俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

孤独死

2015-04-14 10:18:58 | Weblog
 孤独死という言葉は奇妙だ。人はどうせ一人で死ぬのであって家族に看取られようとアパートの一室で野垂れ死のうと同じことだ。私は無神論者だから、死ぬ時や死んだ後については関心が無い。自分の死体などゴミとして処分して貰いたいとさえ考えている。大切なことは死ぬまでに充分に楽しむことであり、不自由な生活を強いられたサラリーマン時代の埋め合わせをすることだ。とは言え、これは私個人の価値観であり、親にまでそれを押し付けることはできない。
 私は田舎で一人暮らしをしていた母を孤独死させないために、住み慣れた大阪を離れて田舎に移り住んだ。母が死ぬまで世話をしてそれから自由に生きようと思っていた。ところがここに落とし穴があった。自由になる頃には自分自身が不自由になっている。不自由になってからの自由など有難味が乏しい。
 大阪に住んでいた頃は100mを2分30秒のペースで毎日2㎞以上泳いでいたが今では3分のペースで1㎞泳ぐだけだ。視力の衰えも実感しつつある。老化は刻一刻進み、遅らせることは可能でも止めることはできない。多分、本人が気付かない内に脳も老化し続けていることだろう。
 友人との交流も途絶えつつある。大阪で築いていた関係は希薄になる一方であり、田舎での新しい繋がりは乏しい。そもそも優秀な同級生は悉く東京圏・大阪圏・名古屋圏に流出し、地元に残っているのは教師を含めた公務員と医者と銀行員ぐらいだ。深い交友は望み難い。不便な土地で不自由な生活を強いられ不愉快な思いをして暮らしている。
 近頃は「サウンド・オブ・ミュージック」の挿入歌の「もうすぐ17歳」の歌詞`♪I am 16, going on 17♪'が`♪I am 60's, going on 70's♪’に聞こえる。60代とは辛いものだ。
 今のところ特に大きな病気を抱えてはいない。しかしいつそうなるか分からない。そうなるまでに「老春」を楽しみたい。サラリーマンという不自由な立場から解放されて自由を楽しめる時間は残り少ない。母の死後、大阪に戻っても、憧れの「我儘老後」を楽しめる期間は余りにも短く、身寄りの無い老人として孤独死を迎えることになるだろう。現役時代からの憧れだったhappy retirementは不本意な形で終わりそうだ。

相対性

2015-04-14 09:39:59 | Weblog
 国民年金の未納率が4割ほどあるそうだ。年金に対する不信感が背景にあるようだが、こんな有利な金融商品を利用しない人は気の毒であり、それを煽るマスコミの責任は重大だ。
 「若い世代ほど損をする」とマスコミは報じるが本当に損をするのだろうか。一番損をする筈の世代でも納付額の2倍以上を受け取れるのが現在の年金制度だ。こんな有利な金融商品になるのは年金の半分が税金によって賄われているからだ。
 ではなぜマスコミは「損をする」と騒ぎ立てるのか?現在の受給者が納付額の6倍ほどを受給しており、2倍程度しか受け取れない若い世代が不利になっていると言う。この世代間格差を指して「損をする」と囃し立てているのだがこれを「損」と言っていいのだろうか。デフレ状態が長く続いた現代とは違って、以前の日本では長くインフレ状態だった。現在の高齢者が納付していた頃の金銭の価値は今の10倍ぐらいあっただろう。だから6倍であっても決して不当とは思えない。実際には高齢者も若年層も得をする仕組みになっているのに、倍率が小さいことだけを根拠にして「損」と表現することは正確ではない。世代間対立を煽るだけだ。
 例えば現在の金利は0.1%程度だ。0.1%でも金利が無い訳ではないのだから預金しても損をしない。それを、かつて年利が10%あったことと比べて「損をしている」と批判するようなものだ。絶対的な損得と相対的な損得を混同すべきではない。
 年金で本当に損をするのは早く死んだ人だ。子や配偶者があれば遺族年金が支給されるが独身のままで死ねば掛け捨てになる。それ以外の人は納付額よりも遥かに多くを受け取れるということをマスコミは報じない。批判することは必要だが正しい情報を伝えることはもっと大切だ。
 医療保険は制度に大きな欠陥があり殆んどの人が損をする酷い仕組みになっている。この酷い制度を世界に誇る国民皆保険制度と持ち上げて、殆んどの人が得をする年金制度を目の敵にする。マスコミの姿勢は理解し難い。多分、大衆の思いこみに迎合しているだけだろう。一旦誤った知識が広がるとそれを正そうとはせず偏見を助長するのがマスコミの常套手段だ。正しい知識を持たなければ損をするのは自分自身だ。
 ダイオキシン類や環境ホルモンやコレステロール有害説などで馬鹿騒ぎをして旗色が悪くなれば頬かむりをするのがマスコミの狡いやり方だ。人騒がせなだけの情報を拡散しておいてそれが間違いと分かっても訂正しない無責任なマスコミに騙されっ放しでいてはいけない。