ロック探偵のMY GENERATION

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2022年を振り返る ~映画界~

2022-12-30 23:33:38 | 日記


今回も、今年の振り返り記事です。

訃報に関する記事というのを二回書きましたが……今年は、映画界においても巨星墜つ、というニュースが多くありました。
今回は、そうした映画界の訃報に関して書こうと思います。


映画界における訃報ということでは、宝田明さんの死去があったわけですが……あらためて振り返ってみると、東宝特撮関連ではほかにも大きな衝撃を与えたニュースがありました。

中野昭慶さん。
東宝特撮における名匠であり、あの『日本沈没』で特撮を担当しました。
『キングコング対ゴジラ』からゴジラシリーズに参加していて、『ゴジラ対ヘドラ』から84年版『ゴジラ』までの作品で特技監督をつとめておられます。
中野さんは宝田明さんとほぼ同年代で、同じく満州からの引き揚げを経験しています。そのときの経験は自身の特撮に反映されているようで……やはりゴジラシリーズというのは戦争の影をどこかに抱える宿命なのでしょう。

大森一樹さん。
この方も、今年亡くなったのでした。
平成ゴジラシリーズの2作品でメガホンをとりました。この方が『ゴジラVSビオランテ』を監督したことで、ゴジラ第二期シリーズの方向性が決定されたといえます。そして、同シリーズの最終作『ゴジラVSデストロイア』では脚本をつとめ、ゴジラの最期を描きました。
脚本は、『ゴジラVSモスラ』でも担当しておられました。『VSモスラ』には宝田明さんも出演しておられ……ここで宝田さんと映画における直接の接点もありました。

調べてみてちょっと驚いたのは、この方が『風の歌を聴け』という映画を監督していたこと。
これは、村上春樹さんのデビュー作にあたる小説を映画化したものです。といっても、私は観ていません……というよりも、あれを映画化したものがあったということ自体が驚きです。春樹さんとは出身中学が同じなんだそうで……それも驚きです。


そして今年は、海外の特撮界でも大物の訃報がありました。

ダグラス・トランブルさん。
『2001年宇宙の旅』『ブレードランナー』『スタートレック』『未知との遭遇』などを手がけた米特撮界のレジェンドです。いずれも特撮史上に残る古典的名作といえるでしょう。

こうして日米の特撮レジェンドが同じ年に世を去ったというのも奇縁という気がしますが、まだそれだけではありません。上に挙げた二つのSF大作『未知との遭遇』『2001年宇宙の旅』でメカニックデザインなどを手がけたコリン・キャントウェルという方も、今年亡くなっています。この方は『スターウォーズ』シリーズにも携わっていて、デススターや各種戦闘機などのデザインを手がけたといいます。

そして、『ブレードランナー』関連でもう一人。あの映画で音楽を担当したヴァンゲリスも今年死去しています。
その『ブレードランナー』メインテーマの動画を載せておきましょう。

Main Titles

ちなみに、このヴァンゲリスさん、イエスの鍵盤奏者に候補として名前が挙がったこともあるのだとか。たしかに世界観は共通しているように感じられます。


そして――特撮というくくりに入れていいかどうかはわかりませんが――さらに巨匠二人の名を。

ヴォルフガング・ペーターゼンさん。
『ネバーエンディングストーリー』の監督です。
他にも感染モノの金字塔『アウトブレイク』や、アドベンチャーの古典的名作をリメイクした『ポセイドン』、歴史大作の『トロイ』……と、名作を遺しました。
いずれも名作ですが、とりわけ『ネバーエンディングストーリー』は私が子供のころ大ファンだった映画です。
テーマ曲も名曲でした。その動画を載せておきましょう。

Limahl - Never Ending Story (Official Music Video)

もう一人は、アイヴァン・ライトマンさん。
『ゴーストバスターズ』シリーズの監督です。
昨年公開されたシリーズ続編『ゴーストバスターズ/アフターライフ』は、彼の息子であるジェイソン・ライトマンが監督とつとめました。

こうしてみてくると、一定の傾向があるようです。
80年代ごろに、SFX技術が飛躍的に発達して、それが映像表現の可能性を大きく広げたということでSFX映画黄金時代みたいな時期があったと思うんですが、そこで活躍した人たちが相次いで世を去ったということでしょう。日本の84年版『ゴジラ』なんかも、その一画とみなせる作品だと思います。
『ゴーストバスターズ』で思い出すのは、高層ビル群のなかに巨大なマシュマロマンが登場するシーン。子ども心には、ストーリーなんかはもはや関係なく、それだけでわくわくする映像でした。あの時代だからこそのわくわく……そういう一つの時代が、また一歩歴史の側に入りつつあるということでしょう。


ここで、特撮からはちょっと離れて……

モンティ・ノーマンさん。
映画関連といっていいかは微妙ですが……作曲家で、あの007のテーマを作曲した方です。
これは、じつにかっこいい。映画音楽史上に残る名曲でしょう。

James Bond Theme 007 - Dr. No // The Danish National Symphony Orchestra (Live)


最後に……今年の映画界における訃報といったら、これが一番大きなニュースだったでしょうか。
ジャン=リュック・ゴダールさん。
いわゆるヌーヴェルバーグの巨匠。後世の映画界に多大な影響を与え、先述した大森一樹さんも『風の歌を聴け』を撮る際にはゴダールを意識していたのだとか。

死因についてはいまひとつはっきりしないんですが、難病を抱えていたことから安楽死を選んで死去したともいいます。延命措置を止めるというようなものではなく、薬物による積極的安楽死……一部の国では合法化されており、ゴダールの居住するスイスではそれが可能だったということです。
以前テレビのドキュメンタリーで観たことがあるんですが、これはなかなか見ていて衝撃があります。まだ意識があり、普通に会話もかわせる状態で薬物を投与され、「さよなら、さよなら」といいながら死んでいくという……ある意味では、鬼才にふさわしい最期なのかもしれません。