日本のコロナ対策は人口あたりの死者数でみればうまくいっている――
そういう意見を、よく耳にします。
検査が十分に行われていないことや、政府の場当たり的な対応などが批判されているわけですが、そうした批判に対する反論として、よくいわれているようです。
しかし、本当にそうなんでしょうか。
欧米などのひどい状況に陥っている国々と比較すればたしかにそうですが、それはあくまでも状況が悪いところと比べたらの話で、世界的に見ればそうでもないんじゃないでしょうか。
「死者数を人口比でみたら……」という類の意見を見聞きするたびに、私は、それは極端に死者数が多いところと比べてるからそう見えるだけなんじゃないのか、とかねてから疑っていました。
そこで、今回ちょっと計算してその点を確認してみました。
JX通信のサイトで、世界各国の感染者、死者数の集計が掲載されています。その5月24日午前零時時点での数字をもとにして、各国の人口あたりの死者数が日本と比べて多いかどうかを計算してみました。
すると、およそ200の国と地域があるなかで、日本より人口あたりの死者が少ないところは、112ありました。つまり、日本は113番目ということになります。(総数をおよそ200としているのは、「国や地域」としてカウントしていいかどうか判断に迷うものもあるため)
中の下といったところで、そううまくいっているともいえないでしょう。
私が個人的に計算した結果なので計算間違いや集計ミスをしている可能性もありますが……そう大きな間違いはないと思います。
数字を見比べていると、日本よりも人口あたりの死者が多い国は、ほとんど欧米、中東、中南米にかぎられていることに気づきます。気候風土なのか、文化、生活習慣の問題なのかはわかりませんが、人口あたりの死者数が多い国は、これらの地域に集中しているので、当然といえば当然です。
そして、そこから逆にいうと、それらの状況が悪化している地域以外では、日本はかなり悪い部類に属するということになります。そもそも、パンデミックの震源地である中国よりも人口あたりの死者数が多いという時点で「うまく対応できている」とはいえないでしょう。
以上のように考えてみると、「日本は人口あたりの死者数でみたら新型コロナ対策に成功している」というのはかなり疑わしく思えます。
これはもちろん、日本を貶めようとしていっているわけではありません。
ただ、本当はそんなにうまくいっているわけでもないのにうまくいっていると自画自賛していたら、それは大いに問題があるでしょう。
このブログでなんどか書いてきましたが、日本の新型肺炎対応は、とにかくあらゆる局面で後手にまわってきました。あきらかに政府は当初事態を甘くみていて、それゆえに水際対策もクラスター対策も失敗したのです。それがきっちり数字に表れていて、200か国・地域中113番目ということなんだと思います。日本のコロナ対策は、決してうまくいってはいない、むしろどちらかといえば失敗の部類に入る――その現状認識をまず持っておかないと、今後さらなる事態の悪化をまねくおそれがあるでしょう。
追記:こういう比較に実際どれほど意味があるのかという疑問もあるでしょう。人口が数十万人で死者が数人みたいな国は結構あって、そういったケースはそもそも人口比で比較するのが適切ではありません。それに、ちゃんと検査してるのか疑わしい国もあり、すべての国を一律に人口比計算で比較することはナンセンスかもしれません。ただ、そうであっても、大まかな傾向としてここで書いたことは成り立つんじゃないかと思います。