松本人志さんの性加害報道の余波が広がっています。
松本さんや吉本興業サイドは事実無根としていますが、その「事実」がどこからどこまでを指すのかが曖昧であり、この二、三週間で、早くもその点でほころびが見えはじめているのが実態でしょう。もちろん現時点で断定的なことはいえませんが、女性を集めての飲み会が行われていたこと自体は事実のようです。そして、密室で何が行われていたかは第三者にはわからないということであれば、事務所側が「当該事実は一切ない」と言い切れる根拠がどこにあるのかという話になってきます。
そして、問題は松本人志さん一人にとどまらず、その後も文春砲が立て続けに火を吹き、芸人たちの「自粛ドミノ」が広がっていくのではないかと懸念されているということです。
ことここにいたってくると、どうしてもジャニーズ問題とオーバーラップしてきます。
問題の構図には相違点も多々ありますが……つまりは、ある一人の人間が強大な権力をもってしまい、周りがその行いを制止したなかったために、広く、かつ深刻な問題になってしまったということでしょう。問題となる行為がはじまったときに誰かが止めておけば、その時点で数人の芸人が活動休止に追い込まれるぐらいで済んだかもしれない(業界側から見れば)のに、止めなかったがために、お笑い界全体に幅広く影響が出かねないという……
ここから得られる教訓は――それにふさわしくない人間が権力をもってしまい濫用し始めたら、まわりはただちにそれを止めなければならない。止めなければ、どこかで必ず大きな問題を引き起こす。先になればなるほど、そのダメージは大きくなる……ということでしょう。それは、業界関係者のみならず、本人にとっても不幸なことです。
このブログでは時々近現代史の話なんかも書いていますが、これは戦前の日本を戦争に引きずり込んでいった国家主義勢力にもあてはまるわけであり、この国が抱えている致命的な問題が今回の問題にも示されていると思います。
また、この件に関する著名人の発言などには、男女間で際立った温度差が指摘されてもいます。
女性の場合は問題視する意見が多いのに対し、男性側は疑問を呈したり矮小化する意見が多いという……このへんは、我が国がジェンダーギャップにおいて世界的にも最低水準であることとつながっているように思われ、そういった点からしても、これは単にお笑い界のなかだけの問題ではないんじゃないかと。