徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

永遠に続くオフ会/安田浩一「ネットと愛国」

2013-04-07 18:59:17 | Books


安田浩一『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』
昨年10月にリリースされ、9日に受賞作が決定する第44回大宅壮一ノンフィクション賞候補作にもなっている作品なので(候補作が原発関係と半島関連作品ばかりというのがいかにも2012年なんだが…)、今更取り上げるのもアレなんだが、やはりここ2、3ヶ月のレイシストとの“闘争”を考える上では本書抜きには語れない、ネトウヨたちの物語。
その感情論を出ない思想はまったく容認することはできないし、そもそも論外なのだけれども、実は彼らに共感しない部分もないわけではない。それは彼らのネットを介したアプローチで、その方法論というのは、今多くの人々が共有しているものだ。掲示板、SNSは、あくまでも“道具”であり、その道具を介して情報の拡散と行動の輪が拡がっていく--その方法論を信奉するスタンスは理解できなくもない。というか、3.11以降の反原発運動の輪も同じようなアプローチで拡がったのは間違いない。
そして彼らは町に出た。オレたちも同じように町を歩いた。
何の違いがあるだろうか。その“新しい社会参加”に違いはない。

しかし実際に行動すればするほど、ネットを介して情報や感情を共有すればするほど、ヘサヨ連中に辟易しながら「個人」を自覚する他なかったオレたちに対して、彼らは寄り集まり、リアル(もどき)なフィクション(要するに“ネタ”だ)を共有することで強固な共同体を作り上げていく。それはまるで永遠に続くような「オフ会」でしかないと思うのだが(本書で取り上げられているフジデモの件など、まさにネタを面白がるだけの巨大オフ会以外の何物でもない)、決して満たされることのない個人の欲求不満の受け皿としての組織を、彼らは次々と妄想敵を作ることで維持し続けていく。そして今、自分たちに対してのカウンター行動が激しくなればなるほど、彼らはより強固に、そして頑迷になっていく。
ウォッチャーやカウンターは以前から行動していたものの、レイシストしばき隊の登場以来、ここ数ヶ月彼らは激しくリアルと出会いつつある。
今なお同時進行のノンフィクションである。リリースされているKindle版はわずか250円なので是非読んでいただきたいと思う。