ひとつきほど前、絹の手袋を草木染めしてほしい、との依頼を受けました。頼んでくださったのは、岡崎にある本コミ企画。自然食品店や自然食レストラン、生協などに、雑貨や書籍などを卸している会社です。
まず最初は、見本として、稲武にある草木だけを使って、1双ずつ違う色で10色に染めました。
下3双は、カリヤス。右からアルミ、チタン、鉄で媒染したものです。上は右からタカキビ、次の3双は、栗の皮で染めました。残りの3双は、写真にはありませんが、ヨモギで色を出しました。
結局、ヨモギの鉄媒染で100双の絹手袋を染めるよう、注文をいただきました。実は、これまで私は、まったく同じ色で大量の布を染める、という仕事はしたことがありません。草木染めは、同じ素材を使っても、採取時期や採取場所、煮出し時間によって微妙に色が変わります。また、染め時間をちょっとでもずらすと、色の趣が変わってきます。だから、同じ場所で採取した素材をいっぺんに煮出し、100双分の液を作って同時に染めないといけません。
こういう「職人」らしい仕事を請けたのは初めてなので、ぜひやってみたいと思う反面、うまく染めあげられるか、かなり心配でした。
なにより心配だったのが、これだけ大量の布を染めるためのヨモギを確保できるだろうか、ということです。
案の定、このあたりはどこも丁寧に草刈りがしてあって、群落にはなかなかお目にかかれません。目を凝らしながら国道を走り、やっと見つけたのが、257号線沿い。一回目の染めの量は採取できました。
大きなたらいで一気に染め上げ、一晩置いてから媒染。みるみる灰色になります。ヨモギ染めは、季節により違いはありますが、おおむね、黄色系に染まり、鉄媒染すると灰色がかった緑色、国防色に近いような色になります。
でも、今回は、最初染め液に入れたときから、どうも黄色みが薄かった。はじめ黄色みが強いと、鉄溶液に入れたときに緑っぽい色になるのです。思ったとおり、鉄の溶液につけても、緑っぽい色になりません。
そのときはたと気がつきました。わたしが国道沿いで採取したヨモギは、どれも丈の短い柔らかい草でした。つまり、何度か刈った後にまた生えてきた若草なのです。
若草のときと、勢いよく伸びきったときとでは、生まれる色が違います。ヨモギ染めは10月がいいといわれるそうですが、それはたぶん、穂の出る直前の、植物のエネルギーが十分に出きったときだから、煮出すといい色が出る、ということなのだとおもいます。
でも、季節は10月なのに、採れたヨモギは若草というわけです。でも、しかたありません。グレーでも、悪くはない色なので、とりあえず水洗いして乾燥させました。
ついで、2回目の染めに。今度は、黒田ダム付近に物色に行きました。国道沿いのヨモギよりはよく伸びていましたが、やはり草刈り後のヨモギです。でも、二度目の染めをしたら、少しは私が目指している色に近くなるかもしれない、と思って刈っていたら、豊田市街地に住む友人から電話が。
「いま、矢作川の川原でヨモギを採ったよ。明日もって行く」
翌日届いたヨモギは、私がほしいと思っていたヨモギの姿そのもの。旺盛な生命力を感じさせる草でした。
ふたつの場所で採ったヨモギを刻んで煮出し、かさね染めをしました。一日染めて媒染し、また染めると、出ました、緑がかったグレーが。
これで、ほぼ満足。洗って脱水し、干しました。アイロンをかけて箱詰め。はじめての仕事だったので緊張しました。
でも、案ずるより産むが易し、意外とスムースにことは運びました。いつかまた発注いただいたときのために、来年は、家の敷地内のヨモギが他の雑草に負けないよう、気をつけて見守っていてやらなきゃ。
ところで、この絹手袋、中国のクズ繭から糸をつむいで編んだものだそうですが、編んだのは日本の工場。かなり丁寧につくられていて、同じような中国製の絹手袋に比べると、さわり心地がとてもいい。夜、手にクリームなどを塗ってからこの手袋をつけて寝ると、朝、すべすべになっているそう。
冬は特に手が荒れますが、この手袋なら、手荒れ防止になるだけでなく、末端の冷えにも効果がありそうだし、第一気持ちよさそうです。この手袋の入手方法などについては、本コミ企画にお尋ね下さい。
まず最初は、見本として、稲武にある草木だけを使って、1双ずつ違う色で10色に染めました。
下3双は、カリヤス。右からアルミ、チタン、鉄で媒染したものです。上は右からタカキビ、次の3双は、栗の皮で染めました。残りの3双は、写真にはありませんが、ヨモギで色を出しました。
結局、ヨモギの鉄媒染で100双の絹手袋を染めるよう、注文をいただきました。実は、これまで私は、まったく同じ色で大量の布を染める、という仕事はしたことがありません。草木染めは、同じ素材を使っても、採取時期や採取場所、煮出し時間によって微妙に色が変わります。また、染め時間をちょっとでもずらすと、色の趣が変わってきます。だから、同じ場所で採取した素材をいっぺんに煮出し、100双分の液を作って同時に染めないといけません。
こういう「職人」らしい仕事を請けたのは初めてなので、ぜひやってみたいと思う反面、うまく染めあげられるか、かなり心配でした。
なにより心配だったのが、これだけ大量の布を染めるためのヨモギを確保できるだろうか、ということです。
案の定、このあたりはどこも丁寧に草刈りがしてあって、群落にはなかなかお目にかかれません。目を凝らしながら国道を走り、やっと見つけたのが、257号線沿い。一回目の染めの量は採取できました。
大きなたらいで一気に染め上げ、一晩置いてから媒染。みるみる灰色になります。ヨモギ染めは、季節により違いはありますが、おおむね、黄色系に染まり、鉄媒染すると灰色がかった緑色、国防色に近いような色になります。
でも、今回は、最初染め液に入れたときから、どうも黄色みが薄かった。はじめ黄色みが強いと、鉄溶液に入れたときに緑っぽい色になるのです。思ったとおり、鉄の溶液につけても、緑っぽい色になりません。
そのときはたと気がつきました。わたしが国道沿いで採取したヨモギは、どれも丈の短い柔らかい草でした。つまり、何度か刈った後にまた生えてきた若草なのです。
若草のときと、勢いよく伸びきったときとでは、生まれる色が違います。ヨモギ染めは10月がいいといわれるそうですが、それはたぶん、穂の出る直前の、植物のエネルギーが十分に出きったときだから、煮出すといい色が出る、ということなのだとおもいます。
でも、季節は10月なのに、採れたヨモギは若草というわけです。でも、しかたありません。グレーでも、悪くはない色なので、とりあえず水洗いして乾燥させました。
ついで、2回目の染めに。今度は、黒田ダム付近に物色に行きました。国道沿いのヨモギよりはよく伸びていましたが、やはり草刈り後のヨモギです。でも、二度目の染めをしたら、少しは私が目指している色に近くなるかもしれない、と思って刈っていたら、豊田市街地に住む友人から電話が。
「いま、矢作川の川原でヨモギを採ったよ。明日もって行く」
翌日届いたヨモギは、私がほしいと思っていたヨモギの姿そのもの。旺盛な生命力を感じさせる草でした。
ふたつの場所で採ったヨモギを刻んで煮出し、かさね染めをしました。一日染めて媒染し、また染めると、出ました、緑がかったグレーが。
これで、ほぼ満足。洗って脱水し、干しました。アイロンをかけて箱詰め。はじめての仕事だったので緊張しました。
でも、案ずるより産むが易し、意外とスムースにことは運びました。いつかまた発注いただいたときのために、来年は、家の敷地内のヨモギが他の雑草に負けないよう、気をつけて見守っていてやらなきゃ。
ところで、この絹手袋、中国のクズ繭から糸をつむいで編んだものだそうですが、編んだのは日本の工場。かなり丁寧につくられていて、同じような中国製の絹手袋に比べると、さわり心地がとてもいい。夜、手にクリームなどを塗ってからこの手袋をつけて寝ると、朝、すべすべになっているそう。
冬は特に手が荒れますが、この手袋なら、手荒れ防止になるだけでなく、末端の冷えにも効果がありそうだし、第一気持ちよさそうです。この手袋の入手方法などについては、本コミ企画にお尋ね下さい。