アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

バトル・フィールド クルーティの戦い

2022-04-26 17:14:27 | 映画とドラマと本と絵画

 2019年にできたウクライナの映画。ソビエト連邦下では一つの国だった1930年代に起きた、ホロドモールと呼ばれる大飢饉を描いた「赤い闇~スターリンの冷たい大地」を見たくてさがしていたら、見つけた映画です。https://movies.yahoo.co.jp/movie/370630/

 ロシアのウクライナ侵攻が始まるまでは、ウクライナについては「肥沃な大地の農業国」「ドネツク炭田のある資源に恵まれた国」、ソ連時代計画経済に失敗して、ウクライナの人々を苦しめた(これがホロドモールと呼ばれる事件だと最近知りました)といった程度の知識しかありませんでした。

  侵攻が始まって最初のころは、マスメディアで報道される情報しか知らなかったのですが、しだいに、ネットで相反する情報を目にするようになり、フェイクも多分に交じっているとおもわれるため、信頼できそうな情報を探すのに、結構苦労しています。

  この映画は、100年以上前の、成立したてのソ連軍によって、ウクライナが侵攻を受けたその緒戦の事件を描いたものです。

  舞台は1917年、ロシア帝国が崩壊し、帝国に吸収されていたウクライナはようやく独立を果たします。しかし、まもなく、新しく政権を握ったソ連政府の軍~赤軍がウクライナ奪還を目指します。この映画は、キエフ大学で志願兵を募り、たった1週間の訓練で前線に連れていかれた新米兵士たちを追ったもの。

  ソ連軍4000名に対し、ウクライナ軍は400名。うち300名が学徒兵だったそうです。死闘の末、とりあえずソ連軍を追い返すことはできましたが、死者負傷者は多く、捕虜になった30名近くの兵は、殺されます。

  映画では、フィクションも交えて進むのですが、ウクライナ政府や軍が、レーニンとの不和が始まりつつあったトロツキーやドイツに支援を求めようと画策する様子も描かれます。でも、詳細な経緯がわからないからなのか、映画のなかではその画策の内実がよくわかりません。10月革命の直後のことで、この戦いの後、数年後、ウクライナはソ連邦に組み込まれます。

  最初のシーンはこの激戦の跡地。跡地にはモニュメントらしいものが建っています。ウィキペディアによれば、このモニュメントが建ったのはソ連崩壊後のこと。ソ連時代は、ずっとこの戦いについては、隠されていたそうです。

  ソ連にしてみれば、不安定な国内の混乱に乗じて、欧米列強がロシアを狙って向かってくるのは必至。だからいち早くロシア帝国時代の国境まで広げ、とりあえず外国の侵略を防ぎたかったのでしょう。

  いままさに起きていることとほぼ同じことが、100年前にすでに起きていたとおもわざるをえません。NATOの拡大を脅威に感じたロシアとロシアの拡大を怖がるウクライナ。

  この映画と「赤い闇」、ともにできたのはつい2、3年前。ウクライナでは、ロシアの脅威を如実に感じていたから、国民の民族意識を目覚めさせるようなこうした映画が作られたのでしょう。

  戦闘シーンは、まるで悪夢のように撮ってあります。リアリティが少ない。わざとそうしたようにも思えます。でもその分、全体に悲しみに覆われているように思えました。私がそう感じるのは、たぶんこんなときだからでしょう。撮り方はいたってオーソドックス。ほとんど知らなかったウクライナの歴史の一端の勉強になりました。

  ところで、敵のソ連軍の指揮官の顔は、現在のロシアの大統領によく似ています。あざとい。

 

  

コメント
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