俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

引き下げ

2014-12-06 10:08:42 | Weblog
 最近、同一労働・同一賃金という言葉をしばしば見掛ける。これは殆んどが、男性と同じ仕事をしている女性の報酬を男性と同等にすべきだ、という意味で使われている。しかしこの言葉を安易に使うことは危険だ。私は酷い実例を知っている。
 昔、西友ストアというスーパーがアメリカのウォルマートに買収された。アメリカから乗り込んだ経営者は同一労働・同一賃金という給与体系を導入した。それはパートタイマーの賃上げではなく、正社員の給料をパートタイマー並みに引き下げるというやり方だった。これは引き下げによる平等だ。こんな悪平等など要らない。引き上げによる平等であるべきだが経営者は引き下げによる平等化を狙う。男女平等が男性社員の賃金の引き下げを前提とされないよう注意する必要がある。
 人には羨望がある。他人を羨む人は次の2つのどちらかを選び勝ちだ。自分を高めるか、あるいは相手を引き摺り降ろすかだ。視野の狭い人は同僚や同級生の足を引っ張りたがる。それによって自分の相対的地位が高まるからだ。しかしこれは多くの場合、足の引っ張り合いになり共倒れを招く。その結果、第三者との競争では不利になる。相手を貶める競争ではなく自分を高めるための競争であるべきだ。
 次の衆院選挙では野党の惨敗が予想されている。これはある意味では当然の結果だろう。幾ら一強多弱の状況とは言え、野党は建設的な仕事をしていなかった。この2年間、反対のための反対に終始し、足を引っ張ることしか考えていない。野党の活動がクローズアップされたのは、党の内紛と閣僚のアラ探しの時だけだ。女性大臣2人を更迭させたがこれは見方によってはエリート女性バッシングのようなものだ。女性の反発を買ったのではないだろうか。他人を引き摺り降ろすことよりも議員定数削減などの必要な政策の実現に尽力すべきだっただろう。常在戦場という自覚が無いから選挙公約も御座なりだ。いっそのこと与党候補全員を当選させて空前絶後の400議席を預けてしまえばどうだろうか。無責任野党による雑音が減るから必要な法案が廃案にされることも減るだろう。どん底になればコップの中でのくだらない争いも静まる。

続・逆因果

2014-12-06 09:34:35 | Weblog
 論理学の基礎に「逆・裏・対偶」という区別がある。「AはBである」という命題の逆は「BはAである」で、裏は「AでないならBでない」で対偶は「BでないならAでない」だ。当初の命題が正しければ対偶は常に正しいが逆や裏が正しいとは限らない。数学や論理学の教科書では「ソクラテスは人間である」が例示されることが多い。
 対偶のパラドクスで大笑いしたことがある。「叱られないと勉強しない」の対偶だ。数人の友人にこの問題を出してみた。皆、高校の数学をちゃんと履修してそれなりの成績だった者ばかりだが、悉く「勉強すると叱られる」と答えた。正解は「勉強するのは叱られるから」だ。
 「AはBである」のような単純な命題であればこんなミスを犯さないが、因果のような複雑な命題ではミスが生まれ易い。裏や逆が必ずしも正しくないということさえ知らない人もいるからしばしば無茶苦茶な論理が使われる。
 「風邪をひけば体温が上がる」という命題であれば逆は「体温が上がるのは風邪をひいたから」で、裏は「風邪をひかなければ体温は上がらない」だ。この2者はどちらも正しい命題ではない。風邪以外の病気でも体温が上がるからだ。この対偶は「体温が上がらなければ風邪をひいていない」であり当たり前の話だがこの命題は正しい。
 ところがこの命題を曲解する人が少なくない。その第一歩が「体温が低ければ風邪ではない」で、この曲解の延長線上に「体温を下げれば風邪は治る」が来る。どんどんデタラメになるが、実際に医師は解熱剤を処方し、患者は熱が下がったことで「薬が効いた」と糠喜びをする。実は何も改善されていない。それどころか高温に弱いウィルスが増殖することの手助けをしているだけだ。だから風邪は却って長引く。理屈上ではなくこれは事実だ。解熱剤を使った場合と使わなかった場合を比較した臨床実験では、解熱剤を使わなかったグループのほうが常に早く完治している。
 風邪を治療できる薬を作ればノーベル賞が貰えるとまで言われている。つまり現時点では風邪薬は存在しない。症状を軽くするが病気を悪化させる対症療法薬しか無い。こんな偽薬を有難がるのは製薬会社と医師とマスコミに騙されているからだ。欧米の医師はこんな対症療法薬を処方しないそうだ。