ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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スネ夫の国にはなりたくない……アメリカ鉄鋼輸入制限発動

2018-03-24 21:59:44 | 時事
アメリカが検討していた鉄鋼などの輸入措置で、日本が除外対象にならないというニュースを目にしました。

米、鉄鋼輸入制限を発動(時事通信)


カナダやEU、韓国などは除外されてますが、日本は結局除外されなかったのです。これによって、日本製品には、新たな関税率が適用されることになります。

まるでスネ夫みたいだな……と、思いました。

『ドラえもん』に出てくる、あのスネ夫ですね。
日本やアメリカなどの国際関係をドラえもんの人物になぞらえる評論が話題になったことがありましたが、それを思い出します。

日ごろジャイアンにごまをすり、金品を提供しているスネ夫ですが、いざというときにジャイアンが助けてくれるかというと、そうでもないんです。本当にやばいときには、ジャイアンは容赦なくスネ夫を見捨てます。

ここから得られる教訓は、強いやつにゴマをすっても、それが報いられる保証はないということでしょう。

これは、日米関係だけでなく、国と国民の関係にも敷衍できると思います。

国が国民に忠誠を求めるとき、それは「スネ夫になれ」という意味だと思うんです。
国家に忠誠を誓い、国家の都合でいつでも切り捨てられ、それでも文句をいわないスネ夫になれ、ということですね。
いま話題のS前理財局長やK被告なんかは、まさにこのスネ夫状態だと私には見えます。
スネ夫の国家は、そこに仕える役人にも、一般国民にも、スネ夫たることを求めるのだなあ、と思わされます。

ここで、名曲を一曲。
クラッシュの「出世のチャンス」です。

  俺は軍隊が嫌い 空軍が嫌い
  熱帯で戦って死ぬのはごめんだ
  俺は公共奉仕の原則が嫌い
  あんたの代わりに手紙爆弾を開封したりしないぜ


これはまさに、スネ夫にはならない宣言ですね。
強いやつにへいこらしても、守ってくれるとはかぎらない。「あなたに忠誠を誓います」といってその通りにしていたら危険な時に守ってくれるかといえば、そうじゃないんです。危険な時には、その“強いやつ”は、「俺に忠誠を誓うっていってたよな。じゃあ、俺の代わりに死んでくれ」というんです。国に忠誠を誓いますといったら、偉い人の代わりに危険なことをさせられるだけ。いざ危険な時に本当に助かりたかったら、日ごろから自分の立場を主張していないといけないんです。

スネ夫みたいにふるまっていて、いいことは何もありません。ただ、いいように利用されてみじめなばかりです。
スネ夫のように生きるのはやめよう。
主従関係ではなく、対等な関係でものがいえる国であり、国民になろう。
今回の輸入制限問題から導き出される結論は、そういうことだと思いますね。

朝鮮半島で何が起こっているんだい?

2018-03-22 19:23:56 | 時事
朝鮮半島をめぐる情勢が、大きく動いています。

私の予測は、いい方向にはずれてくれました。

以前このブログで、平昌オリンピック・パラリンピックが終われば米韓合同軍事演習がはじまり、ふたたび威嚇の応酬が始まるだろうと書きましたが、そういう事態は回避される見込みが出てきました。

この動きは、ひとまず歓迎すべきでしょう。

米韓が北朝鮮に対して“けん制”として行っていることは、実際には逆効果でしかない……とこのブログで指摘しました。
この数年間、北朝鮮が核開発・ミサイル開発を進めてきたのは、むしろ軍事的圧力をかけたがためとみるのが妥当です。
思い切って対話の方向にかじを切ったからこそ、いまの状況があるのだと思います。

ここで名曲を一曲。
マーヴィン・ゲイの What's Going On です。

  
  父親たちよ
  エスカレートしていく必要はない
  だって 戦争は答えじゃない
  愛だけが憎しみに打ち勝つことができるのだから

  わかりあうための道を見つけなけりゃならないんだ
  いま ここで

  ピケット線 ピケットサイン
  暴力で罰するのはやめてくれ
  さあ 話をしよう
  そうすればわかるさ
  何が起きているのか
  教えてくれ
  何が起きているのか
  何が起きているんだい?


軍事的圧力は解決にならない。対話によってのみ事態を解決する可能性があるということです。それを“愛”と呼ぶかどうかはまた別の問題ですが……
軍事的圧力路線を続ければ、結局は実際に軍事衝突にいたるほかはない。そして、もし戦争となったら、その時点で全員が敗者。結局のところ、対話しか道はないんです。
当事者たちが、その“現実”に向き合った結果が、対話という方向性なのだと思います。

では、日本はどうなのか。
日本のみが、いまだに振り上げた拳を降ろすことができずにいるように見えます。
そしてその結果、蚊帳の外におかれるような形です。

もちろん、アクの強いメンツばかりですから対話の行方を楽観視することはできません。
しかし、繰り返しますが、対話しか道はないんです。
もし対話路線が挫折し軍事的威嚇路線に戻ったら、延々と互いの威嚇合戦が続き、北朝鮮が核攻撃能力をじりじりと向上させていくのをどうすることもできず、軍事衝突の危機に脅かされる日々が続くだけです。その先にはなんの展望もありません。
多少の困難があっても、この対話という方向に進んでいくべきです。

Green Day,You Lied

2018-03-21 17:31:34 | 音楽批評
今回は、音楽評論記事です。
音楽評論シリーズも最近は時事系記事っぽくなっていますが、今回もその流れでいきましょう。
紹介するのは、Green Day のYou Lied という歌です。


  隠しきれない問題を抱えたお前
  衝動的な癖はなくなりそうもないな
  お前の息は空気を腐らせ
  歯は腐り落ちて黒い穴になる

  なあ 真実からは逃れられないぜ
  お前の言うことが本当のはずがない
  物語が広がって もうめちゃくちゃになって
  いいわけのしようもない
  お前はウソをついたんだ

グリーンデイというと、イラク戦争以後ぐらいからは当時のブッシュ政権を批判するような作品を発表していましたが、それ以前はあまり政治的なことを表面に出していないイメージもあります。
この You Lied も決して政治的な歌ではありません。しかし、これがなんだかいまの状況にぴったりのような気がするのです。パンクというのはやっぱり“裸の王様”を撃つ音楽ですから、ことさらに政治的なスタンスをとらなくても、自然とそういうふうになるということなんでしょう。

曲調からすると、ふだんのグリーンデイとはちょっと違うような気もしますが、それはこの曲がシングルのカップリング曲であることと関係があるかもしれません。

“シングルのカップリング曲”といっても、今の若い人にはなんのことかわからないかもしれませんが……かつてレコードが主流だった時代には、レコードに一曲だけ収録すると裏面が余ってしまうので、裏面を埋めるためにもう一曲入れていた名残ですね。おまけみたいな扱いですが、このカップリングが、アーティストにとっては新しい方向性を試してみる実験場のような意味合いも持っていたわけです。

グリーンデイは、そんなカップリング曲ばかりを集めた Shenanigans というアルバムを発表しています。私も、そのアルバムでこの曲を知りました。

 

邦題は『シェナニガンズ ~スーパー・ウラ・ベスト!』というこのアルバムですが、未発表曲も収録されています。その Ha Ha You're Dead という曲も、ついでに紹介しておきましょう。


  どれだけの感情を奪えるんだ
  どうせアピールなんだろ
  透けて見えるぜ 薄っぺらだからな
  またアルミホイルを噛むみたいに

  お前の船が沈んで
  お前の世界が崩れ落ちるとき
  Ha Ha お前はもう死んでいる
  ジョークはおしまい
  くそったれな奴だったよな
  そんなお前も今はもういない
  お前の船が沈んでいくとき
  そばに立って見ててやるよ
  お前が溺れていくのを
   Ha Ha お前はもう死んでいる




地下鉄サリン事件とイラク戦争

2018-03-20 17:32:10 | 時事
今日は3月20日。
地下鉄サリン事件が起きた日です。
最近このブログでは時事系記事の比率が高くなっていますが……その流れに乗って、今回は、この事件とその後の日本について書きたいと思います。

特に必要もないでしょうが、一応説明しておくと、地下鉄サリン事件は今から23年前に起きた一種のテロ事件です。
オウム真理教という宗教団体の信者らによって、東京の地下鉄にサリンが撒布され、多数の死傷者を出したという事件です。“化学兵器”を用いる無差別テロが実行に移されたのは、おそらく今にいたるまでこの事件だけでしょう。

地下鉄サリン事件は、日本の社会に大きな影響を与えました。

その影響を総括的に説明するというのは私の手にあまることですが……それについて、森巣博さんと森達也さんの共著『ご臨終メディア―質問しないメディアと一人で考えない日本人』(集英社新書)で語られていたことが印象に残っています。

「地下鉄サリン事件は、日本にとっての9.11だった」

というのです。
残念ながら手元に現物が見当たらず、うろ覚えでの引用で恐縮なのですが……たしか森達也さんの発言だったと思います。
そして、この時を機に、日本には“社会”がなくなり、“世間”になった……ということが語られていました。

同時多発テロ後のアメリカと対比してみると、“世間”という言葉の意味がよくわかると思います。

同時多発テロ後のアメリカは、安全のためなら人権などといっていられないという風潮が強まっていきました。
令状なしでの召喚や、政府機関が秘密裏に個人情報を収集したりすることがまかりとおるように。ふつうならば通らないことですが、国民の“恐怖”という感情を利用して、それが通ってしまったのです。
その行きつく先の一つが、くしくも地下鉄サリン事件と同じ3月20日にはじまったイラク戦争でした。
「安全のためなら人権や“民主的”なシステムを無視してもいい」という発想が、「危険(かもしれない)敵を倒すためには細かいことを無視して戦争をしかけてもいい」というところまでいってしまったのです。

では、その結果はどうだったのか。
結局、イラク戦争はアメリカに過大な負担を強い、中東に混沌をもたらしただけでした。それによってアメリカが安全になったとも思えません。むしろ、アメリカ国内の分断を強め、アメリカという国にもマイナスの影響を強くもたらしたのではないでしょうか。

ここから得られる教訓は、「不安に駆られて動くと、世の中はろくな方向にいかない」ということだと思います。

で、日本の話に戻ります。
地下鉄サリン事件は日本にとっての9.11だった……というのが当たっているとすれば、日本でも、アメリカ社会に起きたような変化がゆるやかに起きているのではないか。これは否定できないように思えます。
そして、そういう変化は、おそらく世の中を悪い方向にもっていきます。その先に待っているのは、差別や偏見を隠そうともしない、息苦しく、ぎすぎすした社会でしょう。
社会を運営していくときに、“恐怖”という感情をベースにするべきではないんです。

Metoo が聞こえない……日本はロシア化しつつあるのか

2018-03-19 17:24:05 | 時事
ロシアのプーチン大統領が、大統領選の勝利を宣言しました。
これで、通算4期目。首相時代も含めて、およそ四半世紀にもわたって実質的な最高権力者の地位にい続けることになりそうです。

ロシアの姿をみていると、なんだか今の日本もああいう国になりつつあるような気がします。

それはすなわち、“強権的なリーダー”が支持されるということですね。

強権的な姿勢をとる政治家に反発するのではなく、それを支持するという……

そしてその裏返しが、弱い立場にいる人を踏みにじるような態度です。生活保護受給への冷たい目や、在日コリアンへの差別など……そして、男尊女卑的な考えも、その一つでしょう。

最近、Metoo運動がロシアでは盛り上がらないという話を聞きました。

Metoo 運動というのは、性被害を受けた女性たちがそのことを訴え、再発防止などを求める運動です。
しかし、ロシアではこれがなかなか広がらない。
そして、日本でも広がらないのです。はあちゅうさんがツイートしたことで一時はかなり拡散しましたが、どうもそのあとが続いていないようです。

その背景には、やはり根深い男尊女卑思想があるように思えます。女が生意気いうんじゃない……というような。

日本の“保守”の根底にあるのもこれだと思うんですね。
それがもっとも悪い形で活性化しているのが、いまの状況じゃないでしょうか。弱い立場の人を見つけたら、手を差し伸べるのではなく、よってたかって足蹴にする。そうしておいて、力をもっている相手にはへいこらする……これを放置しておくと、だいぶまずいと思いますね。