正月恒例、大学駅伝大会。一夜明けて新聞をみると、組織論に通ずるような面白い話がありました。
優勝したチームの第一走者がスタート早々飛び出し、結果的にそれが功を奏した訳です。成果をだすには思い切った行動もときに必要です。しかし、それには状況分析と自分の力量をきちんと図らなければなりません。当日主力2選手を欠いた組織の状況を打開すべく、多少のリスクをとったと思われます。1年生という怖いもの知らずも幸いしたかもしれません。
他校の選手がなぜ追わなかったか。いくつか理由が考えられます。力量を欠く人間が無理をして途中でたすきが途切れたら組織としてはすべて終わりです。早々にそのようなリスクを取るべきではない、若しくは、周りが行かないから自分も行かない。前者の判断は前向きですが、後者は後ろ向きです。同じ判断でも後の結果に大きな違いや悔いが残ります。もうひとつ、後に「山の神」と呼ばれる絶対的な走者を擁するチームは「自分が無理しなくても」という一筋の甘えが出たかもしれません(あくまで推測ですが)事実、往路は山の神の力走で優勝しました。
総合優勝の勝因は、この山の神に抜かれた選手が、あえて無理をして彼の背中を追わなかったことにあると個人的には思っています。この選手はスポーツ推薦ではなく一般入試で入学し、卒業後は商社勤務が決まっているそうです。エリートランナーの山の神との力量の差を図り、ペースを守って自分の得意な下り坂で、その差を最小限にとどめた冷静な判断は見上げたものです。同時に、主力の控え選手としてきちんと準備をしていたからこその結果ともいえます。
いたずらに人を頼らず、光あたらずとも腐らず、一人一人がなすべき仕事をわきまえて努力する、ということは、組織として最も大切なことと思います。採用企業は大当たりでしたね。
もうひとつ、監督の情報戦略も見事でした。最後まで自信たっぷりに「優勝はみえている」といっていたのですが、終わってみれば「実は飛車角落ちの戦いで、優勝など確信できなかった」と語っています。主力を欠くチームの不安をメディアを使って拭い、一種の自己暗示にかけて力を引き出したような気がします。学生にこの手は有効でしょう。
勝敗を分けたのはほんの紙一重の心の差だったように思えます。しかし、この一年のための努力、当日早朝、凍結した路面を溶かすなど、関係者のご苦労には、学生として学ぶべきことは多々あったことでしょう。
それにしても、車でさえ往生するあの急坂を上り下り、いやはや頭が下がります。
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