マキャベリの君主論をパラパラとめくってみる。確かにそうだと思う反面、多少の違和感がある。その理由は、多分、日本人は、人間を性善説的に捉えているからではないか。マキャベリは、明らかに「人間は生まれつき邪悪である」と考えている。人間は嫉妬、妬み、怒り、憎悪を抱く。人間が社会で生きる限り、こうした情念を抱かざるを得ない。
ただ、マキャベリはこの邪悪さを非難しているわけではない。そのような邪悪さは、道徳的なことではなく、人間に内在する自然法則の必然だと考えている。雨が降るのを道徳的に誰も非難しないように、人間の邪悪さも、本来、道徳的に避難できない自然法則であるという。
問題は、人間の邪悪さを道徳的に非難するより、それをそれとしてうまく使いこなすことである。政治的行為は、人間の本質を知り、それをうまく利用する技術だと。
なるほど。政治だけではなく、いろんなことに言えそうである。人間はそういうものだと考えておけば腹も立たない。