銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

ドロミテの山小屋からのメリークリスマス

2013年12月23日 | のほほん同志Aの日常
朝、会社のパソコンを開くと
イタリア・ドロミテからクリスマスメールが来ていました!

昨年の初夏、訪ねた小さな山小屋「ローダ・ディ・バエル」からです。

懐かしい…

ほんの1回、会っただけなのに忘れられない、
そんな人がいるものです。
私にとって、ローダ・ディ・バエルの女主人、
ロベルタさんはそんな人でした。

あんまり懐かしくなったので、
イタリアの旅の添乗報告、引っ張り出してみました。

**** **** ****

北イタリアの旅を終えて数日後、
お客様からさっそく、旅のアンケートが届きました。

そこにはこんな言葉が。

「山小屋の若い女主人ロベルタさん、とってもステキでした。
この人に会えただけでも幸せ」 

あぁ、同じように感じておられたのだ、と嬉しくなりました。
さて、そのロベルタさんとは…。


ある日の昼食でのことでした。
「なんだかイメージしていたのと違うわね」。
レストランでキビキビ働く“シニョーレ(男性)”を前に、
お客様のひとりが呟きました。

「イタリア人ってお喋り好きで、
仕事せず口ばかり動かしてるイメージだったけど」

あら失礼、と笑っておられましたが…同感です。

どのレストランでもホテルでも、
にっこりキビキビ気持ちの良い働きぶりには、
私も目を見張る思いだったのです。

なかでも特筆すべきは、
ドロミテ山群で出会った“シニョーラ(女性)”。

その日は真っ青な空のもとでの1日ハイキング。
ランチは途中、花畑に包まれた山小屋でいただいたのですが、
その山小屋ローダ・ディ・バエルで働いていた女性がロベルタさんでした。

年の頃は私と同い年ぐらいでしょうか、
いやもっとお若いのかも。
短い髪にきらりと光る目。

「ウェルカム!」
とにっこり微笑むその瞳に、まず吸い込まれました。

低めのハスキーヴォイスでサバサバと流暢な英語を話す
そのカッコよさに惚れ惚れして(女性ですが)
-――もういっぺんに好きになってしまいました。

気持ちの良いテラス席に案内され、
ドロミテから吹くそよ風のなかでのランチ。

メニューは野菜のスープ、ポテトとチーズ焼き、リンツ風チョコケーキ。
スタッフお揃いの青いポロシャツを着たロベルタは、
手際良くサーブしながら、ひとりひとりの顔をまっすぐに見ては
“Everything good? ”(お口に合いますか) 
“Is it enough? ”(足りていますか)
と声をかけてくれます。

 キビキビではありますが、そこはイタリアですから食事は「スローフード」。

お料理を待つ合間に席をたち、山小屋のなかをのぞいてみました。
ちょうどお昼時とあって、数名のスタッフ達は額に汗を浮かべ、
忙しく厨房とテラス席を往復しています。

その行き来する部屋の片隅のテーブルに、1枚の写真が飾られていました。
50歳ぐらいでしょうか、
髭をはやした精悍な顔つきの男性はチェ・ゲバラを思わせます。

その写真の前には、小さな石ころが三つ四つ。
これってもしかして…。 

「さっき、登山客が石を置いていったのよ」
そうお客様が教えてくれたので、
ロベルタをつかまえて、軽い気持ちで聞いてみました。

「あの写真の人は、あなたのお父さん?」

短い言葉が返ってきました。

“No. He is my man.” (いえ、私の夫よ)

 え…? 

一瞬つまりながらも、聞いていました。

「いまも――生きていらっしゃるの」

“He died last year.” (去年亡くなったの)

そう答えた次の瞬間でした。
ロベルタの目がみるみる潤み、
吸い込まれるように私の目もうるみ……
思わず彼女の手に自分の手を重ねていました。

その後。
テラスに戻った私たちに、デザートを運んできたロベルタは、
もうすっかり元の様子に戻っていました。

デザートのチョコケーキはお代わり自由だと宣言し、
引っ込んでまた戻ってきては山のミニアルバムを全員にプレゼントしてくれ…。

一緒に集合写真をとり、大きく手を振って山小屋をあとにしました。

忙しく仕事に戻るロベルタを背に歩きながら――。
この山のどこかに眠っている彼女のご主人のことを思わずにはいられませんでした。

そして、日が暮れたあと、昼間の賑わいが嘘のような夜の時間を、
ひとり過ごすであろうロベルタのことも。

キビキビと、笑顔を絶やさず、ただ無心に。
彼女があのように働く理由が分かったような気がしました。
 

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