古い資料である。定年を機に書棚を整理し多くのの書物を処分したが、薄いこの雑誌は書棚に残されていた。
ムラサキを栽培するようになって、改めてページを開いてみた。36年も前の研究記録が掲載されている。
参考になると思われる部分を紹介してみたい。アンダーライン部分は参考になるかと入れてみた。
「邦産ムラサキ園芸栽培の実際」 伊賀 達紀(著述・野草研究家) p53
3. 播種・発芽
播種は普通とり播きとする。鉢や育種箱に播種し、発芽後移植する場合と露地に直播きして
移植を避ける場合とがある。幼苗の露地への移植は極めて困難を伴い、たとえば幼苗150本を
移植し、活着したのはわずかに11本であった。この11本も完全に活着したとはいえない生育
途中の記録である。
鉢・育種箱に播種するには山砂、川砂を使用する。これは保水性と排水性がよく、無肥
料状態にあるため、黒土より優れている。特に灌水を行った時は、加湿にならぬ点が利点である。
ムラサキは低温には強い抵抗力を持ち、厳寒地以外の地域では播種容器を温室、ビニール
ハウスに取り込む必要はない。屋外に置いても十分である。また、果皮が堅いために、発芽不良
になるのではないかと、果皮を傷つけるなどして播種する必要はない。これではかえって種子を
腐敗させるだけである。
8月下旬とり播きを行ったものは、東京地方では、翌春の3月下旬(昭和52年は3月23日)より4
月上旬にかけて、最低気温が5℃以上の日が続くと、一斉に発芽を開始する。気温で用土
の温度が激変する木箱は、発芽が劣る。
移植を避けるために露地に直播きした幼苗は強健であり、特に乾燥に強い。直播きは条播きが
よく、バラ播きは種子の損出が多いばかりでなく、発芽後の管理にも不便が多い。
発泡スチロール製育苗箱に厚さ10cmの山砂を使用した場合の発芽は種子200粒に対して193本、
木箱の場合は23本であった。
径13~15cmの鉢に直播きして、そのまま栽培を続ける場合もあるが、用土の排水の点で十分とはい
えない。やはり赤玉土か鹿沼土の中粒を用土として移植する方が良い結果が得られる。
以上p54より抜粋
(昨年、畑に苗床を作り、ビニールでカバーをしたところ多くの発芽があり、腐葉土を多めに入れた別畝に移植した
処100本のうち全てが活着した。ただ、その後の生育状況はまちまちで、花を付ける前に枯れてしまったもの、開花
を見たが余り成長せずに夏には枯れてしまったものもあった。黒マルチの畝で夏にはかなりの高温になったが散水も
できず雨頼みの栽培であった。しかし、根元が1.5cmを越え大きく育った苗も多く、大きなものは掘り起こして紫染
めに使用する事ができた。 偶然何かが適応条件に合致したのであろう。)