晴耕雨読とか

本読んだり、いきものを見たり。でも、ほんとうは、ずっと仕事してます。

なんか背筋がひやっとする。。。

2010年05月25日 | 
『冬眠の謎を解く』(近藤宣昭著/岩波新書)、読了。
科学本としては結構おもしろかったのですが、
読み進めるうちになにやら背筋に冷たいものが。。。

研究が転がっていくうちに、不老長寿の可能性が見えてくる。

冬眠中の動物は病気をせず、放射能にも強く、
傷も化膿しないという実験結果があるという。
そして、冬眠する哺乳類は長寿である。

科学者にとっては、瓢箪から駒…というと失礼だが、探求を続けた結果、
新たな地平が見えてきたのだ。科学者冥利に尽きる話だ。

だが、不老長寿。
著者は(現状の寿命の)「二、三倍の寿命を持つことぐらいできるかもしれない」という。

それに続く文章が以下。

「すでに、シマリスやコウモリは、ラットやマウスに比べて圧倒的な長寿を実現しているが、だからといって個体数を圧倒的に増やしたり、始終活動して食物を食い荒らしたりして自然を害することはない。そこには、活動と休息の規則正しいサイクルが可能にする長い生活環があり、ヒトの社会に見られる人口増加や食糧不足の問題を起こさない、理想的な生命の仕組みを感じることができる。
 ヒトはこのような経験をしたとき初めて、SFの世界の冬眠ではなく、実際の冬眠能力を実感して不老長寿の本当の意味を知ることになるだろう」(212ページ)

えーと、どこへ行く科学者。。。
科学者のある無邪気さと、生命を科学的に扱いつつ、自然をまったく知らない、
まるでSF漫画に出てくるような科学者。こわっ。。

アメリカとかの大富豪が彼の研究に金を出してそう。。。

ま、それはさておき、この本の終章では、
恒温動物と、その一部が獲得した冬眠という機能の話がまとめられている。

それを読んで思ったのは、著者のまとめとはぜんぜん別のことで、
人類の文明そのものが、外部化された生理機能なんだ、、、ということ。

衣服、住居、冷暖房、都市、温暖化!??

自然に適応する結果として生まれた体内生理機能としての冬眠。
自然を改変することで、外を自分に合わせることを選んだ人類。

良くも悪くもいろいろ考えされられた1冊でした。