといいですね。


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海に覆われた陸地が無い惑星にも生命は誕生するのかも

2018年09月09日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
惑星が深い海に覆われていると生命が生まれそうな気がしますよね。

でも最近の研究では、海と陸の比が地球に近い必要性が指摘されているんですねー
深い海で覆われた惑星だと、気候が安定せず、生命の進化に適さないからです。

この見方に反するのが今回の研究です。
系外惑星の進化のシミュレーション研究から、深い海に覆われた惑星でも生命が育まれる可能性をみつけたようです。


安定した気候が生命を育む条件

天体望遠鏡の能力向上に伴い、太陽系の外にも惑星が続々と発見されています。

さらに、どうやって生命が他の惑星上で生き延びられるかを探る新たな研究も始まっています。

生命の進化には長い年月が必要なんですが、その舞台となる惑星上の明るさや温度は主星の年齢に伴って変化してしまいます。

なので、惑星に生命が育まれる条件として、水の存在に加えて、ある程度の期間気候を安定させる仕組みがあるかどうかがポイントになるんですねー

地球を例に取ると、温室効果ガスをミネラルに還元して冷えることや、火山が熱を放出して暖かくなるといったことが気候を安定させる仕組みになります。


海に覆われた陸地が無い惑星では

いっぽうで深い海に覆われた惑星では、こうした地球のような仕組みは働きません…
では、他に生命に適した環境が維持される仕組みは無いのでしょうか?

その答えを探る研究を進めているのが、ペンシルバニア州立大学とシカゴ大学の研究チームです。

この研究では、ランダムに形成された数千個の惑星の進化シミュレーションを行い、数十億年にわたる気候の変化をたどっています。

すると、意外なことに、多くの惑星で十億年以上にわたって気候の安定が見られたんですねー

それらの幸運な惑星は、主星から程よい距離にあり、程よい量の炭素が存在し、地殻から大量のミネラル分や元素が海に溶け込むことが無いので、大気中の炭素が吸収されずに済みます。

最初から十分に水があり、炭素は大気と海の間でのみ循環。
適度な濃度なら、これで十分安定した気候を保てるようです。

原則として、惑星に与えられる時間は、その形成初期において二酸化炭素がどのように海洋、大気、岩石に配分されていたかに依存します。

地球のような地殻を介した循環システムなしでも、生命に適した環境を維持する仕組みがあるんですね。


太陽よりも暗い星にも可能性はある

今回のシミュレーションでは、主星は太陽のような星という設定で行われています。

でも、太陽よりも暗く軽い“赤色矮星”にとっても希望を持てる結果なんですねー

それは、“赤色矮星”は太陽に比べてはるかにゆっくりと明るくなっていく分、生命が芽吹くのに必要な時間が更にあると考えられているからです。

理論的には、“赤色矮星”を巡る惑星に必要となるのは、安定した主星からの光だけだそうですよ。
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赤色矮星とその周りを回る惑星(イメージ図)。
赤色矮星は、太陽よりも質量が小さく低温なので、
太陽のように黄色い光ではなく赤っぽい色の光を放っている。


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遠くを探さなくても近くにあった! 天の川銀河を公転する宇宙最古の銀河

2018年09月07日 | 宇宙のはじまり?
天の川銀河には30個ほどの小さな銀河が付随しています。
この銀河は“衛星銀河”といい、天の川銀河の周りを公転しているんですねー

今回明らかになったのは、その“衛星銀河”が生まれた時期でした。
なんと一部の“衛星銀河”は、宇宙がわずか1億歳だったころに形成されたそうです。

このことが本当なら、私たちの天の川銀河の周囲に宇宙最古の銀河が存在することになりますね。


宇宙の暗黒時代に作られた銀河

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームにより、天の川銀河の周囲を公転する小さい衛星銀河のうちいくつかは、宇宙の歴史の中で最も初期のころに形成された、宇宙最古の銀河であることが分かってきました。

研究チームは以前の研究から銀河形成をモデル化。
すると、“宇宙の再電離”と呼ばれる物理過程の影響が、矮小銀河の“光度関数”に現れることに気付きます。
  “光度関数”は、どの明るさの銀河がどれだけの頻度で存在するかを表す関数。

  初検出! 宇宙最初の星が残した痕跡
    

そして明らかになったのが、この光度関数の形が、谷で区切られた非常に暗い矮小銀河の山と、明るい矮小銀河の山のようになることでした。
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コンピュータ・シミュレーションで再現された衛星銀河の分布。
青い円内は明るめの銀河、白い円内は超低光度の銀河。
このモデルの予測と、天の川銀河などの衛星銀河の観測から得られた光度関数とは、よく一致していたんですねー

この理論通りに矮小銀河の形成が起こったとすると、非常に暗い矮小銀河は“宇宙の暗黒時代”の終わりごろ、宇宙誕生から1億年後くらいにあたる時期に作られたと考えられ、それよりは明るい矮小銀河はさらに数億年後の時期に作られたものと考えられます。

  生まれたばかりの宇宙は、
  電子や陽子、ニュートリノが密集して飛び交う高温のスープのような場所で、
  電離した状態にありました。
  でも、宇宙が膨張し冷えるにしたがって、
  電子と陽子は結びつき電気的に中性な水素が作られます。
  この時代には、光を放つ天体はまだ生まれていなかったので“宇宙の暗黒時代”と呼ばれています。
  その後、宇宙で初めて生まれた星や銀河が放つ紫外線により、水素が再び電離されることに…
  この現象を“宇宙の再電離”といいます。
  宇宙に広がっていた中性水素の“霧”が電離されて晴れたことにより、
  空間を通り抜けられるようになった“宇宙最初の光”が、
  現在の空に広がる“宇宙マイクロ波背景放射”として観測されています。


天の川銀河の衛星銀河だと、“Segue-1”、“うしかい座矮小銀河”、“きょしちょう座矮小銀河II”、“おおぐま座矮小銀河”といった矮小銀河が非常に暗いので、先の年代に作られたことになります。

つまり、天の川銀河のすぐそばに、宇宙の歴史の中で最初期に作られた矮小銀河が存在しているということになるんですねー

っと言うことは、天の川銀河の周りに存在する最小クラスの矮小銀河を観測すれば、初期宇宙の理解に役立つことになりますね。


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太陽系で最多記録! なんと木星には衛星が79個もあった

2018年09月02日 | 木星の探査
太陽系の巨大ガス惑星“木星”に新しい衛星が10個も発見されたんですねー

興味深いのが、新たに見つかった衛星のうち1つが公転する軌道。

この衛星は、木星の自転の向きと反対方向に公転する逆行衛星群の軌道付近を順行しているので、いずれ衝突してしまう可能性があるそうですよ。


探していたのは太陽系第9惑星だった

木星に10個の衛星を発見したのは、カーネギー科学財団の研究チームでした。
  研究所のリリースでは「12個の新衛生」となっているが、
  小惑星センターでは10個のみが新天体としている(おそらく2個は再発見)。
  いずれにせよ、79個という総数は同じ。


これで木星が持っている衛星の総数はなんと79個、太陽系の惑星の中で最多になるんですねー

もともと研究チームが探していたのは、冥王星よりも遥か遠くを公転するといわれている太陽系第9惑星“惑星X”。
  太陽系に9番目の惑星はある? 探査範囲が絞り込まれたそうです。
    

南米チリのセロ・トロロ汎米天文台のブランコ望遠鏡などによる観測中に、たまたま観測エリアに木星が入ってきたことで衛星を発見。

その後に行われたチリ・ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡や、ハワイのすばる望遠鏡・ジェミニ望遠鏡などによる追加の観測を経て軌道が計算され、これら10個の新天体が確かに木星の周りを公転する衛星であることが確認されます。
  直径は1~3キロほどあるそうで、木星の衛星だと確認するのに1年もの時間がかかったそうです。


衛星は惑星が作られてしばらくしてから作られた

新しい10個の衛星のうち7個は、木星から約2000万キロ以上も離れたところを約1.5~2年の周期で公転していて、いずれも、木星の自転の向きと反対方向に公転する逆行衛星でした。

これまで知られている衛星も含めて、これら逆行衛星は、かつて複数の大きな天体だったものが小惑星や彗星と衝突して形成されたものと考えらえています。

残る3個のうち2個は、木星の自転と同じ向きに公転する順行衛星で、木星の近くを1年以内で公転。
この付近に軌道を持つ衛星群は、すべて軌道の距離や傾斜角が似ているので、大きな天体が崩壊した破片が衛星になったものと考えられています。

最後に残ったのが“S/2016 J 2”と符号がつけられた衛星。
直径が1キロ以下で、これまでに見つかっている木星の衛星中では最小とみられています。
ただ、何といっても奇妙なのはその軌道なんですねー
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ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡による衛星“S/2016 J 2”。
背景の星に対して動いていることが分かる。
“S/2016 J 2”は、前述の7個の衛星と同じような距離を、木星の自転と同じ方向に約1.5年周期で公転しています。

つなり、逆行衛星が多数存在している領域を、他の衛星とは逆に順行しているんですねー

なので、この風変わりな軌道を持つ衛星と逆行衛星は正面衝突してしまう可能性も…
そもそも、この小さい衛星自身が、過去の正面衝突で残った最後の残骸なのかもしれません。
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木星の衛星の軌道。内側から順に(紫)ガリレオ衛星、(青)内部群に属する順行衛星、
(赤)外部逆行群に属する衛星、(緑)逆行衛星群の軌道を横切る軌道を持つ順行衛星。
木星が誕生した頃にこれらの小衛星も作られたと考えると、生まれたばかりの惑星の周りに残っていたガスや塵の影響で、小衛星は木星に引きずり込まれてしまったはずです。

これらの衛星が残っているということは、実際には木星が落ち着いた後に衛星が作られたことになります。

そう、今回の発見が意味しているのは、太陽系の中で惑星が形成され、その後に惑星の周りに衛星が形成されたこと。
そして、衛星同士の衝突が惑星形成のかなり後に発生したことです。

この後、衛星の破片がどうなったのかというと、多くは木星本体もしくは、他の大きな衛星に飲み込まれたそうですよ。


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