奥さまへの手紙をやっと書き終えた。新しいお正月を迎えるたびに必ず書きかえる大事な手紙。すぐに奥さまに渡すものではない。
残り少なくなったこれからの人生。いつ、どんなことがあってもおかしくない。そのときに開いてもらうための準備の手紙。遺言状ではない。遺産があるわけでもない。しいて言えば思い出だけ。感謝の気持ちを書き残す大事な手紙ということになる。
私とは7つ違いの奥さま。女性の平均寿命は男性よりも7つ多いから、単純な計算だと、私が亡くなった後、奥さまは14年の間、1人で過ごすことになる。心配でならない。元気なうちにできるだけのことを詳しく手紙に書いた。
大切なのは奥さまの生活費。遺産らしきものは皆無なので、唯一年金に頼ることとなる。遺族年金の受給手続きについては詳しく書いた。自分なりに計算した、今現在の年金受給額も計算し書き込んだ。遺族年金は非課税、確定申告は必要ないことも。ただ、家と土地の固定資産税は毎年払わないといけない。
わずかな不動産の名義変更、登記手続きは司法書士に依頼する。死亡保険金と医療保険金の請求は忘れないで。わずかだが葬儀の費用は十分だろう。そのほか、各種契約の解約や名義変更も大切。銀行等の預金口座、電力、NHK、新聞、携帯やインターネットの契約。等々。
手続き等は書き終わったが、これで大丈夫だろうかと、書いた手紙を読み返しながらも心配で、また、頭を抱え込む。
重い病のことも心配だ。死は怖くないが、たった1度の死だから、自分にとっても周りにとっても悔いのないものにしたい。重篤となっても延命治療だけはしないでほしい。自然に逆らいたくない。
お墓はいらない、樹木葬でも、散骨でもよい。お寺の納骨堂はどうだろう。健康保険者証の裏にある「私は、脳死後および心臓が停止した死後のいずれでも、移植の為に臓器を提供します。」には〇を付けておいた。
この手紙、終わりのところでつまずいた。たくさんの思い出がある。書き上げるまでには随分と時間がかかった。思っていることの100分の1も書き表せない。最後はただ一言「感謝、感謝、ありがとう。」でやっと終わった。