年末のご挨拶をしておくべき方があり、
午後、歩くには少しきつい高台の町を訪ねました。
その帰り道、めずらしくバスに乗っていたときのことです。
中途半端な時間帯で、車内はガランと空いていて
私も席に座ってぼんやりと
大阪平野までつづく街並みを見ていました。
思いも遠くまで飛んで
先日、ある人に会ったときのことを思い出していました。
仕事は?と聞かれ
「旅行会社で…旅に似たものをくりかえしています」
と答えました。
そう、旅に似たものであって、旅ではない。
じゃぁ、本当の旅ってなんだろう
そんなことをぼんやり思っているときでした。
坂の途中のバス停から、
小学生らしき兄弟が乗ってきました。
6年生と2年生ぐらいでしょうか。
お兄ちゃんはおとなびた雰囲気、
弟はやんちゃな感じ。
ふたりとも、大きなリュックサックを背負っています。
兄弟は、私の目の前の席にすわりました。
が、弟くんのほうは、あれ?といった感じで
ずっとリュックサックの中をごそごそいじっています。
ぱかっと上部を開くと
山歩きの人が地図を入れたら便利そうな
透明のビニールシートの部分があるリュックで、
そこに、お母さんが書いたのでしょう、
大きなひらがなの文字がおどっていました。
なまえ:○○たくみ
じゅうしょ;ひょうごけんたからづかしなかやまさくらだい○―○ー○
いえのでんわ:0797-○○‐○○○○
ははおやのけいたい:090-000-000
けつえきがた:Aがた
(へ~、たくみ君っていうのか)
(そうか、もう学校、休みだもんね)
(お兄ちゃんとどこに行くの)
(おばあちゃんち?)
そんなことを心のなかで思っていると
たくみ君、がばと立ち上がり、
「あかん、大しっぱい!」
なに?と見上げたお兄ちゃんに、シュンとして
「さいふ、わすれた…」
え?
(どうする、どうする、バス止めたげようか?)
内心あわてる私に
お兄ちゃんはすごく落ち着いていて
「切符は? 持ってる?」
ふたたびゴソゴソ…の弟、
「あった!」
と、JRの小さな切符入れを取り出しました。
長距離列車の切符を購入したときに
みどりの窓口でもらえる青い切符入れです。
「じゃぁ、大丈夫」
とお兄ちゃんは言い、
何事もなかったかのように窓の外に目をむけました。
西日をあびる、大人っぽい横顔。
バスはほどなく、終点の電車駅に到着しました。
どうするのかな、とくっついて降りようとする私の前で、
お兄ちゃんは「子どもふたりです」と運転手さんに言って運賃を支払い、
たくみ君といっしょに降りていきました。
私もそのあとをついて降りながら――
(ねぇ、どこまでいくの?)
(へえ、そう、すごいね)
(がんばって)
そう、聞いてみたかった。
話してみたかった。
声をかけそびれた私を置いて
ふたりは、バス停から電車駅へとまっすぐ消えていきました。
「君たちのは、旅だね」
本当は、こう言いたかったのかもしれません。
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貸切バス・オーダーメイド旅行のご相談は…
銀のステッキ旅行
TEL 0797-91-2260(平日8:30~17:00)
■公式ホームページ:http://www.gin-st.com
■銀ステ旅先案内人:http://ameblo.jp/arailuka
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午後、歩くには少しきつい高台の町を訪ねました。
その帰り道、めずらしくバスに乗っていたときのことです。
中途半端な時間帯で、車内はガランと空いていて
私も席に座ってぼんやりと
大阪平野までつづく街並みを見ていました。
思いも遠くまで飛んで
先日、ある人に会ったときのことを思い出していました。
仕事は?と聞かれ
「旅行会社で…旅に似たものをくりかえしています」
と答えました。
そう、旅に似たものであって、旅ではない。
じゃぁ、本当の旅ってなんだろう
そんなことをぼんやり思っているときでした。
坂の途中のバス停から、
小学生らしき兄弟が乗ってきました。
6年生と2年生ぐらいでしょうか。
お兄ちゃんはおとなびた雰囲気、
弟はやんちゃな感じ。
ふたりとも、大きなリュックサックを背負っています。
兄弟は、私の目の前の席にすわりました。
が、弟くんのほうは、あれ?といった感じで
ずっとリュックサックの中をごそごそいじっています。
ぱかっと上部を開くと
山歩きの人が地図を入れたら便利そうな
透明のビニールシートの部分があるリュックで、
そこに、お母さんが書いたのでしょう、
大きなひらがなの文字がおどっていました。
なまえ:○○たくみ
じゅうしょ;ひょうごけんたからづかしなかやまさくらだい○―○ー○
いえのでんわ:0797-○○‐○○○○
ははおやのけいたい:090-000-000
けつえきがた:Aがた
(へ~、たくみ君っていうのか)
(そうか、もう学校、休みだもんね)
(お兄ちゃんとどこに行くの)
(おばあちゃんち?)
そんなことを心のなかで思っていると
たくみ君、がばと立ち上がり、
「あかん、大しっぱい!」
なに?と見上げたお兄ちゃんに、シュンとして
「さいふ、わすれた…」
え?
(どうする、どうする、バス止めたげようか?)
内心あわてる私に
お兄ちゃんはすごく落ち着いていて
「切符は? 持ってる?」
ふたたびゴソゴソ…の弟、
「あった!」
と、JRの小さな切符入れを取り出しました。
長距離列車の切符を購入したときに
みどりの窓口でもらえる青い切符入れです。
「じゃぁ、大丈夫」
とお兄ちゃんは言い、
何事もなかったかのように窓の外に目をむけました。
西日をあびる、大人っぽい横顔。
バスはほどなく、終点の電車駅に到着しました。
どうするのかな、とくっついて降りようとする私の前で、
お兄ちゃんは「子どもふたりです」と運転手さんに言って運賃を支払い、
たくみ君といっしょに降りていきました。
私もそのあとをついて降りながら――
(ねぇ、どこまでいくの?)
(へえ、そう、すごいね)
(がんばって)
そう、聞いてみたかった。
話してみたかった。
声をかけそびれた私を置いて
ふたりは、バス停から電車駅へとまっすぐ消えていきました。
「君たちのは、旅だね」
本当は、こう言いたかったのかもしれません。
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