ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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フー・ファイターズの名曲を振り返る

2024-02-12 20:05:46 | 過去記事

Foo Fighters - A320

今回も、音楽記事です。1998年の映画GODZILLAで使われている音楽が豪華だという話をしてきましたが、エンドロールに並ぶ名前を見て、もう一つこれは捨て置けないというバンド......


過去記事です。

前回レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンがMC5の Kick Out the Jams をやってる動画を紹介しましたが……RATMの派生バンドともいえる Prophets of Rage がフー・ファイターズのデイヴ・グロールを迎えてこの曲をやっている動画がありました。

Prophets of Rage & Dave Grohl - Kick Out The Jams (MC5 Cover Toronto 2016)  

Prophets of Rage は、RATMのメンバーに加えて、パブリック・エネミーやサイプレス・ヒルのメンバーが集まってできたいわゆるスーパーグループ。ということで、ここでもトム・モレロがギターを弾いています。

それとは別に、パール・ジャムがやはりデイヴ・グロールを迎えて Kick out the Jams をやっている動画も。
なぜか、ここでのデイヴはほぼ後ろでタンバリンを叩いているだけですが……

Pearl Jam - Kick Out The Jams w/Dave Grohl & Alain Johannes - Werchter (July 4, 2010)

こうやって共演するというのも、やはりこのMC5、Kick out the Jams の感覚がデイヴ・グロールという人にマッチしているということでしょう。
ちなみに、Prophets of Rage はレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンの再結成を受けて活動を終了していたということですが、今またRATMが解散したとしたら、活動を再開するのか……ややこしいところです。


もう一つ、元記事のほうで書いた大きな話題として、フー・ファイターズのドラムのことがあります。

テイラー・ホーキンスの死去を受けてドラムをどうするかということが問題になっていたわけですが……後任のドラムはジョシュ・フリースに決定しました。
私はこのニュースで初めて名前を知ったんですが、ディーヴォのドラマーだそうです。ブルース・スプリングスティーンやスティング、ナイン・インチ・ネイルズなどとも活動したことがあるということで、実力に不足はないといったところでしょう。
ホーキンスの後任については、一時はクイーンのロジャー・テイラーの息子であるルーファス・テイラーの名前も取りざたされていましたが、今回はそれは見送りということに。

新体制となったフー・ファイターズは、さっそくライブ活動も開始。新ドラマーお披露目公演で、ディーヴォをちょっとだけカバーした動画がありました。

Foo Fighters Announce Josh Freese As Drummer And Then Play DEVO (Sonic Temple Festival)

昨年は、ニューアルバムも発表しています。
そのなかの一曲Rescued をグラストンベリーでやっている動画がありました。

Foo Fighters - Rescued (Glastonbury 2023)

ライブではこうしてジョシュ・フリースがドラムを叩くわけですが、アルバム音源ではデイヴ・グロール本人がすべてのドラムを叩いているとのこと。どうやら、フリースはあくまでもライブドラマーであり、レコーディングではデイヴが自らドラムを叩くということらしいです。元記事で書いた「過去にやめたドラマー」というのは、その条件を提示されて、ふざけんなということでやめたそうなんですが……まあ、当事者が納得しているのなら、それはそれでアリなんでしょう。



RATMの名曲を振り返る

2024-02-10 19:31:42 | 過去記事

Rage Against The Machine - No Shelter

今回は、音楽記事です。前回は、映画Godzilla のエンディング曲としてデヴィッド・ボウイの名前が出てきましたが……あらためて確認してみると、この映画は劇中で使用されている......


およそ一年前に、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンについて書いた記事です。

いったん解散した後に、再結成して活動していたRATMですが……最近、また解散したらしいという話がありました。
詳しい情報がなく、よくわからないんですが……まあ、気性の荒い人たちの集まりなので、そういうこともあるでしょう。


さて、そのレイジ・アゲンスト・ザ・マシーン、先日の記事でも名前が出てきました。ウェイン・クレイマー死去の記事で、MC5の Kick Out the Jams をカバーしているということだったんですが……RATMがそのウェイン本人を迎えてこの曲をやっている動画がありました。

Rage Against The Machine with Wayne Kramer (MC5) - Kick Out The Jams DNC 2008

ここでちょっとMC5の話を。

先日の記事で、ウェインの死によってMC5の新作は幻になったと書きましたが……それは間違いだったかもしれません。
この件に関する報道によれば、新譜用の素材が遺されており、それらをアルバムのかたちに仕上げて発表する構想はあるようです。考えてみれば、そのようなかたちで発表された作品は過去にいくつも例があるわけで……ウェイン・クレイマーが死んだからといって、それでMC5の音楽が死ぬわけではないということでしょう。
伝えられるところによれば、このアルバムにはレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンのトム・モレロも参加しているとのこと。
ほかにも豪華なゲストがいて、たとえばエアロスミスのジョー・ペリーやガンズのスラッシュといった名前が挙がっています。そして、ドン・ウォズ……この人は、去年発表されたローリングストーンズの新作にもちょっと関わっていたという話を書きました。チャーリー・ワッツの死後、彼の遺した音源を楽曲に仕上げるということがそこで行われていたわけで、MC5でも同じことができないはずはないのです。
プロデューサーは、ボブ・エズリン。アリス・クーパーや、KISS、ピンク・フロイドなどを手がけ、ルー・リードやピーター・ガブリエルのソロ作品をプロデュースしてきた人です。信頼できるといえば、これ以上に信頼できるプロデューサーもいないでしょう。そのエズリンさんが、こう語っています。
「今、ウェインが亡くなったことで、僕たち全員が彼の作品が確実に聴かれ、彼が称えられるようにする責任を感じています。今のところ、アルバムのリリース・スケジュールはわからない。でも、必ずリリースされる。それは確かだ」
ここまで断言しているので、新作の発表には期待したいと思います。


話をレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンに戻すと……きみらも解散なんかしてる場合じゃないだろうと。
先の動画で、ウェイン・クレイマーはRATMを「同志」と呼んでいました。ウェインが世を去った今、MC5の志を継ぐことができるバンドといったら、まずレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンじゃないかと思うわけです。ということで、再々結成を待ちたいと思います。




ウェイン・クレイマー死去

2024-02-08 20:24:55 | 日記


MC5のギタリストであるウェイン・クレイマーが死去したというニュースがありました。

このブログで、MC5の名前はときおり出てきます。

アメリカにおけるガレージパンクの祖のようなバンドで、後のミュージシャンたちにも大きな影響を与えました。

たとえば、頭脳警察もそのラディカリズムに影響を受けたといいます。
代表曲であるKick Out the Jams は、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンがカバーしていました。

頭脳警察とRATMが出て来るだけでも、ロック史においていかに大きな存在かがわかるというものです。

この二者の顔ぶれからもわかるとおり、MC5はラディカルな反体制的姿勢でも知られるバンドです。
マネージャーをつとめていったジョン・シンクレアは反戦活動家でもあり、ベトナム戦争に抗議して逮捕投獄。ジョン・レノンが彼を支援する目的で作った歌が「ジョン・シンクレア」です。

ウェイン・クレイマーは、そんなMC5のリーダーでした。

21世紀になってからMC5を再結成し、新作発表の構想もあったといいます。

ウェインの死によって、それは幻となったわけですが……訃報を伝える記事では、新作に関するウェインの言葉が紹介されていました。

「1968年のスピリット、僕らが全員若者だった時の、自分の世代のスピリットを再燃焼させる時が来たって思っている」
「歴史の中で今はとても危険な時だ。もし僕らが集まり、団結、ステップアップしなかったら、全てを失ってしまうだろう」
「民主主義がなくなるかもしれない。僕らが反旗を翻す相手は冗談なんかじゃない。遊びの時間じゃないんだ。真面目な話さ」

この言葉からもわかるとおり、ウェイン・クレイマーは60年代のスピリッツを持ち続けた偉大なギタリストでした。
冥福を祈りたいと思います。

MC5 - Kick Out The Jams (1972)



ビートルズの日 2024

2024-02-04 20:17:12 | 日記


今日2月4日は、「ビートルズの日」。

ということで、例年どおりビートルズ記事です。

昨年は、ビートルズのファースト、セカンドアルバムが60周年だという話をしました。
その流れで行くと、今年は3、4枚目のアルバムがリリースされて60周年ということに。そこで、サードアルバム A Hard Day's Night を取り上げようと思います。

 

このアルバムは、ビートルズにとって一つの転換点といえるでしょう。
これまでのアルバムになかった大きな要素の一つは、自分たちが主演する映画をモチーフにしたアルバムであるということ……それだけビッグな存在になったということです。
発表当時の邦題は、映画とセットで『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』。タイトル曲の邦題もそれにあわせられました。古き良き時代の珍邦題といえるでしょう。そのセンスの良しあしはともかくとして、原題からはあまりに離れすぎています。それもあってか、今では『ハード・デイズ・ナイト』というあたりさわりのない邦題となっています。

もう一つ重要な点として、本作は、オリジナル曲のみで構成された最初のビートルズ作品でもあります。
それでいて、リンゴやジョージの作った曲はなく、すべての曲がレノン=マッカートニー作。これは、ビートルズのアルバムの中で本作のみです。このことは、4人の関係性がまだ安定したバランスになっていた時期を反映してもいるんじゃないでしょうか。

(※一応、注釈。ビートルズの曲でジョン・レノンとポール・マッカートニーしか制作に関与していない曲は、どちらか一人が単独で作った曲であっても「レノン=マッカートニー作」となっています。それらの曲は、後の研究で実際にはレノンあるいはマッカートニーが単独で作ったと明らかにされているものもあります)

以下、収録曲のいくつかの動画を載せます。
せっかくなので、ほかのアーティストによるカバーもまじえて。


タイトル曲。

The Beatles - A Hard Day's Night

この曲の冒頭に鳴らされるあのコードが何なのかというのは、長年議論の的となってきました。
こういうところに、のちのロックンロールを方向づけた実験性の片鱗が垣間見えていると解せるかもしれません。


「恋する二人」。
ビーチボーイズによるカバーで。

I Should Have Known Better (Party! Sessions Mix)


「エニイ・タイム・アット・オール」。
ブライアン・アダムスによるカバーで。

Bryan Adams - Anytime At All (live at Bush Hall)

個人的には、ビートルズ作品の中で隠れた名曲だと思ってます。
Any を使った肯定文の力強さで、「いつでも、どんなときでも、君は僕を呼べばいい、すぐに駆け付けるよ」という直球のラブソング。
直球ロックンローラーであるブライアン・アダムスが、実にしっくりくるように思えます。


シングルとしても発表された「キャント・バイ・ミー・ラブ」。
エラ・フィッツジェラルドによるカバーで。

Ella Fitzgerald "Can't Buy Me Love" (The Beatles Cover) on The Ed Sullivan Show

この曲はジャズ方面の人によくカバーされるといいますが、これもその一つでしょう。ポール曲であり、ポールの音楽的素養のゆえかもしれません。


最後に「家に帰れば」。
アルバム音源のバージョンで。

When I Get Home (Remastered 2009)

これが、アルバム制作において最後に録音された曲といいます。
これはジョン曲ですが、「家に帰れば」という歌の内容は、多忙な生活で妻を放置してしまっていることが反映されているという解釈もあります。
結局その妻シンシアとは後に離婚し、ヨーコさんと再婚。シンシアとの間に生まれた息子ジュリアンは名曲「ヘイ・ジュード」誕生のきっかけに……そこにいたる伏線といえるかもしれません。



概観してみると、アルバム全体としては、まだ実験性とか内省的な側面というのは、その片鱗を見せていたとしても、まだ前面に出てきてはいない感じでしょう。
そこは、私のいう第一世代ロックンロールの世界です。「恋する二人」をカバーするビーチボーイズも、同じ世界線に立っているようです。そこで使われる仮定法表現は、現実への違和感を表明するようなものではありません。
同じ64年に発表されたもう一枚のアルバム「ビートルズ・フォー・セール」も、そのあたりはあまり変わらないでしょう。
ロックンロール第二世代へむけてビートルズの音楽が変化を見せ始めるのは、ボブ・ディランとの出会いを経て翌年発表された「ヘルプ!」あたりからということになるのです。