
(塩次伸二さんに)ギターに関してはあんまり訊かなかったけれど、それまでカントリー・ブルーズをやっていて、例えばセブンス(コード)は判っていたわけ。でもそうではない響きのコードがあると。それで伸ちゃんに訊いてみたんだ。「伸ちゃん、言ってみればジャズみたいな響きのするコードって何かな?」「ああ、もしかしたらこれか?」って押さえたのが、ナインスというコードでね。木村君もそうなんだけど、ギターを弾く人間からすると、ナインスを知ったかどうかで世界が変わるわけ。(中略)色合いが全然変わるわけ。ドミソなんだけど、それにナインスが入ることで全然違うスモーキーな音になったりする。ということは、セブンス、ナインスのその先もあるんじゃないかということのきっかけになるわけ。それは塩次さんから教えてもらって。だから自分で好きなコードを探すようにもなったし…大阪の東住吉から太平洋ぐらいに世界が変わる感じ。
--(笑)広がりましたねえ。
そのきっかけによってね。だから伸ちゃんは師匠という感じだったけれども「これは俺の道だからな、勘太郎は勘太郎の道を行かんと意味ないで」とは早くから言われたからね。それは確かにそうだわな、と。伸ちゃんみたいに弾けるわけもなく、弾きたくもなく、俺は自分なりに弾く。それを大きな意味で教えてくれた先輩だね。
生涯一ミュージシャンって言い方はカッコいいかもしれないけど、この道を志したからには「ギタリストというよりも、ミュージシャンにならんとあかんで」と言っていたのは塩次伸二です…地方の秀才が言いそうなことじゃないか(笑)。
(中洲通信2009年6月号 特集内田勘太郎 グッバイ・クロスロードより)