銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

田んぼのなかの銀のライオンと金のヒツジ

2018年07月29日 | のほほん同志Aの日常

この夏、初めてとなる花火ツアー、
新潟の「海の花火」、ぎおん柏崎まつりに行ってまいりました。

早速ですが皆さん、花火にお土産は不要です。
同様に、花火に写真も不要です。
プロならともかく、素人はスマホやデジカメなんて置いて、自分の目でしっかり見たほうがいい。

そう信じているので、写真は例によってないのですが、
今回の花火ツアーでは意外なお土産ができました。

2日めに訪ねた金物の町で知られる燕三条。

夏風にそよぐ緑の稲のじゅうたんが美しい田圃の奥に、その工場はありました。




創業90年を迎える諏訪田製作所さんです。

黒いシャープな印象の建物。

エントランスを開けた途端、銀色のライオンやら、金色のヒツジやら。
何やら美術館か、アートギャラリーに迷い込んだようです。







「実は、これ全部、廃材でつくったんですよ」 と、案内役の好青年が教えてくれました。

「今日は仕事が早く終わったなぁ、とか、職人の気分がのってるときなんかに、
 構想を練って、ちょっとずつ、作っていくんです」



(鉄の盆栽。こちらも遊び心から生まれたものでしたが、欲しいという人が現れて、商品化したとか)


諏訪田製作所の主力商品は、爪切り。

戦前は、寺社の大工道具を作っていたのですが、戦後、原料の鉄が不足するなかで、
より少量の鉄でも作れるもの、そして「人間、誰でも爪は伸びる」ということから、
爪切りに移行したのだそうです。

製造工程を見せていただきました。



一番、興味深かったのが、「鍛造」という行程。
いわゆる「鍛冶屋」さんの仕事です。
鉄を1000度に熱し、400トンの重さをかけ叩く。そうすることで、
右端の鉄の棒が、右から左へと段階を追って、爪切りの一部へと形作られていきます。



「鍛造には二つの意味があって、ひとつは見たまま、圧力をかけることで、鉄の形を変えていくこと。
 もうひとつは、鉄の性質を変えることです」

性質を変える、とは、簡単にいうと、鉄を強くすること。
400トンの力で、幾度も幾度も叩くことで、固くて、しかも粘り気のある鉄になるのだと教えてくれました。

(ちなみに、400トンというのは、一般的な工場の、約4倍の重さにあたるそうです)

そうして引き伸ばされた鉄のうち、粘り気のある良い部分は、真ん中に集中し、
周辺部分はいわゆる「飛沫」なので、もろいのだとか。

なので、真ん中の強い部分だけをくりぬいて、周辺部は廃材となってしまう。

その廃材で作ったのが、銀のライオンであり、金のヒツジであり、さらにはこんなところにも!




大まかな形になった爪切りは、幾種類ものサンドペーパーで、
ぴかぴかに磨き上げられます。

「金属という素材は、もともとが、冷たい、固いものですから
たとえば木に比べて、人の手になじみにくいものなんですね。
その鉄を、なるべく温かみのあるもの、柔らかさを感じてもらえるものに仕上げて、
手に取っていただきたい、という思いがあります」


諏訪田製作所さんが爪切りを作り始めたのが、戦後の1948年。

その当時の爪切りが、70年後の今年、工場に戻ってきたのだそうです。
「修理してください」との手紙が添えられて。

「亡くなった方の机から出てきたのかなぁ、といろいろ工場で想像するんです。
 確実に、世代を超えて使ってもらっている。
 作って終わりではなく、作った爪切りは、お渡ししてからが本番ですから」


最後には、一画のアウトレットショップコーナーで、爪の試し切り。

わ、何これ? ぜんぜん違う。

ほしい。
迷わず買ってました。皆さん。

ということで、今回の花火ツアー、
全員が全員、爪切りもって帰途についたのでした。



もちろん、私も。
 

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