俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

内紛

2014-01-15 10:09:34 | Weblog
 タイでは内紛が続いている。デモ隊はインラック首相の辞任を要求している。日本ではその背景が殆んど報じられないのでただの暴動と思われ勝ちだが、どうやらコメが原因らしい。
 昨年の夏頃までは報じられていたコメの高値買取制度が問題だ。正確にはこれはコメを担保にした融資制度だ。ところが融資額がコメの市場価格よりも高いために多くの農民が返済をせず、担保にされたコメを政府が大量に引き取ることになり作夏の時点で2000万tもの在庫になっていたらしい。高値のコメは輸出競争に耐えられず、前年は世界シェアの29%を占めていた輸出量が2012年には17%にまで激減して、それまで31年間続けていたコメ輸出量世界一の座を明け渡すことになった。これは国家経済の危機だ。
 この奇妙な政策の狙いは貧しい農家を支援して貧富の格差を縮小しようという崇高な目的とされているが、人口の6割を占める農民に対するバラ撒き行政とも思える。だからバンコク市民は怒っている。これは農村と都市の利害対立だ。しかし6割を占める農民票があるから選挙になればインラック政権が負けることは無い。
 多数決の矛盾がモロに出ているためにマスコミはこのことに触れようとしないのだろうか。6割の農民と4割の非農民の利害が対立した時に6割を占める農民の利益が優先されるのが多数決だ。しかしそれが明らかに国益に背いているためにタイの経済は大混乱に陥っている。
 中東ではシーア派とスンニ派などによる権力争いがある。多数派が権力を握れば少数派は冷遇されるから内紛になる。
 アフリカでは部族間対立が深刻だ。旧植民地単位で独立国となったために、習慣も言葉も異なる複数の部族が1つの国を構成する。多数決で多数者が権力を握れば排斥される少数者は独立運動を起こすだろう。
 中国では漢民族が9割を占める。仮に多数決によって民主的に決めてもチベットやウィグルの意向は反映されない。
 多数者が権力を握るという仕組みは大きな矛盾を抱えている。多数決とは多数者が少数者を犠牲にして利益を独占するシステムだ。

正しい知識

2014-01-15 09:35:35 | Weblog
 今更「知は力なり」と言うつもりは無い。しかし「無知は悲惨」ということは確実だ。最も惨めなのは何と言っても、宗教に騙された殉教テロリストだろう。イスラム教の原理主義者に騙されて、天国に行けると信じて自爆した人もまた哀れな犠牲者だ。誤った信念に基づいて、他人を不幸にするために命を捨てることほど愚劣な行為は無かろう。
 間違った信念に基づいて生きることは虚しい。キリスト教徒を殺せば天国へ行けると信じたテロリストだけではなく、将来ガマガエルに化けるオタマジャクシに恋するアマガエル、性欲は悪と信じて自ら去勢を選ぶ男、自分の性器の醜さに絶望する少女、ハルマゲドンを信じてサリンをバラ撒いた狂信者、薬が毒物であることを知らずに薬を飲みすぎて医原病に罹る人、あの世で一緒になれると信じて心中する恋人達、不味くて不衛生な食材をわざわざ高値で購入する人。これらは皆、誤った知識の犠牲者だ。私は彼らを悼む。無知は不幸の源だ。
 人は人生に意味を求めたがる困った動物だ。実は意味など無い。両親が交尾をしたから生まれただけであり必然性も意味も無い。意味も目的も無く生まれたのだから意味は後付けになる。後付けをするなら最もマシな意味付けが最良であり、偽りの意味付けが最低だ。嘘に基づいて生きることが最低の人生だ。
 嘘に基づいて快適に過ごせるならそれも良かろう。しかし嘘に基づいて不快に生きるなら惨めだ。まやかしの宗教を信じて隣人と争わねばならないことは不幸だ。こんな人が世界中に溢れ返っている。
 「人生には意味が無ければならない」と考えることは個人の自由だ。私はそんな人を咎めようとは思わない。しかし「これこそ真理であり誰もがこれを信じねばならない」と言い出したら相手にしたくない。主観的判断を客観的事実と混同することは最早狂気に近い。