ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅      薬物後遺症と心の傷・・・2

2011-12-04 | 3章 デリー中央精神病院・入院記録
   「デリー中央精神病院・入院記録」・・・2

 24時間の介護士がついていた。これは介護もあるがぼくから煙草やライターそしてお金まで取り上げ、まだ何か隠し持ってないか監視を続けた。面会人が変な物を差入れしないか、禁断の苦しさから自殺でもしないかと煩くぼくに纏わりついた。トイレに入ってもドアーを押さえて閉めさせないで外で見張っていた。頭にきたぼくは
「出る物も出ねぇだろう、馬鹿野郎」
と日本語で怒鳴ると、ドアを押さえた手を放し、今度は横へ回り鉄格子の窓から覗いていやがる。嫌味な野郎だ。
 昨日で必要な検査は終り結果が出たのだろう、今日の朝からシスターが薬と水を持ってきてくれた。1日中ベッドの上で横になっている。何もする事はないし何も出来ない。1時間の禁断の耐え難い苦しみが24時間続く。その1日々を過ぎ去った日数としてカウントしていくしか、禁断から抜け出す方法はない。スタッフを断って今日で3日目、72時間。スタッフを入れないぼくに対して、スタッフによって作られた擬似脳はぼくの肉体を攻撃し続ける。スタッフを断たなければならないぼくの状況と病院からの薬が
「スタッフをすぐ入れよ」
という擬似脳の欲求を弱めているのか、スタッフへの強い欲望は抑えられている。
「トミー起きて、別の病室へ替わるから」
とシスターがぼくを呼びに来た。ベッドに起き上がるのでさえ辛くて面倒臭いのに、と思いながらぼくはのろのろとベッドから下りた。シスターの後ろについて新しく替わる病室に入ると、ベッドの上には毛布を頭から被って寝ている患者がいる。シスターが毛布の上から患者を揺すり起こそうとするのだが、患者は壁側に逃げて起きようとしない。ぼくは少しでも早くベッドで横になりたいのだが、仕方なく傍にあった椅子に座り込んだ。応援のシスターが来た。患者を毛布ごと包み込み運び出すようだ。足をバタバタさせて抵抗する患者の顔が毛布の間からちらっと見えた。日本人の若い女性か?それが日本人女性アユミとの出会いだった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする