ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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士官学校事件

2022-12-08 22:15:33 | 日記



今日は、12月8日。

太平洋戦争開戦の日です。

このブログでは、こうした日付にあわせて、ときどき近現代史に関する記事を書いています。そんなわけで、今日は近現代史記事でいこうと思います。

このカテゴリーとしては、前回「滝川事件」というものについて書きました。
時代の流れにそって、その翌年、昭和9年(1934年)の話です。
この年、「士官学校事件」というものがありました。

これは、この時代にはもはやおなじみとなっているクーデター計画です。

かつての三月事件や十月事件、五.一五事件と同じく、軍の将校がクーデターを起こして軍事政権を樹立しようというもの。
結果をいえば、クーデター自体は、未遂に終わりました。
そのこともあって、戦前昭和史においてさして重大な事件ともみなされていないようですが、むしろそこが異常です。軍内部の過激派がクーデターを目論んだというとんでもない話なのに、それがさほど珍しい話でもなくなってしまっているという……異常が異常とみなされない異常さということです。
まあ実際問題として、この時代に起きたいくつもの事変のなかにおいてさほど大事でないとはいえるんですが……しかし、この士官学校事件は、その後の大事件につながっていく萌芽でもあります。
この件によって、いわゆる統制派と皇道派の対立がさらに深刻になり、翌年の相沢事件につながり、そこからさらに二.二六事件という大事件に発展していく……その助走段階というべき事件でもあるのです。



ところで……
この同じ年にあった動きとして、「国防の本義と其強化の提唱」と題するパンフレットが発行されました。

これは、陸軍省新聞班が発行したもので、総力戦体制の構築を訴えるものです。

皇道派と統制派の対立という背景を踏まえると、この内容はなんだか奇妙にも思えます。
永田鉄山、林銑十郎という、皇道派からみれば仇敵とも呼べる人たちが関与しているにもかかわらず、その主張は皇道派が唱える国家像に似ているようでもあるのです。

ここからみてとれるのは……
統制派と皇道派は、反目しているようにみえて、実は目指す国家像にそれほどの違いはない、ということが一点。
そしてもう一点は、実は軍を統御しようと考えている政治の側も、その目指す姿を一定程度まで共有しているということです。
件のパンフレットは「国策研究会」という民間のシンクタンクが作成に協力しているのですが、この国策研究会というのは、後に近衛文麿のブレーン集団となり、企画院というものに発展していく組織。つまり、そこで示されたビジョンは、政治の側ともつながっているのです。

そのビジョンとは、一言でいえば、強い権限を持つものによって統治される国家。
明治以来の日本の国家システムは、ガバナンスに脆弱性を抱えている。それを解消するためには、強い権限をもつリーダーのもとで国家を統制することが必要だ……という考え方です。

「国防の本義と其強化の提唱」パンフレットは、統制派、皇道派、そして政治家たちが、ある点において同じビジョンを抱いていたということの具現化だと私は見ています。

ただし……彼らが共有しているゴールは、あくまでも「一言でいえば」の話であり、実際には同床異夢です。
政治の側から見れば、軍の暴走を制御するだけの強力な権限を持ちたい。軍の側は、皇道派も統制派も、軍が強力に全体を統制する国家を作りたい……それが、形式的には同じゴールということになっている。表面上はそう見える、というところが問題にってきます。反目しあっている三者が形式的には同じ目的を共有しているので、それは結果として実現に向かっていってしまうのです。

その過程で、当然ながら根本にある目的の違いが問題となってきます。
共通しているのは「強い権限をもつものによって統治される国家」という点についてのみであり、その「強い権限」を誰が持つべきなのかということに関しては、軍と政治との間でまったく対立していました。そのせめぎあいにおいて軍が主導権を握ることで、おそるべき国家主義が誕生してしまうことになるのです。

国家権力をめぐる三つ巴の主導権争い……士官学校事件から相沢事件へという一連の流れは、その一環でしょう。二.二六事件は、皇道派と統制派の最終決戦ということになりますが、その二.二六事件を起こした中心人物の一人である磯部浅一は、この士官学校事件でも首謀者的立ち位置にいました。この事件で彼が停職処分となったことが、二.二六事件のひとつの伏線となっています。停職となった磯部や村中孝次はこの事件を統制派によるでっちあげだと訴え、両派の対立が激化していくのです。

そのあたりの話についてはまたいずれ書くとして……今回はこのあたりで。



日本、W杯敗退……

2022-12-06 21:40:28 | スポーツ



深夜に行われたワールドカップ決勝トーナメントの一回戦……

日本は、クロアチアにPK戦の末に敗れました。
これによって、今大会は敗退ということに。

悲願の決勝T勝利とはなりませんでしたが、まあ、やはりワールドカップの決勝という舞台、そう簡単に壁を突破させてはくれないということでしょう。
とはいえ、PKでの決着なので、実質引き分けということではあります。
しかも相手は、前回大会の準優勝国……前にも書きましたが、やはり日本のサッカーもだんだん強くなってきているんでしょう。グループリーグでドイツ、スペインを撃破したということもあるわけなので、代表チームの選手たちも胸を張っていいと思います。


しかし、このクロアチア戦におけるPKの失敗の多さは、どこかメンタルなところから来ている気はします。
やはり、重圧というか……そして、選手のメンタルの弱さというよりも、むしろ彼らにかかる重圧の強さと質が問題であるようにも思えます。
もちろん代表チームの選手たちに重圧がかかるのはどこの国でも同じでしょうが、グループリーグの経緯を見ていても、この国ではなにか独特なエネルギーが発生しているように思われました。
サッカーそのもののこととは別に、そのあたりをもう少しさばけた感じにしていく必要もあるんじゃないか……今回のW杯で、そんなことも考えました。



一隅を照らす 中村哲さん死去から3年

2022-12-04 22:18:51 | 時事


今日は、12月4日。

アフガニスタンで緑化事業を行っていた中村哲さんが亡くなってから3年となりました。

もう3年にもなるか……と思わされます。
思えばコロナ騒動がはじまる前のことで、なんだか遠い昔のことのようにも感じられます。

しかし、ペシャワール会は、中村さんの遺志を継いで現在もアフガンで活動を続けています。
この3年の間にタリバンの復権ということもありましたが……それでも活動は続いているということです。

コロナ禍、タリバンの復権というのも大変なことですが、激動といえば、今年はウクライナ戦争ということもありました。
安全保障に関する考え方にも世界レベルで大きな揺らぎが生じ、本邦でも防衛費の大幅増額や反撃能力の保持といったことが語られています。

しかし、それが本当に安全保障ということになるのか。
私は疑問を感じています。

かねてからいっていることですが、軍事費を増やしてそれで安全が保障されるのなら、こんな楽なことはありません。そうはいかないから歴史上数知れない戦争の悲劇があるわけで……

では、真に平和を望むなら、どうすればいいのか。
その答えの一つが、中村さんの行っていた活動なのではないでしょうか。

決して派手な行動ではありませんが、そうして貧困や憎悪の入り込む隙間をなくしていくことが、結果として紛争をなくすことになるのではないか……
中村哲さんは「一隅を照らす」という言葉を好んでいたといいます。
まさに、彼の活動はそういうことだったでしょう。今この言葉を、あらためてかみしめたいと思います。



日本代表、二大会連続のW杯決勝T進出

2022-12-02 21:01:04 | スポーツ



サッカーのW杯で、日本が決勝T進出を決めました。

前回大会はあまりすっきりしないかたちでの一次リーグ突破でしたが、今回は文句なしの首位通過。
いわゆる死のグループで、優勝経験のある二国を破り……これはなかなかすごいことです。

今大会、結構こういう大番狂わせがあちこちで起きているようで、中東の気候とかそういうことも影響しているのかというようなことも素人なりに思ってはいますが……まあしかし、やはり日本のサッカーも強くなってきているということなんでしょう。

あとは、前回のW杯のときも書きましたが、事前の期待値が高くないほうが思い切ってやれるということもあったんじゃないかと思います。
今大会の場合、ドイツ、スペインと同じリーグに入った時点で、もう一次リーグ突破はまず無理だろうみたいな感覚が暗黙のうちにあって、むしろそういう状況だからこそ代表選手たちはチャレンジャー精神で力を発揮できたんではないかと。そうすると、逆にコスタリカ戦に敗れたのは、初戦の大金星でいやがおうにも期待値が高まっていたことがあって、それが変なプレッシャーになっていからというふうにも考えられます。ここで負けたことで、大奇蹟をもう一回起こさなきゃいけないということになって、これはやっぱり無理だとなった。そこで、最初と同じダメ元状態が生じ、また大金星をあげることができた……
この一次リーグ突破で、また日本代表チームには大きなプレッシャーがかかるでしょう。
決勝T初勝利への期待と、ドイツ、スペインに勝ったんだから、今度も相当いけるはずだ……といったようなことで。そういうプレッシャーがかかると、あまりよろしくないのかもしれません。やっぱり、試合の前にはこれは厳しいだろうぐらいに思われていたほうがいいのかも……