アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

ドラマ「項羽と劉邦」

2016-01-08 17:43:52 | 映画とドラマと本と絵画
  全40巻、80話見ました。おもしろかった! 「水滸伝」よりずっと、です。

  秦末期に、打倒・秦をめざして集まった英雄たちの話。歴史マンガで何冊も読んでいるのですが、映画で見るといっそう、当時の風俗も文化もよくわかります。だからこういうドラマはとてもありがたい。

  中国の人にとっては、項羽も劉邦も韓信も呂布も、登場する英雄たちは皆、子供のころから親しんでいる人物たちだからなのでしょうが、俳優たちがそれぞれの英雄像にあわせて、ピタッと役にはまっているように思えました。それに、何百年も繰り返し書物や劇の題材になってきた話だけに、複雑な人情の機微や、政治的な駆け引きがとてもリアルに描かれていました。

  このドラマを見る限り、項羽は政治家としての気質に乏しく、けっきょく劉邦に覇者としての地位を譲らざるをえなかったのだな、ということがよくわかります。でも、勝者の劉邦の晩年は孤独。そもそも、敗者であれ勝者であれ、いずれは死に、中国の長い歴史の中に刻み込まれていくのだ、という客観的な目を、中国の歴史ドラマは大事にしているみたいに思えます。以前見た、「三国志」も、主題歌の中に、「昔話を語りながら、一杯の酒を飲み干す。大河の流れは悠々とつづく、といった内容の歌詞があり、印象的でした。どんな英雄の業績も、長い歴史の一こまにすぎない、といった見方が、厭世観とは違う角度から描かれている気がします。

  「平家物語」の冒頭にある、「奢れるものは久しからず」の代表者の一人として挙げられている秦の官臣、趙高。始皇帝が死んでから絶大な権力を誇るのですが、彼がとことん憎々しげに描かれています。でも、荒唐無稽ではない。毎回、あの顔を見たくないと思いつつ、興味をそそられました。

   彼の暴虐を許したのは、朝廷の上層部の役人たち。一見、彼らも被害者にみえますが、ほんとは、彼らが自己保身を真っ先に考えたから、たった一人の横暴を野放しにしてしまった。そのあげく、たくさんの人が犠牲になり、国土は荒れました。独裁者一人が悪いのではない、彼を増長させた周りが悪い、ということを、きちんと描いています。

  それにしても、策略も殺し方も許し方も、どれもみなスケールがでかい! 土地もめちゃくちゃ広大。中国はとにかくすごいところだな、といろんな意味であらためて思わせられたドラマでした。

  さて、次に見たい中国ドラマは、「岳飛伝」。南宋の武将の話だそうです。
コメント
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