ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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映画『GODZILLA』1998年版

2023-01-17 22:39:12 | 映画



今回は、映画記事です。

かなりひさびさに、ゴジラシリーズとなります。

先日、三石琴乃さんの「おやすみ、ゴジラ」という歌のことを書きましたが……実はあの歌、いずれゴジラ映画にからめて紹介しようと思っていたものでした。たまたまニュースで三石琴乃さんの名前が出てきたのでああいうかたちの記事になりましたが、まあことのついででもあるので、このあたりでゴジラ映画シリーズを再開しようかと。

しかしながら――ここで登場するのは日本のゴジラではなくアメリカ版のGODZILLA。しかも、最近のいわゆるモンスターバースのほうではなく、1998年版です。

先にいっておきますが、私の中では非常に評価が低い作品です。
まあ、一般的にもそうでしょう。
この映画を高く評価する意見はあまり聞いたことがありません。興行成績は決して悪くないものの、ゴジラファンの間では、あれをゴジラとは認めないという評が大勢じゃないでしょうか。
そういう作品であれば別にスルーしてもいいんですが……しかしこの作品は、日本ゴジラ第二期と第三期の間に公開された作品であり、この作品の存在自体が日本ゴジラのシリーズ展開にも影響を与えていたりして、ゴジラシリーズについて書くならスルーというわけにもいかないのです。


日本ゴジラシリーズの展開に与えた影響というのは、たとえば第二期シリーズの最後の二作。
以前ちょっと書いたと思いますが、第二期は本来『ゴジラVSメカゴジラ』で終結する予定だったといいます。ハリウッド版ゴジラの話というのはそのときからあって、ここで日本ゴジラをいったん終了してアメリカのゴジラにバトンタッチというような意図があったとか。しかし、そのハリウッド版の制作が遅延し、そのためにあと二作を作ることになったという話です。
結果、GODZILLAはゴジラの死を描いた『ゴジラVSデストロイア』のあとに公開。日本ゴジラのプロデューサーとして知られる田中友幸さんはその直前に亡くなっていて、スタッフロールに田中さんへの献辞が入るということになりました。


メガホンをとるのは、ローランド・エメリッヒ監督。

ハリウッドでは大物いっていいでしょう。『インディペンデンス・デイ』や、『デイ・アフター・トゥモロウ』などの作品で知られます。この二作からもわかるとおり、ディザスター系の巨匠というイメージです。

GODZILLAもまた、その系統といえるでしょう。
なにがしかの危機が襲来し、人間たちがあわてふためきながらそれに対処するという基本構造があります。

本作のゴジラは、ニューヨークを襲撃。
そして、米軍がそれを迎え撃つことになります。

この非常時にも、選挙のことしか考えていない市長。そして、現実をしっかり見据えて対処する現場の指揮官――このコントラストのつけ方が、良くも悪くも、いかにもローランド・エメリッヒらしい演出です。
そして、暴走するマスコミ……しかし、いくらなんでも個人的な話に終始しすぎではないか。自分のキャリアのことなんかいってる状態じゃないでしょうに。
こういうのも、エメリッヒ作品の特徴だと思いますね。すさまじいディザスターが展開しているにもかかわらず、主人公たちはどこか他人事という……エンターテイメント性を追求しすぎ、いろんなことを割り切りすぎた結果の罠にはまっているように見えます。
『インディペンデンス・デイ』やこの『GODZILLA』は広い意味でディザスターものといっていいと思いますが、主要な登場人物は死なないみたいなことが暗黙の前提になっていて、それが作品の空気を弛緩させているように思えるのです。
ディザスターが行きつくところまで行きついたエメリッヒ作品として『2012』がありますが、あれをみていて私はそれを実感させられました。追いつかないように追ってくる地割れ、当たらないように飛んでくる火山弾……そんな演出ばかり見せられていると、もうハラハラもドキドキもしないわけです。主人公とその仲間は基本的に死なないことになっていて、途中で死ぬキャラは最初から「死亡要員」としてそれ相応の扱いを受けているという……それは安心して観ていられるエンターテイメントということなんでしょうが、しかしよくよく考えてみれば、「安心して観ていられる」というのはディザスターパニックということと根本的に矛盾しているわけです。予定調和に従うのなら、それはディザスターとは呼べないでしょう。ディザスターが大規模になるほど、この矛盾が顕在化してくる……GODZILLAの段階で、それがもう無視できないレベルになっていると思われるのです。
そんなこともあって、最初に書いたように、この映画の評価はゴジラファンの間でも決して高くありません。

そして、この映画に対する評価が日本ゴジラを復活させることになります。

ハリウッド版ゴジラはその後シリーズ化も見据えていたようですが、ゴジラファンのリアクションが悪かったことでその構想はとん挫(ただし、後に続編としてテレビアニメが作られている)。ならば……ということで、日本で新たにゴジラシリーズが作られることになるのです。
そうしてはじまるのが、第三期、いわゆるミレニアムシリーズです。
ということはつまり、98年版GODZILLAは、多くのゴジラファンにとって駄作であると同時に、ミレニアムゴジラという新シリーズの生みの親でもあるという……そういう奇妙な存在なのです。
その点に対する複雑な感情もあってか、ミレニアムシリーズの作品のなかでエメリッヒのゴジラはちょくちょくネタにされています。
そのあたりについては、またいずれこのブログの記事で書いていくことにして……今回はこのへんで。



高橋幸宏さん、死去

2023-01-15 23:22:53 | 日記


高橋幸宏さんが亡くなったというニュースがありました。

昨日一日ほとんどニュースに接することなくすごしていたんですが、その間に飛び込んできた訃報……つい先日のジェフ・ベックに続いて、まさかという話でした。

高橋幸宏さんの経歴については、各種メディアやSNSでいろんな方が書いておられるようなので、私がいまさら何かいうこともありませんが……あえて何か取り上げるとしたら、THE BEATNIKSでしょうか。
ムーンライダーズの鈴木慶一さんと組んだこのユニットが、実は高橋さんのキャリアにおいてもっとも活動期間が長かったんじゃないでしょうか。このユニットでの活動が、寺山修司原作のミュージカル『時代はサーカスの象にのって’84』でムーンライダーズが音楽を担当するきっかけになったという話をこのブログでも書きました。そういったところを見ても、やはり高橋幸宏という方は、この国の音楽業界において歌謡曲の重力と戦う側にいたのだと思います。その活動に敬意を表するとともに、冥福を祈りたいと思います。



ジェフ・ベック死去

2023-01-12 21:29:06 | 日記

ジェフ・ベックが亡くなったという衝撃のニュースがありました。

78歳。死因は細菌性髄膜炎ということです。

昨年はミュージシャンのショッキングな訃報が多くあったなんていう話をしていましたが……まさかその翌年の年明け早々にこんなニュースが飛び込んでくるとは思ってもいませんでした。

ジェフ・ベックといえば、いわゆる3大ギタリストの一人として知られています。
エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック……3人ともヤードバーズにいたことがあるわけですが、入れ違いの形になっていて、3人そろっての演奏というのはあまりありません。
その貴重な機会の一つとしてよく知られているのは、3大ギタリストがはじめて集結した伝説のARMSコンサート。
その「いとしのレイラ」の映像を。

ERIC CLAPTON, JIMMY PAGE & JEFF BECK - Layla

ドラムは、一昨年亡くなったローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツ、ベースには同じくストーンズのビル・ワイマンという顔ぶれ。さらに、同じステージにはスティーヴ・ウィンウッドもいます。


ジミー・ペイジとは学生時代からの親友でもあります。
2009年、ロックの殿堂では、ベックとペイジが共演ということもありました。
曲は、レッド・ツェッペリン誕生のきっかけの一つともいえる「ベックス・ボレロ」。途中ジミー・ペイジが登場すると、そこにツェッペリン「移民の歌」をはさんでくるという熱い展開です。

Jeff Beck performs at the Rock and Roll Hall of Fame's Induction Ceremony 2009

3人の動画は、三大ギタリストがそろったということがすごいという話で、純粋に演奏としてはあちこちアラがあり……こちらのほうが完成度が高いと感じられます。やはり、長年の友人だからこそでしょうか。


最後にもう一曲、ジョニー・デップとの共演。
ジョン・レノンの Isolation をカバーしています。

Jeff Beck and Johnny Depp - Isolation [Official Music Video]



三石琴乃「おやすみ、ゴジラ」

2023-01-10 22:29:51 | 音楽批評


声優の三石琴乃さんが、インボイス制度への反対を表明しました。

三石さんといえば、『セーラームーン』の主人公・月野うさぎや、『エヴァンゲリオン』の葛城ミサトなどの訳で知られる大物声優。この方が、声優界を代表するようなかたちでインボイス制度に反対の声をあげたのです。

今年の10月に開始が迫っているインボイス制度ですが……小規模な個人事業主やクリエイターといった人たちに大きな打撃を与える可能性が懸念されており、かねてから各方面で反対の声があがっていました。

クリエイターという部分では、声優だけでなく、漫画、アニメ、演劇といったジャンルで反対の声が挙がっています。
こうした分野では関係者同士が一般企業における「取引先」のような関係ではない場合が多いこともあって(たとえば漫画家とそのアシスタント、など)、さまざまな問題が指摘されているのです。それらの問題は、単に「今まで払わなくてよかった費用を払わなければならなくなって経済的に苦しくなる」というだけではなく、文化のすそ野を縮小させ、衰退に追いやることが懸念されています。

しかしどうやら国の側は、どれだけ反対が起きようとインボイス制度を止めるつもりはなさそうです。
この一連の経緯をみていると、とにかくこの国は、文化などというものはどうでもいいという価値観なんだなと思わされました。
文化とお金を天秤にのせたら、なんの迷いもなく文化のほうを切り捨てるという……コロナ禍における諸々をみていてもそうでした。つまりは、日本という国の運営に関わっている人たちにとっては、それが基本なのでしょう。


で、「おやすみ、ゴジラ」なんですが……これは、三石琴乃さんの歌のタイトルです。
三石さんは歌手としてCDを出しておられて、そのなかに「おやすみ、ゴジラ」という歌があるのです。
だからなんなんだ、という話ではありますが……
インボイス制度に関するインターネットの記事で、この制度を襲い来る怪獣にみたてたイラストがあるのを見て、その外見がゴジラによく似ていました。それで、このインボイスという制度は日本のクリエイター界に襲いかかるゴジラのようなものかもしれないと連想が働いたわけです。
そのゴジラによって、この国の文化が破壊されつくしてしまうのか……それとも、おやすみゴジラということになるのか。しかと注視してきたいと思います。




もう一つのロックの日

2023-01-08 21:27:42 | 日記


今日1月8日は「ロックの日」だそうです。


ロックの日といえば、6月9日というわかりやすい日付もありましたが……
この1月8日は、エルヴィス・プレスリーとデヴィッド・ボウイの誕生日。二人のロックスターの誕生日がかぶっているということで、ロックの日ということになってるんだとか。

というわけで、このもう一つの「ロックの日」にあわせ、今回はエルヴィス・プレスリーとデヴィッド・ボウイを特集しようと思います。


まずエルヴィスさんから、カール・パーキンス Blue Suede Shoes のカバー。
アメリカの草創期ロックンロールを代表する一曲といえるでしょう。

Elvis Presley - Blue Suede Shoes ('68 Comeback Special)  


時代はくだって、社会派ソングの「イン・ザ・ゲットー」。
ここでいうゲットーとは、貧しい人たちが住むスラム街といったような意味合いです。

Elvis Presley - In the Ghetto (Official Lyric Video)

  雪が舞う
  冷たい灰色のシカゴの朝
  貧しい赤ん坊が生まれる

  わからないのかい
  子どもは助けの手を必要としている
  それがなければ
  いつか怒れる若者になってしまう
  見てごらん 君や僕を
  僕らは盲目なのかい
  それとも ただ顔を背け
  目をそらしているだけなのかい

と、貧困のなかから犯罪の世界に転落していく若者の姿が描かれます。    

そしてもう一曲、If I Can Dream。

Elvis Presley - If I Can Dream ('68 Comeback Special)

こちらも、ちょっと社会派という感じです。

 もしも夢見ることができるなら
 すべての人に希望が輝く暖かい太陽を
 ああ 教えてくれ
 どうしてこの夢がかなわないことがあるだろう


続いて、デヴィッド・ボウイ。

「ロックンロールの自殺者」。
グラムロック期を代表する曲の一つでしょう。

David Bowie – Rock 'N' Roll Suicide (Live, 1973)

ジョン・レノンの カバーで、Mother。

David Bowie - Mother (Official Audio)  

そして、ジョン・レノンのカバーでもう一曲、あの「イマジン」です。
この歌に関しては、あれこれ説明するまでもないでしょう。

David Bowie - Imagine (Live at the Coliseum, Hong Kong, 8th December 1983) [4K]  


時代も音楽性も違う二人のロックスターですが、共通点もあります。
当初は反逆とかシニシズムを前面に押し出していたのが、後年には社会派の方向にいくという……今回の選曲は、その変化がはっきり表れているものをチョイスしてみました。まあこういう変化は結構よくあることで、忌野清志郎なんかもその一環かもしれません。ロックンローラーの年の取り方として、これは一つの理想形なんではないかなと。