今回は音楽記事です。
ジョージ・ハリスンからエリック・クラプトンときましたが……その流れで、今回とりあげるのはデレク・アンド・ザ・ドミノスの「いとしのレイラ」(原題:Layla
)です。
ジョージ・ハリスンとエリック・クラプトンについて語るなら、この曲ははずせません。
その筋の人にとっては周知のとおり、クラプトンがハリスンの妻だったパティ・ボイドへの恋慕を歌った歌です。
クラプトンとハリスンは親友だったわけですが、クラプトンはその親友の妻であるパティ・ボイドに恋心を抱いてしまいます。未知ならぬ恋。愛か、友情か――その苦悩を歌にしたのが、「いとしのレイラ」なのです。
デレク&ザ・ドミノスは、クラプトンがそのキャリアにおいて結成したグループの一つで、短期間に終わったバンドですが、「いとしのレイラ」はクラプトンを代表する曲の一つになりました。
いろいろな経過をすっとばして結果だけを書くと、パティはジョージ・ハリスンと離婚し、実際にクラプトンは彼女と結婚します。
元夫であるハリスンも、その結婚を祝福しました。
そして、パティとの幸福な生活は、クラプトンに
Wonderful Tonight という名曲をつくらせます。
しかし……そんな二人のしあわせも長くは続かず、10年を経ずに離婚してしまうのです。
まあ、そんなもんでしょう。
禁断の愛であるがゆえに燃え上がるという部分もあり、また、思慕の対象を過度に理想化してしまうという“ザルツブルグの小枝”効果もあったかもしれません。
一連の経緯にしても、あらすじだけを聞いていると純愛物語のようでもありますが、現実にはそんな話でもないようです。
パティ・ボイドはたぶんに妖婦的なところがある人らしく、かのミック・ジャガーやジョン・レノンも思いを寄せていたといいます。そんな彼女がジョージ・ハリスンと離婚した理由も、ロン・ウッドとの不倫ということで……もうドロドロです。
しかし、そういったドロドロは別として、レイラは名曲です。
あの鮮烈なリフ。
数十年を経ても時折CMなどで聴かれる伝説のリフです。
さらに、オールマンブラザーズバンドのデュアン・オールマンも参加し、スライドギターを聴かせます。このヴァーチュオーゾの力もあって、「いとしのレイラ」はロック史上に残る屈指の名曲となりました。
手の届かないものへの憧れというのは、アーティストにすぐれた作品を創出させる動機の一つなんでしょう。
たとえそれが幻想にすぎないとしても――というか、まあたいていの場合は幻想だと思うんですが――その幻想の部分にこそ、アートがあるということだと思います。