ロック探偵のMY GENERATION

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『キングコングの逆襲』

2019-10-08 17:03:28 | 映画

今回は映画記事です。

 

前回は、ゴジラシリーズの時代をさかのぼって『ゴジラの息子』をとりあげましたが……ここでちょっと寄り道をして、同じ1967年に公開された『キングコングの逆襲』という映画について書こうと思います。

公開年が同じということと、次に記事を書く予定である『ゴジラ対メカゴジラ』にも、この『キングコングの逆襲』はつながってくるので、その伏線という意味合いも含めて……

 

 

 

公開は1967年。

 

東宝創立35周年記念作品です。

 

本多猪四郎監督がメガホンをとり、制作は田中友幸、音楽は伊福部昭、さらに宝田明主演……と、キャストやスタッフが第一作『ゴジラ』とかなり共通していますが、ここからも、東宝の気合の入りようが見て取れます。

 

ゴジラシリーズの第三作『キングコング対ゴジラ』に続くキングゴング第二弾の作品は、そのちょっと前から構想されていました。

当時キングコングの版権をもっていた映画会社から、日米合作で新たなキングコング物を作ろうという話が東宝にもちかけられていたそうです。

それで東宝側が脚本を用意しましたが……その企画はボツに。

理由は、アメリカ側がシナリオに難色を示したためとも、東宝が制作チームに本多猪四郎・円谷英二コンビを入れなかったことにアメリカ側が不満を持ったためともいいます。

真相はわかりませんが……結果として、この構想はゴジラシリーズに流用されて『南海の大決闘』になりました。

そう考えると、あの『南海の大決闘』でゴジラがみせる姿は納得のいく気がします。美女を襲わないゴジラや、南海の孤島という舞台設定も、そういうことなんでしょう。そんなボツ企画の後始末にゴジラ映画が使われるのか……という思いもなくはありません。

 

ともかく、キングコングがエビ怪獣と戦うという映画の企画は立ち消えとなりました。

 

しかし、合作の話自体がとん挫したわけではありません。その後、新たにアメリカ側から提示されたアイディアをとりこんで、キングコング映画は制作されました。それが、『キングコングの逆襲』なのです。

ストーリーは、正統派の冒険モノ。

 

北極で「エレメントX」なる物質を採掘しようとする東洋のどこかの国が、キングコングをさらってその採掘作業をさせようと画策。それを阻止しようとする国連チームとの戦いが描かれます。

 

この作品では、キングコングは洞窟の中に眠っていますが、これはおそらくもとになった脚本にもあったものでしょう。それが『南海の大決闘』にもそのまま使われて「洞窟で眠るゴジラ」になったものと思われます。

 

こういう演出部分だけでなく、キングコング作品からゴジラシリーズに流れ込んでいった要素は少なからずあります。

 

たとえば、『怪獣総進撃』に登場するゴロザウルスは、この『キングコングの逆襲』がデビュー作です。

ここでこの恐竜型怪獣が登場するのは、オリジナルの『キングコング』で展開される恐竜との戦いへのオマージュでしょう(大蛇とコングの戦いも、同趣旨と思われます)。

 

そして、メカニコング。

キングコングをモデルにしたロボットですが、これが後のメカゴジラのアイディアにもつながっています。

そう……ゴジラシリーズにおけるスター怪獣の一つであるメカゴジラは、じつはこのメカニコングがもとになっているのです。

 

スター怪獣の原案というだけあって、このメカニコングも、造形がじつに素晴らしい。

アメリカではキングコングのアニメ版をやっていて、そこに出てきた「ロボットコング」というキャラがもとになっているそうですが……実写版にこれがうまく映えました。このメカニコングが出来上がった時点で『キングコングの逆襲』は怪獣映画の傑作となることが約束されたといっても過言ではないでしょう。その造形や質感は、いま見てもなかなか味わい深いです。

 

一方、キングコングの造形も、『キングコング対ゴジラ』に比べると、だいぶいかつくなっています。

『キングコング対ゴジラ』に出てきたときにはだいぶスレンダーでなんだかやる気がなさそうにも見えましたが、本作ではやる気満々です。

 

人間側も、味付けの濃い登場人物がてんこ盛りです。

 

ドクター・フーなる怪しげな科学者、東洋系の美しい女スパイ。金髪美女にキングコング……もうおなかいっぱいです。

女スパイ「マダム・ピラニア」を演じる浜美枝さんは、ゴジラシリーズ最大のヒットである『キングコング対ゴジラ』にも登場した人。さらに、日本を舞台にした007シリーズの『007は二度死ぬ』でボンドガールをつとめたりもしていて、女工作員の役にはうってつけです。

 

これらアクの強いキャラたちが、最後はちゃんとみんな日本にやってきて、東京タワーを舞台にキングコングとメカニコングとの戦闘が繰り広げられます。これも、オリジナルコングのエンパイアステートビルをイメージしたものでしょうか。

 

最初に書いたとおり、1967年というのは、ゴジラシリーズのほうで『ゴジラの息子』が公開された年なわけなんですが……

比較してみると、断然『キングコングの逆襲』のほうが面白いと思います。

もしかしたら、東宝としてはこっちのほうが本命だったのではないかとさえ思えるほどです。

 

そして――やはり最初に書いたとおり――メカニコングというアイディアは、ゴジラのロボット版であるメカゴジラにつながっていきます。

 

 

ということで……次回の映画カテゴリー記事では、その『ゴジラ対メカゴジラ』について書こうと思います。



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