今回は、映画記事です。
先日、音楽記事として美空ひばりの「一本の鉛筆」を紹介しましたが……その記事で、作曲者として佐藤勝の名前が出てきました。
そこでも書いたように、佐藤勝はゴジラシリーズのいくつかの作品で音楽を担当しています。
正確にいうと、伊福部昭についで多く、4作。そのうち三作は、すでにこのブログのゴジラシリーズ記事で紹介してきました。『南海の大決闘』『ゴジラの息子』『ゴジラ対メカゴジラ』の三作です。佐藤勝の名前が出てきた縁で、今回は、残る一作である『ゴジラの逆襲』について書こうと思います。
「ゴジラの逆襲」 | 予告編 | ゴジラシリーズ 第2作目
公開は、1955年。
第一作『ゴジラ』のヒットを受けて制作された、シリーズ第二作です。
本来なら、『ゴジラの逆襲』はこのブログにおいてもっと前に紹介されるべきものでした。
amazonプライムにゴジラシリーズが追加されたことからゴジラシリーズを観始めたわけですが、最初に見たのがこの『ゴジラの逆襲』だったのです。
とりあえず見たことのないものを順番通りに見ようという方針をたて、第一作はずいぶん前に見たことがあったので、この第二作からということになったのでした。
しかし、これについてブログで書こうという気にはなりませんでした。
それはなぜかといえば、ひとえに、クオリティの問題です。
この映画、怪獣映画としての完成度はお世辞にも高いといえません。
前作にあった、核の恐怖の象徴といった意味も、ほとんど見出すことができません。いまこの映画を観て高く評価する人はほとんどいないでしょう。観客動員数こそシリーズ3位ではありますが、それはたぶんに前作によって醸成された期待値によるものと、まだ映画というものが娯楽の王様だった時代ゆえのことかと思われます。
この作品は、作品の内容そのものよりも、むしろその歴史的価値において評価されるべきものでしょうか。
歴史的な価値とは、“怪獣と怪獣の戦い”を描いたという点。
アンギラスという新たな怪獣が登場し、ゴジラとアンギラスの戦いが描かれます。この怪獣バトルという趣向が、その後の東宝特撮における一つの型となるわけです。
早回しにしたアクションは、見ようによっては滑稽でもありますが、これもまた過渡期の実験なのでしょう。
そして、舞台が大阪という点。
第一作が東京を舞台としていたのに対して、この作品では大阪が中心となっています。
これが、“ご当地”を出してくるという、ゴジラ作品のひな型の一つとなりました。
あとは、もう60年以上も前の映画ということで、その当時の世相や風俗を知る上での資料になるというところですね。
そして、そこに付されているのが、佐藤勝の音楽です。
佐藤勝は、この頃はまだ作曲家として駆け出しでした。
その佐藤にとって、本作は映画音楽家としての合否をはかる試験というような意味合いを持っていたといいます。しかも前作では、伊福部昭、がその後数十年にわたってゴジラ映画を彩り続けることになる名曲群を付している……これはなかなかプレッシャーのかかる状況だったはずです。しかし、その後の佐藤勝の業績を考えれば、結果として彼はこの試験をパスしたといえるでしょう。
サウンドのことに関しては、この映画にはもう一つ言及しておくべきポイントがあります。
それは、音声の加工技術。
『ゴジラの逆襲』におけるサウンドの中には、テープの回転数を変えたり、あるいは逆回転を使ったりという実験的な手法が使われているそうです。
逆回転といえば、後期ビートルズが実験的手法として用いた技法……十年以上も前にそういう手法を使っていたというのは、注目に値するかもしれません。
ただし、『ゴジラの逆襲』におけるそうした実験的手法は、正直なところわかりづらい。
そう指摘されて該当部分を聴いてみても、ううん、そうなのかあ……と思うぐらいのものです。ビートルズ以降の音楽で使われる逆再生のような浮遊感は出せていないでしょう。
そのあたりのことを含めて、『ゴジラの逆襲』を一言で言い表すならば“失敗した実験作”だと私は思ってます。
怪獣バトルのシーンで使われている早回しや、音声テープの回転をいじるなどの加工は、正直なところ演出としてうまくいっているとはいいがたい。前者はどこか滑稽に見えてしまうし、後者はきわめてわかりづらい。
しかし、実験としての意味はあったのだと思います。
失敗した実験があればこそ、新たな表現は洗練されていくわけで……実際のところ、この映画で見出されたいくつかの方法論は、その後のゴジラシリーズに活かされているでしょう。そういう意味では、やはりこの『ゴジラの逆襲』も、シリーズ中の重要な一作なのです。
最後にオマケで3DCG。
いよいよ、ゴジラです。
まだかなりラフな感じにしか造れていませんが……これもやはり、実験なのです。
今後ちょっとずつ微調整していって、また画像をあげていこうと思います。できれば、動画まで……
こちらこそ、よろしくお願いします。
本記事では批判的な書きぶりになりましたが……私としても、決してそれほど低評価しているわけではありません。
ゴジラの表皮の陰影は、モノクロ画面でこそ映えるクールさがあると思ってます。それはもちろん第一作についてもいえることで、ここは第三作以降カラー化によって失われてしまった部分であり……そういった点で、映画が“娯楽の王様”だった時代の遺産なのかなとも感じています。
https://blog.goo.ne.jp/fwhn6127/e/6bb6329b76004d516d94efea47e8a50f
今後ともよろしくお願い致します。