俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

危険な職業

2015-04-29 10:27:29 | Weblog
 クラレが毎年、新1年生を対象にして行っている「就きたい職業」の調査で今年は男児では①スポーツ選手②警察官③運転士・運転手④消防・レスキュー隊⑤アニメキャラクターだったそうだ。「会社員」は史上初めて20位圏外になったそうだ。「警察官」は女児でも10位にランクされ子供には人気があるようだ。これはテレビドラマでの格好いい刑事に憧れてのことだろうが、実は3K(危険、きつい、汚い)の職業だろう。
 何よりも注意すべきことは、軍隊以外では唯一の暴力が許される職業であることだ。警官だけが拳銃と警棒の携帯が認められている。これは必要とあれば武器を使う義務があるということだ。虫も殺したくない優しい人にこんな過酷な業務が勤まるだろうか。
 何人か警官を知っているがその風貌には共通点がある。KGB出身のプーチン大統領と同様、眼光が鋭く威圧的な雰囲気があることだ。危険に身を晒しているからだろう。凶悪犯と刑事が手錠で繋がっていれば、どっちがどっちなのか分からないほどだ。
 アメリカの警官の過剰防衛が日本でもしばしば報じられるが、常に命の危険に晒されているからこそ暴力的になるのだろう。滅多に危険に晒されない日本の警官とは事情が違う。日本での警官の殉職者数は年平均5人程度だが、アメリカでは約200人だ。凶悪犯が銃を持っていることと交通事故の多さが原因らしい。
 もっと危険なのが中国だ。年平均で400人ほどが殉職するらしい。なぜか勤務中の突然死が半分を占めるそうだから、中国の警官は不眠・不休を強いられる過酷な業務なのだろうか。今後I.S.に影響を受けてウィグル族の反政府活動が過激化すればもっと危険な職業になるだろう。
 中国には警官以上に危険な職業がある。炭鉱労働者だ。政府は毎年1,000人以上が亡くなっていることを認めているが実際の犠牲者数はその数倍らしい。
 何とも中国らしい話だが、率であればこれらよりも遥かに危険な職業がある。共産党政治局常務委員だ。共産党創設以来70人がこの地位に就いたがその内27人が失脚して多くは家族まで含めて酷い目に会っているらしい。近年、習近平主席が粛清を進めているから、習氏自身の失脚の可能性も含めて、この比率は更に高まるかも知れない。まるでかつてのスターリンや連合赤軍のような恐怖政治だ。

有性生殖

2015-04-29 09:50:02 | Weblog
 繁殖するためには無性生殖のほうが有利だ。快適に生存できる環境さえあれば自分のクローンを作れるからだ。その点、有性生殖は不利だ。異性のパートナーを見つけねばならないからだ。それにも拘わらず多くの動植物、それも高度な動植物が悉く有性生殖によって増殖するのはそのことに大きなメリットがあるからだ。と言うよりむしろ、有性生殖という手法を獲得した動植物でなければ高度な生物にまで進化できなかったと言って差し支えなかろう。進化するためには有性生殖のほうが有利ということだ。
 まず有性生殖と無性生殖の根本的な違いを押さえておこう。有性生殖では両方の親から1つずつ、合計2種類の遺伝子を受け継ぐ。一方、無性生殖では1種類の遺伝子しか持たない。子において2種の遺伝子の特性が平均化されて顕現する訳ではない。様々な特性はそれぞれ優性と劣性を持つ。誤解されることは無いとは思うが優性・劣性は適・不適を意味しない。あくまで顕現での優先順位を意味する。血液型であればABOの3種類の遺伝型があり、AOはA型、BOはB型として顕現する。つまりO型は劣性でありOOの遺伝型を持つ人だけがO型として顕現する。AとBには優劣が無い。
 ここで架空の動物Aを想定する。話を単純化するためにこの動物が寒冷地に住んでいて、寒さに強いことと少食で足りることだけが生存を有利にする条件とする。
 Aが無性生殖をする場合、偶然起こる突然変異によってのみ進化する。たまたま1匹が特に寒さに強いという性質に変異すればそのクローンが繁栄する。他に、より飢餓に強いという変異をした個体があってもこの両者は何の繋がりも持たない。両方の特性を併せ持つ個体が生まれるためにはどちらかが新たに変異するまで待つしか無い。
 Aが有性生殖をするなら、環境に適応した両者による繁殖があり得る。その場合、子孫が両方の長所を受け継ぐとは限らずメンデルの法則に従って様々な個体が生まれる。同じ両親の子であっても、一卵性双生児以外の子が同じ遺伝子を持つことはあり得ないから、自然淘汰を通じて適者が選別される。
 Aが寒さに弱く暑さに強いという変異をした場合、Aのクローンは総て不適者でありいずれ血筋が途絶える。しかし有性生殖であれば、その子孫に不適切な遺伝子が受け継がれても、それが劣性であれば顕現しない。顕現しなければその遺伝子が淘汰されずに細々と生き残る。これが遺伝の多様性に繋がる。もし環境が変わって暑さに強いほうが有利になれば、潜在していた遺伝子が日の目を見る。暑さに強いという遺伝的特性が淘汰されない所が有性生殖の強みだ。無性生殖と比べて有性生殖のほうが遺伝的に多様化する。無性生殖であれば折角新しい特性を獲得してもそれがその時点での環境に適応していなければ淘汰されてしまうが、有性生殖であれば劣性として温存され、それが非常時には適応のための条件として活かされ得る。様々な変異が簡単には淘汰されないからこそ環境の様々な変化に対応した適応が可能でありこれが進化へと繋がる。