俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

ガス抜き

2014-12-08 10:23:24 | Weblog
 アメリカの乾燥地域では頻繁に山火事が起こる。なぜもっとしっかり管理して火災を防がないのかと思うがこれは素人考えであり、頻繁な山火事が大火災の予防になっているそうだ。つまり長期間山火事が起こらなければ乾燥した枯葉が溜まってしまうのでいざ山火事になれば手の付けられない大火災になる。だから小規模な山火事が大火災の予防になると言う。確かにこれはガス抜きにも似た、理に適った話だろう。
 固体や気体だけではなく液体でも似た事例がある。国民生活センターは4日に「突沸」の危険性について発表した。学校では「過沸騰」として教わったが、動かさずに加熱した水が100℃を越えることがある。これは不自然な状態であり、何らかの刺激が加われば爆発的に沸騰して飛び散る。100℃を越える熱湯だから酷い火傷になるそうだ。
 時々小さな自然災害が起こることは良いことだ。これによって危険な場所が予め分かる。車の欠陥による小さな事故が起こることもそれを反省して改善されれば大事故を未然に防げる。
 「喧嘩するほど仲が良い」と言われる。この言葉は様々に解釈できるが、私は、建設的な喧嘩が相互の意思疎通を高めガス抜きの効果を齎す、と解釈する。ガス抜きを怠れば大爆発して破綻する。
 小さなトラブルは頻繁に起こったほうが良い。その度に問題点が分かって改善される。一番悪いのは問題を隠蔽することだ。隠蔽していればいずれ制度疲労が起こりカタストロフィーへと向かう。タカタのエアーバッグにせよカネボウ化粧品による白斑被害にせよ朝日新聞による「従軍慰安婦の強制連行」にせよ、早期に過ちを認めていればこんな悲惨な結果にはならなかっただろう。
 世界で最もガス抜きが必要なのは中国だ。あちこちでガス漏れが発生している。このガスに引火して大爆発が起こることは決して遠い未来の話ではあるまい。
 トラブルを避けたいのは人情だ。しかしトラブルは必ず起こるものと考えてそれに真摯に取り組めば事態を改善できる。臭い物に蓋をすべきではなく、臭い匂いは元から断たなきゃダメ!、だ。元から断つことができなければ次善の策として少しずつ漏れさせるべきだ。溜め込むこと、あるいは抑え込むことが一番危険だ。

予防医療

2014-12-08 09:46:28 | Weblog
 日本の医療費は増える一方だ。このまま膨張を続ければ財政が破綻しかねないとして予防医療を充実させるべきだという意見がある。これは理念としては正しいが実際にやっていることはデタラメだ。医薬業界の罠にはまっている。
 エボラ出血熱のような感染症であれば感染したら大変だ。だから予防することが重要だ。しかし感染症でない病気を予防することは治療よりも難しい。例えば肺癌であれば無数にある発癌性物質からどうやったら逃れられるだろうか。原因が特定さない状況でそれら総てを除去しようとすればとてつもなく高いコストが掛かる。大体、中国による大気汚染から逃れられるものだろうか。だから予防することなどできない。
 そこで登場するのが偽の予防策だ。検査数値だけを根拠にして自覚症状の無い人まで「治療」してしまう。血圧150であれば病気かどうか医師の間でも意見が分かれているが、強引に病気と決め付ける。一旦150以上が病気と決まれば140は病気予備群として予防医療の対象になる。そして更に130の人も予備群にならないためという口実で投薬される。こうして予防の対象が無制限に拡大される。医療の対象が患者だけではなく予備群や「未病人」にまで広がる。この結果、日本人は、高血圧症と高血圧症予備群と低血圧症の3種類の病人と服用を義務付けられた未病人、そしてごくごく少数の健常者に分類される。こんなことで日本人が健康になれるのだろうか。
 人は必ず老化する。もし老化予防医療が行われたらどうなるか。50歳からでは遅過ぎるとして40歳から、そして更に30歳から予防医療が行われて一生薬漬けにされる。現在アンチエイジングとして行われているホルモン療法は副作用が大きい。若々しい初老と引き換えに悲惨な老後が待っている。これはドーピングで増強した人の肉体が急激に劣化するのと同じことだろう。生命力の先食いのようなものだ。
 話がここまで奇妙になれば根本的な誤りは明らかだろう。予防を薬に頼るからデタラメになる。感染症以外の病気を予防するために重要なことは、食生活の改善や働き過ぎの防止や運動などだろう。医療ではない。薬によって予防しようとすることが大間違いだ。殆んどの薬には治療効果も予防効果も無く、逆に副作用は確実にある。予防医療によって医原病患者が大量に作られるだけだ。
 これが予防医療の実態だ。病気でない人まで「未病」として薬漬けにする。こんなことをして医療費が減る筈が無い。予防医療費が暴騰し、医原病患者が激増するから医療費は膨らむ一方だ。病気のことなら多少知っていても健康については何も知らない医師に予防を任せてはならない。むしろ栄養士などが中心になって予防医療ではなく予防生活を築くべきだ。予防のために必要なのは医療ではなく健康管理だ。医療は健康に敵対する。