検察庁法改正案が大きな議論を呼んでいます。
総理大臣が検事の生殺与奪を握ることで、恣意的な運用を招くことはないのか、という点と、そもそもいまの時点で恣意的な運用が進んでいるのではないかということで、大きな問題になりました。多くの著名人が懸念の声をあげてもいます。「どのような政党を支持するのか、どのような政策に賛同するのかという以前の問題で、根本のルールを揺るがしかねないアクションだと感じています。」といきものがかりの水野良樹さんがツイートして話題になってましたが、まさにこれは、もう右とか左とか関係なく、組織統治のあり方として問題があるといわざるをえないでしょう。
現時点がどうかはひとまず置いておくとしても、将来それを悪用する人物が出てこないかという懸念があります。その未来のことについて「そんなことはありえない」と断言するのは、無責任というものです。検事、弁護士、裁判官と法曹に携わる三職種のすべてから反対の声が出るのも、当然でしょう。
この批判の高まりを受けて、政府与党は、ひとまず先週末の衆院採決を見送りました。そして、今日の報道によれば、今国会での成立を断念したということです。
さすがに、このコロナ禍の最中に、反対意見が圧倒的に多い法案を強行採決するのははばかられるということでしょうか。さらにいうと、今後日本を襲うであろう経済的苦境を考えれば、ここで政治資源を大きく消費してしまうともう回復が難しくなるということも頭にあるかもしれません。
いずれにせよ、世論の批判が高まることによって問題のある法案が葬られるというのは、よいことです。
芸能人が声をあげたことについて、裏に黒幕がいるという人もいますが、そうではないでしょう。これまでにも、普段だったら政治的な問題に口出ししないであろうような人たちが、相次いで安倍政権に抗議の声をあげてきました。それだけ、いまの政権で行われていることが目に余る、だから黙っていられないということなんです。今回の検察庁法改正案は、いくらなんでもそれはおかしいだろうというものだった。だから、みな一斉に声をあげたということだと思います。
ここはきっちり、今国会での成立見送りといわずに、廃案にまでもっていきたいところです。