今回は、音楽記事です。
このカテゴリーでは、以前マディ・ウォーターズの記事を書きました。
ジミヘンからマディ・ウォーターズ……とブルースの方向に話が流れてきたので、このあたりで、伝説的なブルースマンであるロバート・ジョンソンについて書こうと思います。
ロバート・ジョンソンといえば、十字路で悪魔と取引してギターの技術を手に入れたという逸話で知られています。
直接その件について歌ってるわけではありませんが、代表曲であるCross Road Blues (「四辻ブルース」という邦題も一応ある)という歌のタイトルは意味深です。
Robert Johnson - Robert Johnson's Cross Road Blues
かのエリック・クラプトンも、ロバート・ジョンソンに多大な影響を受けて、あの Crossroads をやったわけです。
クラプトンは、ずっと後になって Me & Mr. Johnson というアルバムを出していますが、このミスター・ジョンソンというのがロバート・ジョンソンのことであるのはいうまでもありません。言い方が民明書房みたいになってますが、事実です。下のアルバムジャケットで、奥の額縁に収まっているのがロバート・ジョンソンということでしょう。
ところで、ロバート・ジョンソンが悪魔と取引をしたという有名な逸話はどこから生まれたのか……
一つには、彼にまつわる神秘的な、あるいは不気味なエピソードによるようです。
たとえば、ロバート・ジョンソンの師匠アイク・ジンナーマンは、しばしば墓場でギターを弾いていたとか。
もともとあまりギターが得意でなかったロバートが、そのジンナーマンのもとで修業してきたところ、驚くほどのテクニックを身につけていた。悪魔と取引云々というのは、そのあたりから出てきた話かもしれません。
墓場でギターを弾いていたというのはたしかに不気味ですが……しかしこれは、単に墓場がひっそりとしていて音楽の練習に適していたからだといわれています。騒音がなく、また自分の弾くギターがご近所迷惑にならないように、という配慮によるものだと……そう聞くと、印象はずいぶん変わるでしょう。幽霊の正体見たり枯れ尾花的な話です。
また、その当時においては、黒人音楽は宗教的な内容を歌うのが普通であり、宗教的な内容を含んでいない歌は、それだけで不敬とみなされたといいます。
こうしたことがあいまって、悪魔という印象が作り上げられたのではないか。
27歳での早すぎる死、そしてその死因にまつわる謎(一説には、不倫の報復として毒殺された)もまた、伝説に一役買っているでしょうか。
また、その卓越したテクニックのゆえに悪魔と呼ばれたというのも、一般的にいわれるところです。
たとえばパガニーニも悪魔と取引をしたという逸話があって、ロバート・ジョンソンの場合もそのバリエーションではないかと……
しかし私は、どちらかといえば、エルヴィス・プレスリーやバディ・ホリーが悪魔と呼ばれたことに近いんじゃないかと思ってます。
以前も書きましたが、ロックンロール草創期のレジェンドたちは、出てきた当初は悪魔扱いされていました。
それは、旧来の伝統に従わないということによるものでしょう。
これまでの自分たちの価値観を破壊されることへのおそれが、“悪魔”というイメージに結実した……そんな側面もあると思います。
たとえば、ブルースでよく使われるⅠ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅰ→Ⅴ→Ⅳ→Ⅰ→Ⅴというコード進行がありますが、この中のⅤ→Ⅳという進行は、西洋音楽の伝統では間違いとされていたといいます。伝統的な音楽理論では禁じられていることが、ブルースではスタンダードなのです。
そうでなくとも、ブルースの音使いは、西洋の伝統において正統とされていた音楽からはだいぶかけ離れています。
ブルーノートと呼ばれる音は、現代音楽で一般的に使われる十二平均律の音とは微妙にずれていて、楽譜上に正確に記すことは不可能といわれます。
しかし、ではそれが不快な音なのかというと、これがそうとも言い切れない。
ある研究によれば、ロバート・ジョンソンの歌声は、ルート音以外ことごとく平均律の音から外れていて、むしろ純正律に近いといいます。
音律の話をし始めると、もうそれだけで本が一冊書けてしまうぐらいの長い物語になってしまうんですが……かいつまんでいえば、純正律というのはルネサンス期のヨーロッパで作られた、音の響きを重視する音律です。
本来純正律のほうが響きはきれいなはずで、人によっては、楽器の伴奏なしで歌うと自然にその純正な音程を出してしまう場合もあるといいます。しかしながら、平均律になれた耳からは、それはどこかずれているようにも感じられるでしょう。なんかずれてる気がするけど、聞いていると、むしろきれいな響きのようでもある……そういう不思議な感覚も、“悪魔”とみなされる理由だったかもしれません。
さらに、 リズムの点に注目すると、ロバート・ジョンソンのギターの特徴として、ポリリズムを取り入れていることが指摘されます。
また、ロバート・ジョンソンには、今なお議論を巻き起こしている謎がいくつかあります。
たとえば、ロバート・ジョンソンの音源は、スピードが早められているといいます。
スピードを速めると、音の高さも高くなってしまう。つまり、わわわれがレコードで聴くことのできるロバート・ジョンソンの音源は、実際の彼のパフォーマンスとはかなり違ったものになっている可能性があります。
具体的には、20%ほど早められているということで……とすると、およそ短三度、つまり、カラオケのキー変更で+3にするぐらい変化することになります。これだけ高めると、だいぶ印象は変わるでしょう。そういわれて聞いてみると、たしかに残された音源から聞こえてくる彼の歌声は、不自然に高いような気もします。
ロック史をみれば、レコーディング後にテンポを変更された例というのはいくつもありますが、たいていは半音(カラオケの例でいえば、+1ぐらい)の範囲内におさまるもので、短三度ぶんも上げるのは異例です(ただし、部分的にオクターブ単位で操作することもある)。誰がなんの意図でそうしたのか、それとも間違いでそうなってしまったのかもわからないといいますが……そのあたりも、ロバート・ジョンソンにまつわる謎です。
そういったことまで考え始めると、ロバート・ジョンソンにまつわる謎は尽きません。そして、昔の音楽に関する研究がしばしばそうであるように、なかなか決定的な証拠は見つけにくい。そんなわけで、今なお侃々諤々の議論が続いているのです。いずれにせよ……彼が後のロックンロールに与えた多大な影響を鑑みれば、今後も、ロバート・ジョンソンは伝説であり続けるのは疑いないところでしょう。
「悪魔のトリル」も、
不思議ですね。
タルティーニの夢の中に、
悪魔が出て来て、
ヴァイオリンを弾くのですが
その美しさに目が覚めて、
すぐに楽譜に書き取り
誕生したという伝説の
「悪魔のトリル」
私は聴きはじめますと、
何度も何度も
取り憑かれたように
聴いてしまいます。
やはり「悪魔のトリル」
ヴァイオリン美魔力の
成せる業でしょうか。
真鹿子 拝
タルティーニも、悪魔と契約したという伝説があるんでしたね……
ロック方向に話を寄せると、パティ・スミスは、あらゆる芸術の源泉はサタンにあるといいました。
アーティストに降ってくるインスピレーションは、ある種、悪魔の誘惑のようなものということでしょうか……ツェッペリンの「聖なる館」で歌われる“サタンの娘”も、そういう存在かもしれません。
美の追求とは、そういう危険な営みでもあるんでしょう。
お返事ありがとうございます
アーティストに降ってくる
インスピレーションは、
ある種、悪魔の誘惑のような
もの。同感です!
私の場合は、
悪魔に対する固定観念も
なかなか拭えませんが、
わくわくドキドキの
危険伴う、未知なる
探検かもしれません。
レッドツェッペリン♪
深遠かつ新鮮
いまだ音響現在進行で
素敵ですね☆
お心遣い
ありがとうございます。
今宵もごゆっくり
お過ごしくださいませ✨
感謝一念
真鹿子 拝