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インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅      薬物後遺症と心の傷・・・7

2011-12-19 | 3章 デリー中央精神病院・入院記録

   「デリー中央精神病院・入院記録」・・・5

12月8日(金) (入院して5日)

 症状は全く良くならない。治療のやり方に疑問がある。肛門の出口を防いでいた硬い便が出てしまうと昨夜から下痢が始まった。薬を飲んでいるのだが、続く下痢と涙や鼻水が止らない。頭から首と手の震えには困る、それは禁断に伴う症状である事は分かっている。症状が回復するには日数が必要だという事も体験的に知っている。しかし今まで何度もスタッフを断ったことがあるがこんなにきつい思いをしたのは初めてだ。今日は少し楽になると思っていたが昨日と全く同じだ。こんな状態が1週間も続けば首を吊りたくもなるだろう。刑務所内で首を吊ったボブは運が良かったのか悪かったのか助かった。ニューデリーにある高裁パテラハウスで彼に会った。ぼくの手を強く握り締めた彼の目は「生きていて良かった」とぼくに語った。スタッフを断って5日目になると症状の変化が出てくる頃なのだが全く良くならない。座っているのさえきつい、横になっても楽ではない。良い病院があるからと言う、大使館の言葉を信用してやって来たのだが本当に失敗だった。何とか早くこの病院から逃げ出したい。昨日はちよっと粉の欲求が薄れたように思えたが、今日は粉を欲しがっている。頭の中を電気が走る、鋭い電気だ。食欲はない。無理して食べても直ぐ下痢でトイレへ直行だ。体調は最悪の状態にある。こうしてノートを書いている事さえ辛い。
 午後、マリーの面会。マリーは大使館に寄ったのだろう、日本の姉からの手紙を持ってきてくれた。彼女を日本の大学に留学させる為のギャランティーの依頼だったが、それは出来ないという厳しい姉の返事であった。その後の文面は裁判の進行についての気遣いが窺われた。手紙を読んでいたぼくはマリーの視線を感じていた。読み終わったぼくは一度、窓の外を見た。そして、
「ギャランティーの件は駄目だった」
「気にしないで」
旅先で交わす言葉だけの約束の軽さ、誰もまともに信用してはいない。
コメント
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